自作の曲の採譜の思い出
半年くらい前まで、採譜と言いまして、耳で聴いた音楽を楽譜に起こす仕事をしていました。「していました」と過去形で言いましたが、いまも受付中です。ただし、私の算数・数学教室が回り始め、私は定価でしか採譜をお受けできなくなり、私のお示しする定価とご依頼のかたのご予算がマッチしないことが多くなって参りましたので、あたかも閉店したかのように見えるだけです。
本日は、そのようなお客様のなかから、ご自身で作曲なさった曲の採譜をご依頼になったかたのお話をしたいと思います。
半年以上前のことです。お子さんのピアノ即興の採譜をご依頼になった親御さんがおられました。
親御さんも、音楽に理解があるようで、お子様の作品を形にしたいと思っておいでのようでした。
ようするに、ピアノ曲の完コピ(完全な採譜)のご依頼でした。
これは、JASRAC等への許諾は要りません。著作権をお持ちなのがご本人様だからです。正確には、ご依頼者のお子様ですが。
だいたい、イベールかプーランクのような近代フランスのような響きのする、あるいは日本の坂本龍一のような響きのするピアノ曲の断片でした。
私は完璧にお採りいたしました。調性のあるものはもちろん調号をつけ、無調あるいは変拍子の曲は、私なりに工夫して調号をつけたり、変拍子を書いたりして、なかなかやりがいのある仕事なのでした。
その親御さんには非常に気に入っていただき、高い評価をいただくことができました。それは昨年の6月ごろのことだったと思いますが、9月くらいに次のご依頼をくださるとおっしゃったまま、ご依頼が途絶えて現在に至ります。
なお、JASRACに、こういう場合、その楽譜に採譜者としての権利を主張できるか、たずねてみましたが、長い時間をかけて調べていただいて、結局、できないとのお返事でした。著作権の世界では、作曲家に絶大な権利があり、編曲者はあったりなかったりで、採譜者にはないのでした。私が調号も変拍子も決めたのにね!
結局、その作品はどうなったのかな…。私の手元には、それらの曲の断片の楽譜のみが残っています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?