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イルジー・コウトの思い出
学生時代、イルジー・コウト指揮、N響(NHK交響楽団)の演奏会を聴きました。とても記憶に残る演奏会でした。もう二十年以上前(おそらく20世紀の話)のことになりますが、記憶をたどって書きたいと思います。
その日のプログラムは、4曲。ウェーバーの「オベロン」序曲、ヒンデミットの「ウェーバー変容」、モーツァルトのピアノ協奏曲第25番(ピアノ:イヴァン・モラヴェツ)、モーツァルトの交響曲第39番。
1曲目、ウェーバーの「オベロン」序曲は、最初のホルンの伸ばしが難しいですが、うまくいきました。
2曲目、ヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」は、1曲目との「ウェーバーつながり」でしょう。オベロンの主題が出てくるわけではありませんが…。ヒンデミットのオーケストラ曲のなかでは、かなりよく演奏される曲です。第4楽章は、私はつい、「ゆーきーよ、いーわーよ、われらーが、やどりー」と歌詞をつけて歌ってしまいます。最後の最後で、指揮者のコウトの「大かまし」がありました!すごい!
3曲目、ソリストにモラヴェツを迎えてのモーツァルトのピアノ協奏曲第25番です。この曲は、モーツァルトの後期のピアノ協奏曲のなかでも、かなり「硬派」というか、立派な作品だと思います(ちょっとしたベートーヴェンみたいな)。モラヴェツのピアノは、たいへん音が美しく、すばらしいものでした。
4曲目、最後の曲は、モーツァルトの交響曲第39番でした。この曲は、アマチュアオーケストラで、数限りなく聴きましたが、プロのオーケストラで聴いた経験は、おそらくこのときだけだろうと思います。編成的にはオーボエのない曲で、たいへん美しい曲です。コウトは、第4楽章で、またやってくれました!ホルンが、ところどころ、「かます」のです。しかも、ホルン奏者のかたが自発的にやっている様子ではなかった(やらされているっぽかった)ので、コウトの指示でやっていたのでしょう。たいへんおもしろいモーツァルトの39番が聴けました。
このころのN響は(いまはよく知りません)、NHKホールでやる定期演奏会は、学生は非常に安かったです。しかも、必ず当日券がある(めったに満席にならない)。しかも、当時の大学のキャンパスから帰り方面で極めて近い。ということで、ひんぱんに、N響の定期は聴きに行っていました。その日の思い付きで行ってもだいじょうぶなのです。この日もたしか思い付きで、仲間といっしょに聴きに行きました。いい思い出です。コウトも、モラヴェツも、生を聴いたのはこのときですが、とてもいい思い出になっています。最近、茂木大輔『交響録 N響で出会った名指揮者たち』を読み、イルジー・コウトの名前が出て来たので、なつかしく思い出しました。
以上です。たあいもない話でした。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
※追記をします。モーツァルトの39番は、モーツァルトの40番や41番「ジュピター」は好きだけど聴いたことのないかたにはおすすめです。また、ヒンデミットの「ウェーバー変容」は、ヒンデミット入門に最適です。ヒンデミットの曲のなかでは、かなり聴きやすいです。