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202X。日本。~縮みゆく独裁国家。逃げ場の無い壁 どこにも無い壁①~

日沈み、地下出(いず)る国の反体制機関紙『スキゾちゃんぽん』第三号
※本機関紙を手に入れたラッキーなあなたへ。末尾にあるQRコードを読み込めば次号以降の配布予定箇所がわかります。しかし!弾圧回避のため大概場所が変わります。

・「ある女性の裕福だが孤独過ぎる暮らし」①
 前回高〇寺での反政府勢力の作戦をコミカルに描いてきたが、今回は高〇寺を囲むタワマンでの孤独の話を取り上げる。
 A美さん(16)は両親ともに帰ってくるのは午後10時以降。
    彼女の生活サイクルは、学校に行く。勉強する。昼休みはあらかじめ親が買っていたコンビニ弁当。勉強する。帰ってきて両親が予め頼んでた出前。勉強したりスマホ。何をしたらいいか分からなくなりベランダから同じようなタワマンやビルや、少し遠くでやっている祭をぼんやり見る。カタカタカタ……遠くに響く電車の音。親が乗ってるだろうか。
 なんか気まずくて、親が帰ってくる頃にはいつも寝たふり。時々寂しくて布団の中で涙が出る。親から言われるのは日曜に一回だけ。

「毎晩、30回。I love Japanとスマホに吹き込むんだ」

 日本が好き、と英語で言うこと。国営のスコア認証アプリで「愛国心ポイント」と、英語ということで、「学習意欲、態度ポイント」も上がるのだ。
 でも彼女はこの空しい作業の後、本当に自分はどうしたらいいか分からなくなり、泣き崩れたくなることがあるという。

 雨の夜の日にベランダに出る。正面に見えるタワマン。オレンジや白やらの明かりが見える。明かりの向こうの幸せ(だろう)な人々の生活を予測して視界が滲む。
 A美さんは身を乗り出し、雨に濡れながら真下を見る。別に物騒なことを考えた訳ではない。
 しかし不思議な光景があった。真下に見えるタワマンの入り口前に、真上を見上げる少女がいたのだ。
 そう。確かに、こちらを見ていた。(続く)

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