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202X。日本。~縮みゆく独裁国家。エア海外旅行編②~

日沈み地下出(いず)る国の反体制機関紙『スキゾちゃんぽん』第一号
※本機関紙を手に入れたラッキーなあなたへ。末尾にあるQRコードを読み込めば次号以降の配布予定箇所がわかりますが、弾圧回避のため大概場所が変わります。

・「架空の海外旅行が流行り、滅びる独裁日本」②

 (前回からの続き)そう。事件が起きたのだが、それはある一人の勤勉な青年が起こした。

 青年はひたすら一人でいる時に、「日本に行きたい」と言い続けたのだ。20代後半男性。短く刈り込んだ髪にとにかく真面目な性格。一日に20回近く「日本に行きたい」と言い続け、「愛国心、郷土愛」ポイントが爆上がりし、それだけなら就活や出世等日常の損得を上手く進めたい人と大して変わらないが、彼は生活全般が真面目であった。
 
 早起きしてベランダのサボテン等植物に水をやる。平日仕事の日にも欠かさぬランニングと筋トレ。目立つ成績ではないが堅実な仕事振り。報告連絡相談。日本人的感覚で残業しなさすぎでもないし、働き方改革のスローガンが叫ばれないことも無い中で、遅く残り過ぎることもない、「バランスの取れた」労働時間。
 そして毎日絶えること無くスマホに記録される「日本に行きたい」の声!
 
 ついに、サラリーマンとしては異例の、「ベストアプリスコア賞」に選ばれた!!

 官邸で順番に貝原首相から(紙の)賞状を渡され、握手していく受賞者たち。そしてあの男性が首相の目の前で深く頭を下げてから、ゆっくりと頭を上げた次の瞬間、スーツの袖から光る物がピカリと飛び出し、首相の胸から肩までにピシッと赤い線が走った。
 間もなく腹も刺され、首相は前のめりにドサッと倒れた。ナイフを持ったまま立ちすくんだ男性。床に広がる潜血。捕えに駆け付けた警備員たち。じりじりと包囲される中、彼は叫んだ。

「日本に行きたい!!」

 突然の大部屋中に響き渡る声に、一瞬警備員たちはたじろいだが、間もなくナイフははじき落され、彼は捕らえられて、消えた。テレビにも主要新聞にも載らない事件である。

 しかし複数の地下メディアやSNS上から、「政府関係者の声」をソースとして当日の惨劇の模様が伝えられると、ある動きと相まって、国中に声が吹き荒れ、コールとともにデモが広がった。

 「日本に行こう!!」

 こうした反政府運動のきっかけになった「ある動き」について、次回以降はフォーカスしたい。(了)

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