「保守の木馬:外国人ヘイトの謎」 第109回 レミングする人々
ここのところ保守を語りながら外国人を排斥し、その結果保守の仮面をかぶったトロイの木馬が蝕んでいるような気がしてなりません。
そんな思いで書いた第三弾です。
保守の木馬:外国人ヘイトの謎
序章:疑惑の種
浜田清一は杯に注がれた緑茶の蒸気が上るのを眺めながら、事務所の椅子に深く身を沈めた。外は秋の訪れを感じさせる涼しい風が吹いている。パソコンの画面には、Twitterのフィードが無数に並んでいる。
「エミリー、ちょっと来てくれるかな?」
ドアが開き、中に入ってきたのはエミリー。彼女は明るい笑顔で、「何かお手伝いできることは?」と尋ねた。
「このツイート、見てくれ。『外国人研修生は日本の資源を奪っている』とか、『外国人が年金をもらうなんておかしい』とかさ。これには何とも言えない違和感を感じるんだが、エミリーはどう思う?」
エミリーは浜田の指差す画面をじっと見つめた。
「確かに、これは問題だと思います。表面上は一般の人々の意見かもしれないけれど、このような言説が広がると、外国人に対するヘイトが高まる。それに、誤情報も多いですね。」
浜田は頷いた。
「だよな。しかも、何か裏に隠された目的があるような気がしてならない。」
「何か手がかりはありますか?」
浜田は一瞬考えた後、遠くを見つめながら言った。
「まだ確かなことは何も言えない。でも、このヘイトスピーチが高まる背景には、もしかすると大きな組織が関与しているかもしれない。そして、その目的はただの外国人排斥以上の何かだ。」
エミリーは瞳を細めた。
「それは深刻な問題です。何か手がかりが見つかれば、追求していく価値はありますね。」
浜田は緑茶を一口飲み干し、立ち上がった。
「だったら、調査を始めよう。」
第1章:秘密のネットワーク
「Xでの発言がヒートアップしてるね。」
浜田清一はパソコンの前でエミリーに向かって言った。エミリーは、傍らで開かれた多国籍企業のレポートを読みながら頷いた。
「確かに、ヘイトスピーチが増えています。しかも、特定のアカウントから繰り返されているようなのです。」
「単なる偶然じゃない、と。」
「そう思います。」
エミリーはレポートを閉じ、椅子に座って浜田と目を合わせた。
「では、どうしますか?」
「まずは、その特定のアカウントが何者なのか突き止める。次に、背後にいる組織や人物、そこから拡散される情報の真偽を調査する。」
「私は外国人として、そのような偏見にどう影響を受けるのか、も研究したいです。」
浜田は笑った。
「それは面白い角度だ。あなたの視点は、この問題に多角的な解をもたらしてくれるかもしれない。」
二人は画面を再び眺め、特定のアカウントから発信されるツイート、それを拡散する人々、そしてそれに対する反応を精査した。浜田は一つの疑惑を持ち始めた。
「これらのアカウント、国内の何らかの団体に関連しているかもしれない。そして、その団体は外国人排斥だけではなく、より大きな動きを計画している可能性がある。」
「それが何かを突き止めるのが、私たちの使命ですね。」
「その通りだ、エミリー。さあ、この迷路の真相を解き明かそう。」
第2章:二つの顔
浜田清一はエミリーとともに、街の一角にある小さな喫茶店でコーヒーをすすっていた。
「あの地方議員、松岡という人物が興味深いんだ。」
浜田が言った。
「松岡議員?聞いたことがあります。彼は最大与党を標榜しているが、実は公認を受けていないという噂があるのですよね。」
「その通り、エミリー。何か胡散臭い。彼は外国人研修生制度に賛同するという表向きの発言をしているが、X上では一貫していない。」
「何をしているんですか?」
「例えば、一方で外国人に対する差別的な請願や陳情を仕掛けているらしい。そして、それが一部の極端なグループによって拡散されている。」
エミリーが眉をひそめた。
「それは急に興味深くなってきましたね。」
突然、浜田のスマートフォンが振動した。新しいメールの通知だ。
「何か来ましたか?」
「うーん、匿名からの情報提供だ。『松岡議員が次に動くのは、靖国神社での集会。それ以上は言えない』と。」
「靖国神社での集会とは?」
「疑わしい。何もかもが。でも、行ってみる価値はある。」
「そうですね。しかも、松岡議員がどれほど信用できるのかも、この集会で試せる機会かもしれません。」
「その通り。行こう、靖国神社へ。」
二人はコーヒーを飲み干し、店を出た。向かう先は、多くの矛盾と疑念が渦巻く場所だった。
第3章:霊廟の影
浜田清一とエミリーは、事前の情報に基づいて靖国神社に到着した。ところが、松岡議員の姿はどこにも見当たらない。
「どうやら、議員はここにはいないようだな。」
「それはおかしいです。何かが裏で進行している可能性が高い。」
その時、エミリーがスマートフォンを手に取った。
「待ってください、浜田さん。松岡議員がXで何か投稿していますよ。」
「何と言っている?」
「『靖国神社で心を新たにしました。日本の未来のために、更なる努力をして参ります』と、写真と共に投稿されています。」
しかし、その写真には明らかな違和感があった。松岡議員は靖国神社の拝殿に尻を向け、撮影禁止の場所、それも神様の通り道である参道の中央で写真を撮っていた。
「この写真、完全に場違いだ。拝殿に尻を向けるなんて、保守を標榜する者としてはありえない。」
「しかも、この集会はその政党の公認議員しか参加できないという情報があります。松岡議員がいないのはそのせいかもしれません。」
「つまり、この写真はただのポーズで、彼が本当には公認を受けていないという証拠だ。」
「そのようですね。この事実を広めれば、彼の偽りが暴かれる可能性があります。」
浜田清一はにっこりと笑った。
「さて、この情報をどう使うかが問題だな。」
エミリーも笑い返した。
「その答えを見つけるのは、私たちの仕事ですから。」
第4章:疑惑の連鎖
浜田清一は静かに机上の文書に目を通していた。エミリーが傍らで何かを検索している音が耳に入る。
「浜田さん、これを見てください。」エミリーがディスプレイを指差しながら言った。
彼女が指摘する記事は、地方議員が外国人研修生制度に対する問題点を提起し、請願を提出したというものだった。
「この議員は松岡と親しい複数の地方議員の一人なんです。」
浜田は少し眉をひそめた。
「それは興味深い。松岡議員もそうですが、周りの人間も疑惑に包まれている。これはただの偶然ではなさそうだ。」
エミリーはしっかりと頷いた。
「そう感じます。実際に彼らが何をしているのか、どういった目的があるのかをしっかりと探っていかなければなりません。」
「君の言う通りだ。まずは、この地方議員が具体的に何を請願しているのか、その背後にいる人物や団体は何か、それらを調査しよう。」
二人は再び自分のタスクに戻ったが、その眼差しには共通の決意が浮かんでいた。
第5章:真実を追い求めて
「浜田さん、見つけました。その地方議員の請願は、外国人研修生制度の改善と称していますが、内容を詳しく見ると、かなり問題のある提案が含まれています。」
エミリーは気を引き締めた表情で画面を指差した。浜田は近づいて内容を確認する。
「なるほど、これは外国人ヘイトを煽るような内容だ。しかも、この請願が出されたのが松岡議員の地元だと?」
「はい、それが問題なんです。こうした動きが秘密裏に進められているようです。」
「それに、この請願が通ると、人々の偏見が法制化されかねない。これは極めて危険な状況だ。」
「何か手が打てないでしょうか?」
浜田はしばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「エミリー、まずはこの請願を出した地方議員と、その周囲の人々がどのようなコミュニケーションを取っているのか、SNSで何を発信しているのかを調べてくれ。X(旧Twitter)などで犬笛政治が行われている可能性もある。」
「承知しました、調査してきます。」
エミリーはすぐに検索を開始した。浜田はその間、自分の頭の中で次の手を考える。松岡議員と彼の周囲の動き、それが一体全体何を目指しているのか。
「何か見つけましたか?」浜田が尋ねる。
「いくつか怪しい投稿はあります。しかし、明確な証拠はまだ見つかっていません。」
「じゃあ、引き続き調査をお願いする。これは時間がかかるかもしれないが、我々が突き止めなければならない真実だ。」
エミリーは頷いた。「わかりました、何が何でもこの問題の核心に迫ります。」
二人の間に流れる緊迫した空気は、それだけこの問題が重大なものであることを如実に示していた。
第6章:偽情報の渦中で
エミリーが画面に表示されたX(旧Twitter)の投稿をスクロールしながら、浜田は内心で唸っていた。
「こちら、松岡議員がリツイートしたものですが、「外国人が日本の年金を悪用している」という内容のものがあります。」
「その投稿、確認させて。」
エミリーはスクリーンを浜田に向けた。確かに、松岡がリツイートした投稿には、年金制度を「外国人が不正に利用している」といった語句が並んでいる。
「しかも、これが驚きなのですが、元の投稿者が税理士だと名乗っています。」
「税理士? 本来、年金に関する相談は社労士が専門だ。なぜ税理士がこんなことを…」
「もしかすると、この税理士も松岡議員と何らかの形で繋がっているのかもしれません。」
「それも一つの可能性だ。しかしこの年金に関する情報、確証はあるのか?」
「詳しく調べたところ、そのような公式の報告や証拠は見当たりません。」
「つまり、これは誤情報、もしくは偏見に基づいた情報を拡散していると。」
「はい、それが問題です。このような誤情報が拡散されれば、不必要に外国人に対するヘイトが高まります。」
「エミリー、これは確かに深刻な問題だ。ただ、これを公にしても松岡議員やその周囲の人々は、きっと何らかの方法で言い逃れをするだろ
第7章:疑惑の広がり
浜田清一はデスクに座り、エミリーに向かって言った。
「エミリー、その怪しい投稿に関連する請願や陳情が地方議会に提出されている。松岡の影響が広がっているようだ。」
エミリーは浜田の言葉に深刻な表情を浮かべた。
「それは良くない兆候ですね。特に年金に関する偽情報が拡散されるのは問題です。」
「そうだ。それに、何故か税理士に年金問題について相談しているという点も怪しい。年金問題なら、通常は社労士や年金機構が適切な相談先だ。」
「そうですね。年金に関しては、通常は組合や年金機構からしっかりとした情報が提供されるはずです。」
浜田は頷き、キーボードを叩き始めた。
「これ以上、不正確な情報が拡散される前に、何らかの手を打たないと。」
第8章:行動の始まり
浜田はエミリーに向かって言った。
「エミリー、我々が何かしなければ、このような誤情報や疑惑が広まるだけだ。重要なのは、外国人へのヘイトを防ぎ、同時にこれが何らかの大きな陰謀の一部である可能性について調査することだ。」
エミリーはしっかりと浜田の目を見た。
「確かに、何か行動を起こさないと状況は改善されません。誤情報はただの煽りであればそれまでですが、それが何か大きな陰謀の一部であれば、放置してはいけません。」
浜田は傍らに置いてあった電話に手を伸ばした。
「じゃあ、先ずは、この件に詳しい社労士や法律家に話を聞くことから始めよう。そして、松岡やその仲間がどれだけこの問題に関与しているのかを調査する。」
「それが良いと思います、浜田さん。」
二人は一瞬の沈黙を挟んだ後、それぞれのアクションプランに着手するために立ち上がった。
第9章:網の中の蜘蛛
浜田清一とエミリーは社労士、法律家、そして多くの信頼できる情報源から話を聞いた。それにより一つの事実が明らかになった。それは、外国人に対するヘイトと見せかけて、実はその背後で何らかの不正や利益誘導が行われている可能性が高いことだった。
エミリーが確認したX(以前のTwitter)上の投稿にも、何らかの組織的な動きが見て取れた。特定のハッシュタグが繰り返し使われ、同じような言い回しが多く見受けられた。
「浜田さん、これを見てください。#外国人年金制度 このハッシュタグ、何かおかしいです。一部の人たちが極端な言い回しで煽っているようです。」
「そうだね。これは単なる個人の感情では説明できない。組織的な何かが働いている可能性が高い。」
浜田は画面を見つめながら言った。
「問題は、このヘイトキャンペーンが一体誰の手によるものなのか、そして、その目的は何なのかだ。」
エミリーは浜田に向かって言った。
「それを突き止めるためには、松岡議員とその周囲の人々に焦点を当てるべきだと思います。」
浜田は頷いた。
「そうだ。そして、もしこれが何らかの陰謀であれば、その糸口をつかむことで大きな波紋を呼び起こすかもしれない。エミリー、準備はいいか?」
「いつでもOKです、浜田さん。」
二人は再び沈黙を挟み、それぞれが持つスマートフォンで最後の確認をした。ここからが本当の戦いだ、と二人は感じながら、次なる行動に移る準備を整えた。
第10章:針の筒の中の真実
浜田清一はエミリーに呼びかけられ、画面を覗き込んだ。
「これを見てください、浜田さん。#外国人年金制度でのハッシュタグで投稿された文章の中に、松岡議員の写真が使われています。ただ、この写真、何かおかしいんです。」
「何がおかしいのかな?」
「この写真は靖国神社で撮られたようですが、松岡議員が拝殿に背を向けているんです。以前も同様の撮影をしていましたから、これは偶然ではないようです。」
「つまり、松岡議員が敬意を装いながら、実際には侮蔑しているというわけか。それは確かに気になる。これが松岡議員の矛盾を証明する一つの証拠になるかもしれない。」
浜田は深くため息をついた。誤情報の拡散とはいえ、松岡議員が持つ影響力は軽視できない。特に、このような微妙なメッセージが含まれている写真を用いることで、疑いようのない「真実」を作り上げようとしている。
「この写真と同様の手法で、外国人へのヘイトを煽っているとしたら、その背後には何があるのでしょうか。」
「それが分かれば、松岡議員やその仲間が何を目論んでいるのか、一歩近づくことができるでしょう。」
「そうだね、エミリー。これからも一緒に取り組んで、真実を明らかにしていこう。」
エミリーはにっこりと笑った。
「もちろんです、浜田さん。」
第11章:疑惑の影
エミリーが画面をスクロールしていくと、ある投稿が目を引いた。それは、#外国人年金制度に絡めて、外国人が日本での年金制度と生活保護をダブルで受け取っているという嘘の情報だった。
「これ、みてください。まさに私たちが調査しているような内容ですよ。しかも、なぜかこれに税理士がコメントしています。」
「税理士? これは本来、社労士が担当するべき問題では?」
「まさにそれです。」
浜田は一瞬考えた。
「この税理士、もしや松岡議員と何らかの関係が?」
「それも考えられます。この税理士が複数の地方議員とも親しいという情報もありますから、松岡議員もその一人かもしれません。」
「つまり、この怪しげな投稿も、松岡議員が影で操っている可能性があると。」
「そう考えられます。」
「まだ直接の証拠は見つかっていないが、これらの情報を元にもう少し調査を進めよう。」
エミリーはしっかりと頷いた。
「分かりました、浜田さん。私たちは真実を暴き出すために、どんな困難も乗り越えましょう。」
浜田はエミリーの確固たる意志に心から安堵した。そして、ふたりは再び画面の前に集中し、次なる手がかりを求めてスクロールを始めた。
第12章:繋がる糸
浜田とエミリーはそれぞれの手元のデバイスで熱心に情報を探し続けた。エミリーが何かを見つけると、浜田にすぐにそれを共有し、浜田が何かを発見すると、エミリーにそれを示した。
「浜田さん、見てください、これは...」
エミリーが指を止めたのは、何と松岡議員がスポンサーとなっている地方のイベントのポスターだった。そしてそのイベントには、先ほど疑問を持った税理士の名前も掲載されていた。
「これは大きい。二人が公に関係している証拠ですね。」
「確かに。しかもこのイベント、内容が明らかに外国人研修生や移民政策に関するもの。彼らが何を企んでいるのかはまだわかりませんが、これは明らかに怪しい。」
浜田はしばらく考え込んだ後、頷いた。
「良い仕事をしてくれました、エミリー。これが糸口になれば、真実を暴く道がひらけるかもしれません。」
「ありがとうございます、浜田さん。でも、これだけではまだ不十分です。」
「その通り、もっと深く調査を進めていきましょう。」
ともに、浜田とエミリーは新たな糸口が見つかった喜びと、これからの課題に対する決意を感じながら、次の手がかりを探し始めた。
第13章:遠く離れた舞台
浜田は突然、エミリーに向かって声を上げた。
「エミリー、この市政報告会の開催地、大阪って書いてありますよね?」
「ええ、そうですが?」
「松岡議員は九州の地方議員でしょう?なぜ大阪で市政報告会を開くのですか?」
エミリーはその疑問にすぐに反応した。
「それは確かにおかしいですね。九州と大阪はかなり離れています。地方議員が自分の地域以外で市政報告会をするなんて、通常考えられません。」
「しかも、その税理士が参加しているというのもあります。何か裏がありそうですね。」
エミリーは頷いた。
「かなり怪しい組み合わせです。これは追求しなければなりません。」
浜田も同感であった。
「この大阪での市政報告会、何か大きな秘密が隠されている可能性が高い。とにかく、このイベントについてもっと詳しく調べる必要があります。」
二人はそれぞれのデバイスを取り出し、新たな疑問が追加されたこの複雑なパズルの解明に取り組んだ。
第14章:影の糸
浜田はエミリーに深刻な表情で言った。
「エミリー、この情報を見てください。松岡がなぜか大阪で市政報告会を開催するそうです。」
「大阪で、ですか?でも彼は九州の地方議員で、影響力も乏しいはずですよね?」
「正確には、影響力がないように見えているだけかもしれません。」
「どういうことですか?」
「記憶していると思いますが、以前調査していた秘密組織の名前がこの報告会の資料にも出てきました。」
「それは…」
「はい、松岡はその秘密組織のコマとして動いている可能性が高い。そしてこの報告会も、何らかの暗躍があるのかもしれません。」
「さらに、次期大阪市議会選挙に出馬予定の自称ミュージシャン女性候補も参加すると。これは単なる報告会以上の何かがありそうですね。」
「まさに。その女性候補もこの秘密組織と何らかの形でつながっているかもしれない。私たちが何を見つけるか、何を感じ取るかが重要です。」
エミリーは深く頷いた。これまでの調査が示しているように、表面だけを見ては真実は掴めない。
「じゃあ、その報告会に参加して、直接確かめましょう。」
「同感です、エミリー。急いで準備を始めましょう。」
二人は、秘密組織の次なる動き、そしてその一環として松岡が何を企んでいるのかを解明するため、大阪への行動を急いだ。
第15章:大阪の疑惑
大阪に到着した浜田とエミリーは、松岡の報告会が開催される会場に向かった。会場にはすでに多くの人々が集まっていた。九州の地方議員である松岡がなぜ大阪でこのようなイベントを開催するのか、その真意を探るべく二人は注意深く会場を観察した。
「浜田さん、あれが次期大阪市議会選挙に出馬予定の女性候補ですよね。」
「うん、そうだ。彼女も何かしらこの動きに関与しているのだろうか。」
報告会が始まり、松岡が登壇した。その言動からは、彼が一見するとただの無力な地方議員であるかのように見えた。しかし、話が進むにつれ、彼の言葉には何となく計算されたものを感じる。
「今日は大阪でこのような会を開くのは、新たな風を吹かせたいからです。九州と大阪、違いはあれども、我々が目指すべき方向性は同じです。」
「それに、特別なゲストとして、次期大阪市議会選挙に出馬するであろう美しい女性がいます。彼女にも何か一言お願いします。」
自称ミュージシャンの女性候補が微笑みながら登壇し、短いスピーチを行った。内容は抽象的であったが、聴衆はなぜか彼女の言葉に引き込まれた。
「ありがとうございます。このような場を提供してくださった松岡議員に感謝します。そして、新しい風、新しい未来を一緒に作り上げていきましょう。」
浜田とエミリーは不穏な空気を感じ取った。彼らが疑惑を感じる間にも、松岡と女性候補はその場で何らかの信号を送っているようだった。
「エミリー、これはただの報告会ではない。何か大きな計画の一環である可能性が高い。」
「私もそう感じました、浜田さん。何を隠しているのでしょうか。」
二人はより一層、この複雑なパズルを解明する決意を新たにした。
第16章:秘密の合図
浜田とエミリーは報告会が終わるとすぐに、その場を後にした。二人は隣接するカフェで会話を続けた。
「浜田さん、何か松岡とあの女性候補者の間には確かに信号のようなものがあったように思えます。」
「うん、俺も同感だ。しかも、その女性候補、何となく話しが長いと弱点が出そうな雰囲気がする。」
「そうですね。自分を過大評価しているような気がします。」
「まぁ、それは次回の選挙でどう出るかだけど、今の問題は、この松岡と女性候補、そしておそらく他にも何らかの組織が関わっている可能性が高い。」
会場で行われた「報告会」は、一見すると単なる情報提供の場であるように見えたが、その裏には何らかの目的が隠されていることが明らかであった。
「松岡はあれだけの人を大阪に呼び寄せる力はない。地元でさえ影響力が乏しいようだし。」
「ですが、それでも何かしらの目的でここでイベントを開いたわけです。何か大きな裏があるのでしょう。」
「問題は、それが何かを突き止めることだ。」
エミリーはコーヒーを一口飲んだ後、冷静に言った。
「私たちが注意深く観察し、全ての情報をつなげていくしかないですね。」
浜田は頷いた。
「そうだ、何が起ころうと、真実を暴くまで止まらない。」
二人はその後、深く考え込む時間を持ち、何らかの糸口を見つけるべくさまざまな情報を交換した。そして、浜田が一つの仮説に辿りついた。
「この全ては、ひょっとして……」
第17章:糸口と深淵
「この全ては、ひょっとして…」
浜田の言葉が途切れた瞬間、エミリーのスマートフォンが振動した。彼女は慎重に画面を見た。
「これは…あるジャーナリストからの情報です。『最近、複数の議員が突如として富裕層向けの税制改革を強く推進している。その背後に何かあるのでは?』という内容です。」
浜田はしばらく考え込んだ後、頷いた。
「それはもしかしたら、松岡たちが暗躍する大きな計画の一端かもしれない。」
「確かに、地方議員が大阪で市政報告会を開く理由がよくわからなかったけれど、これを考慮に入れると…」
「何らかの大きな動きがある、それが確実だ。」
エミリーがコーヒーのカップを下ろし、真剣な表情で浜田に尋ねた。
「これからどう行動すればいいと思いますか?」
「まずは、そのジャーナリストと連絡を取る。そして、地道に情報を集め、事実を解明していくしかない。」
「私もその方向で行動を開始します。」
浜田はエミリーの目を見つめた。
「どんな困難が待ち受けていても、真実を明らかにする。そのためにはどんなリスクも厭わない。」
「私も同じです、浜田さん。」
二人の目が交わり、その瞬間、彼らは改めて決意を新たにした。何が起ころうと、この深淵の底に隠された真実を暴くまで、二人は決して立ち止まらない。
第18章:隠された脅威
エミリーと浜田は、ひそかに計画を練っていた。その中で浜田は突然、深く考え込んだ表情を見せた。
「エミリー、一つ考えてほしいことがある。」
「何でしょうか?」
「松岡たちによる外国人ヘイトが高まれば、今、日本が置かれている海外研修生実習制度によって救われている人々にも大ダメージを与える。」
「それは確かにそうですね。」
「そして考えてみてほしい。それは何か?農業や建築業だ。外国人排斥が行われたら第一次産業は滅びると言っても過言ではない。そのとき、日本の国力はどうなる?」
エミリーは沈黙した。浜田の言葉には重みがあった。
「単純に『移民制度反対』と騒ぐ連中が、代替案を出しているか?実際にそのような現場を視察しているか?その根幹部分に目を向けずに保守を語り、政局の混乱だけを狙っていないか?」
浜田は顔を引き締めた。
「つまり、彼らが行っていることこそが、日本転覆、日本侵略を図る保守の仮面をかぶったトロイの木馬ではないか。」
エミリーはしばらく言葉を失ったが、最終的に頷いた。
「その通りです、浜田さん。それが本当の問題です。」
第19章:目指すべき先
エミリーと浜田はついに行動を起こすことに決めた。彼らは松岡が大阪で開催する市政報告会に参加することを計画した。九州の地方議員でありながら大阪で行われるという事実には明らかな違和感があった。
「浜田さん、どうして彼は大阪でこんなイベントを開催するんでしょうね?」
エミリーが疑問に思いながら尋ねた。
「松岡はただの議員ではないからだよ。彼がやっているのは、次の大阪市議会選挙に出馬予定の自称ミュージシャン女性候補をサポートするため。しかも彼自体、影響力のないボッチ議員だ。大阪で何かを仕掛ける意味があるんだ。」
浜田の言葉にエミリーは驚いたが、すぐに納得の表情を浮かべた。
「でも、それだけで何が起こるんでしょう?」
「女性候補が当選すれば、松岡たちの影響力が一層広がる。そして、その背後で操る秘密組織が更に力をつける。でも、その女性候補、長く話せば話すほどにボロが出るタイプだから、その弱点をついてやる。」
「なるほど、それが私たちの目指すべき先なんですね。」
浜田はにっこりと微笑んだ。
「さあ、行こう。最後のバトルが待っている。」
第20章:裏の裏
松岡の市政報告会の会場は、大阪市内のある高級ホテルの宴会場に設定されていた。エミリーと浜田はふたりで会場に入った。
「松岡議員、こんばんは。私は浜田清一と言います。あなたが提案している政策について聞きに来ました。」
「おお、浜田さん、いらっしゃい。どうぞ、座って楽しんでいってください。」
松岡はにっこりと笑いながら言ったが、その笑顔には何か計算されたものを感じた。
報告会が始まり、松岡は壇上で話し始めた。だが、その言葉の中には多くの矛盾と偏見が散りばめられていた。
エミリーが浜田に耳打ちをした。
「これはただの外国人ヘイトの舞台だと思うけど、私たちは何をすべき?」
「待って、まだ終わってない。彼らが何を計画しているのか、もうすぐ明らかになる。」
報告会が終わり、質疑応答の時間が始まった。
浜田は手を挙げた。
「松岡議員、私がお尋ねしたいのは、外国人研修生に対するあなたの考えです。特に、農業や建築業など、外国人労働者が多く働いている業界にどのような影響を与えると考えているのか。」
松岡は一瞬顔色を変えたが、すぐに笑顔を取り戻した。
「それは非常に良い質問ですね。しかし、私たちは日本のために何が最善かを考えるべきです。」
浜田は深呼吸をした。
「松岡議員、外国人ヘイトが高まれば、日本が置かれている海外研修生実習制度によって救われている人々にも大ダメージを与えます。それは何かと言えば、農業や建築業です。外国人排斥が行われたら、第一次産業は滅びます。そのとき日本の国力はどうなるでしょうか?」
会場内が静まり返った。
「かれらが行っていることこそ、日本転覆、日本侵略を図る保守の仮面をかぶったトロイの木馬ではないか」
と浜田は続けた。
その言葉に、会場内がさざ波を立てるような動きが起きた。
第21章:仮面を剥ぐ
「松岡議員、それについてはどうお答えしますか?」エミリーはマイクを向けた。
松岡は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに口を開いた。「それは極端な例を出しているだけで、私の提案が全ての産業に悪影響を及ぼすわけではありません。」
浜田は再度マイクを取った。「だが、具体的な代替案を示しているわけではありませんよね。産業が損なわれた際には、どう対処するのでしょうか?」
松岡は狼狽を隠しきれず、周囲の人々もその変貌に驚いていた。
「具体的な案がなければ、ただの非建設的な批判にすぎません。それでは、我々はどこにも進めません。」
エミリーが口を挟んだ。「それに、この市政報告会を大阪で開いているのは何故なのでしょうか?あなたは九州の地方議員ではありませんか?」
松岡はさらに動揺を強めた。「それは…その…」
浜田は決めの一撃を与える。「市政報告会を大阪で開くこと、それ自体は問題ではありません。問題なのは、あなたが何のためにそれを行っているのか。そして、その背後に何があるのか。あなたが本当に守りたいものは何なのか、それを明らかにしてください。」
会場は完全に静まり返り、松岡は何も言えずにその場に立ち尽くしていた。
「市民の皆さん、我々が求めるのは、偽りのない透明な議論です。外国人ヘイトや排外主義に基づく短絡的な提案ではなく、しっかりとした根拠と計画に基づいた議論が必要です。」
浜田の言葉に、会場から拍手が起きた。松岡はその場を後にし、会場は次第に解散していった。
エミリーと浜田はふたりで会場を出た。
「効果的な質問で松岡議員を追い詰めることができましたね、浜田。」
「君もまた、非常に助かったよ、エミリー。だが、これで終わりじゃない。まだやるべきことはたくさんある。」
二人は夜の大阪の街を背に、次の行動について話し合った。
第22章:新たな課題、新たな希望
エミリーと浜田は次の日、大阪のカフェで再び会った。
「松岡議員が大阪で活動を展開している意味、もう一つ考えられます。それは次の大阪市議会選挙に影響を与えたいという点です。」
「その女性候補者もその一環なのかな。」
「確かに、彼女は非常に変わり者ですが、松岡議員のような人物が支援するだけには理由があるでしょう。」
浜田はコーヒーを一口飲みながら考えた。
「それなら、その女性候補者にも目を光らせておかないとな。」
エミリーは頷いた。
「その通りです。しかし、私たちが今すぐにやるべきことは、松岡議員とその後ろにいる力に対抗する糸口を見つけることです。」
「だが、その前に一つ気になることがある。」
「何ですか?」
「松岡議員やその女性候補者を追い詰めることができたとしても、それによって外国人に対する偏見や差別が減るわけではない。そういう根本的な問題に対処しないと、次から次へと同じような人物が出てくるだけだ。」
エミリーは目を細めた。
「その問題に対処するためには、この国の教育やメディア、そして政治自体を変えなければなりません。それは容易なことではありませんが、そのための第一歩として、松岡議員たちのような人物を止めることが必要です。」
「それにはどうすればいい?」
「人々が考え、行動するための正確な情報を提供することです。それが私たちの使命です。」
第23章:散開と集結
大阪市議会選挙の日が近づくにつれ、浜田とエミリーの調査が進んでいった。一方で、松岡とその女性候補者もテレビやネットで頻繁に登場し、ある種の影響力を持ち始めていた。
エミリーは浜田に言った。
「この選挙で女性候補者が当選すれば、彼らの影響力はさらに拡大します。」
浜田は考え込んだ。
「その場合、単なる地方議員の問題を超えて、全国的に影響を与えかねない。」
「ですから、私たちはなるべく早く手を打つ必要があります。」
その言葉に浜田は頷いた。しかし、彼はまた疑問を抱いた。
「でも、エミリー。彼らを倒したとしても、根本的な問題は解決しない。」
エミリーは静かにコーヒーを一口飲んでから言った。
「確かに、それだけでは問題は解決しない。でも、何もしないよりはマシです。それに、一人でも多くの人に正しい情報が届けば、少しずつでも状況は変わるでしょう。」
浜田はその言葉に力を感じ、深く頷いた。
エピローグ
浜田は選挙結果を見て、一抹の安堵と緊張が交錯する心情を抱いた。一つの戦いは終わったが、新たな戦いがまた始まる。そんな感触が彼を満たしていた。
再会したエミリーは、いつもの冷静な表情で彼に言った。
「結果は予想通りだったわね。しかし、これで終わりではない。次の戦いに備えよう。」
浜田はエミリーの言葉に頷き、少しの疲れを感じつつも新たな決意を固めた。
「ありがとう、エミリー。次の章に向け、準備はできている。」
二人は目を合わせ、未来に向けた新たな一歩を踏み出した。
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