電験三種を5か月間の独学で高得点一発合格した体験記
令和6年度第三種電気主任技術者(電験三種)上期試験をCBT方式で受験して、5か月間の独学の末に4科目全て合格(一発合格)することができました。
各科目の得点は、理論100点、電力100点、機械95点、法規100点で、いずれの科目も高得点での合格でした。
本記事では、その合格体験を記したいと思います。
はじめに
最初に注意点として、本記事の方法に従って勉強すれば、誰でも同じように電験三種に合格できるとは限らない、ということだけはお伝えしておきます。
当然ですが、人それぞれに背景があり、適性も異なります。例えば、高校までの数学知識が一切ない人と、電気系大学を卒業して、その後も電気系の仕事に就いている人とでは、スタート地点に圧倒的な差があります。勉強方法にしても、読んで覚えるのが得意な人もいれば、書いて覚えるのが得意な人もいて、得手不得手は違います。
このような勉強方法で合格できた人もいるんだな、というくらいの気持ちで本記事を読んでいただけたら幸いです。
筆者のプロフィール
筆者のプロフィールを簡単に紹介します。
理系の4年制大学を卒業後、メーカーに就職し、10年以上勤務しています。
大学では化学を専攻しており、メーカーでも化学寄りの業務に携わっていますが、電気については学生時代からほとんど触れておらず、初心者と言えるでしょう。
そんな電気初心者な筆者が、どのようにして電験三種に合格できたのかを書いていきたいと思います。
使用した教材
資格の勉強に必要なものと言えば、知識をインプットするための参考書と、アウトプット学習用の過去問の2つが鉄板でしょう。
しかし、電験三種の勉強において、私は参考書を一切使用しませんでした。
では、知識をインプットするために何を使用したのか?
それは、YouTube動画です。
今の時代は非常に有難いことにネット環境さえあれば、電験三種を無料で動画学習することができます。
電験三種の動画学習に有用なYouTubeチャンネルは複数ありますが、その中でも特におすすめしたいのが、電験合格先生とAki塾長のチャンネルです。
彼らの動画を繰り返し視聴することで、私は電験三種合格にたどり着くことができたと言えます。
もちろん参考書によるインプット学習でも全然問題ないと思いますが、買った参考書が自分に合わなかった場合、損した気分になりますよね?
その点YouTube動画であれば無料で視聴できるので、とりあえず試しに視聴してみて、もし動画学習が合わなかったら、参考書での学習にシフトすることもできます。時間は多少消費しますが、お金を無駄に消費することはありません。お財布にも優しい学習スタイルなので、これから電験三種の勉強を始めるという人は、YouTube動画で勉強してみるのは如何でしょうか?
次に使用した過去問について紹介します。
理論・電力・機械については、テーマ別で収録されている20年分の過去問(電気書院)を購入しました。
過去問を使って繰り返し勉強することが、電験三種合格への近道だと思っていましたので、収録されている年数が多くてテーマ毎に勉強できる電気書院の過去問は自分にとってピッタリでした。
法規については、15年分しか収録されていなかったため電気書院の過去問は買わず、電験王さんの過去問解説サイトを活用しました。15年以上の問題と解説が掲載されているため、非常にお世話になったサイトです。
また、法規は法規科目暗記アプリというものを使って勉強しました。
法律は細かい改正があるので、古い書籍や更新頻度の少ないサイトだと法律改正に対応できてないことがありますが、このアプリは比較的最近の法律改正にも対応してくれているので、アップデートされていない法律知識を仕入れてしまうようなこともありません。
アプリは無課金の状態だと大半の問題がロックされているため、全ての問題に挑戦するためにはアンロック(課金)が必要になるのですが、その金額は合計しても1,000円未満です。参考書を買うよりも安くて学習効率も高いので、個人的には非常におすすめです。
勉強した科目の順番
電験三種の勉強を開始する前に決めなければならないことがあります。
それは勉強する科目の順番です。これを適当に決めてしまうと合格から遠ざかってしまうことになります。
最初に理論、その次に電力または機械、最後に法規を勉強するのが良い、とほとんどの人が言っており、私も概ねそれに賛成です。
理論は他の科目のベースにもなっているので、特に電気初心者は理論の勉強から開始しないと間違いなくどこかで躓くことになるでしょう。電気系を専攻している学生や電気系の業務に携わっているような社会人であっても、最初は理論で出てくる問題を一通り確認してから、他の科目に進むのが良いと思います。
法規の勉強は暗記中心になります。故に早い時期から勉強を始めても、他の科目を勉強している間に暗記したことが頭から抜けてしまう恐れがあります。そういう意味でも法規は最後に勉強するのが良いでしょう。
では2番目に勉強する科目に何を持ってくるのか?
私も少し悩み、選んだのは機械でした。
理由は2つあります。
1つ目の理由は、機械は難しいと言われており、早めに着手して機械の難易度を確認しておきたかったからです。
2つ目の理由は、電力と法規の関連性は強いと言われており、これらの科目は続けて勉強した方が良いと考えたからです。
まとめると、個人的におすすめな勉強する科目の順番は『理論』→『機械』→『電力』→『法規』となります。この順番が絶対ではありませんが、最初に理論を勉強することだけは守りましょう。
各科目の勉強法
理論・機械・電力
ここから科目毎の勉強方法を述べていきたいと思います。
と言っても、理論・機械・電力については、その勉強方法にほとんど差はありません。
最初に電験合格先生のYouTube動画(演習編ではない方)を一通り視聴します。このとき動画の再生速度は2倍にして視聴しました。
例えば理論の場合、1時間前後の動画が20本あり、全ての動画を視聴するのに約20時間かかる計算ですが、2倍速再生にすることで視聴時間を半分の約10時間に短縮することができます。
10時間であれば休日なら2日間、平日でも5日間で視聴し終えることが可能です。
動画視聴が終わったら、その科目の過去問に挑戦します。
流石にインプット学習の時間が短すぎるのでは?過去問挑戦するのは早すぎるのでは?と思う方も多いでしょう。実際その通りだと思います。
電気初心者がYouTube動画を1周しただけで、電験三種の問題を解くことはほとんどできません。でもそれで良いのです。
過去問を解くことと、過去問の解答・解説を熟読することに9割近くのリソースを割くことが、私の勉強法だからです。
結果として、各科目を高得点で一発合格できたわけですし、この勉強法は(私にとって)間違ってなかったと言えるでしょう。
さて、過去問を使った具体的な勉強方法についても紹介しておきましょう。
繰り返しになりますが、電気初心者が動画学習を1周終えただけで、電験三種の過去問に挑戦しても太刀打ちできません。問題文を読んで『?』が浮かぶだけです。
そのまま考え込んでも答えを出すことはできず、時間を無駄に浪費するだけなので、すぐに解答を見ましょう。そして、解説を熟読しましょう。解説を熟読しても理解できなければ、その分野のYouTube動画に戻ります。私は電験合格先生の動画をメインに勉強していましたが、電験合格先生の動画で理解が難しかったときは、Aki塾長の動画も参考にしていました。
理解できたら必ず1回は自分の手で問題を解いていきます。過去問解説や動画で理解できたつもりになっても、自分の手で問題を解くとなると意外とできないことが多いからです。
過去問1問1問に対して、それを行っていきます。
こんな感じの勉強法なので、過去問1周目は結構な時間がかかりました。しかし、過去問1周目を疎かにせずに、じっくり勉強したおかげで過去問2周目以降は、1周目よりもずっと早いペースで問題を解くことができました。
何事も最初が肝心です。
法規
法規の勉強法は、理論・機械・電力と大きく異なります。
『使用した教材』でも紹介しましたが、法規科目暗記アプリと電験王さんの過去問解説サイトを使って勉強しました。
やったことは非常にシンプルで、アプリの『おまかせ出題』で出てきた問題を繰り返し解くだけです。アプリの『おまかせ出題』では、過去に間違えた問題を優先して出題してくれるので、苦手対策もバッチリです。
また、知らない用語はアプリ内で検索でき、その機能も大いに役立ちました。
アプリ内での正答率が90%を超えれば、法規のA問題は大体解けるようになっていると思います。
B問題についても、ここまで勉強して身に付けた理論・機械・電力の知識と、アプリで身に付けた法律知識があれば、そこまで難しくはありません。電験王さんのサイトで問題を2~3周すれば、合格レベルに達すると思います。
勉強時間
毎日の勉強時間を計測していたわけではないため、正確なトータルの勉強時間はわかりません。したがって、ここでは概算を記載します。
平日は飲み会の日(5か月間で3回ありました)を除いて、毎日欠かさず2~3時間は勉強していました。休日は土曜日に10時間程度、日曜日に5時間程度勉強していたと思います。ちなみに日曜日の勉強時間が少ない理由は、趣味のオンラインゲーム(日曜日は週課更新日)もやっていたからです。
1か月を4週間として計算すると、トータルの勉強時間は以下の通り。
平日:2.5時間/日×5日/週×4週/月×5か月=250時間
休日:15時間/週×4週/月×5か月=300時間
合計:250時間+300時間=550時間
実際は、1か月は4週間より若干多いですし、祝日や有給休暇の取得もあったので、それらを考慮すると600時間は勉強したのではないかと思います。
CBT方式を選んだ理由
電験三種受験には、筆記方式とCBT方式(パソコンで回答)があり、私はCBT方式で受験しました。
CBT方式にはメリットとデメリットの両方ありますが、メリットの方がデメリットを上回ると感じたため、CBT方式を選択しました。
CBT方式のメリットは以下の通り。
① 試験会場と試験日時を候補の中から選択できる
② 1科目ずつの受験ができる
③ 回答が1クリックの操作で済む(回答を変更するのも楽)
この中でも最大のメリットは②だと思います。
令和6年度上期試験では、7月4日~7月28日までの25日間の中から各科目の試験日を選択できたため、私は初日の7月4日と最終日の7月28日を含めた4日間を分散させて選択しました。各科目の試験日の間隔は1週間程度空いており、試験日前はその科目の勉強に集中することができました。
CBT方式のデメリットも挙げておきましょう。
① 試験日が筆記試験よりも先なので勉強時間が確保しにくい
② 問題文に書き込みしにくい
令和6年度上期試験CBT方式の試験日が7月4日~7月28日に対し、筆記方式は8月18日で1か月程度の差があります。1か月あれば結構な勉強時間を確保できるので、勉強が間に合ってない場合は筆記方式を選択することになるでしょう。
また、電験三種の問題の中には図(例えば回路図)が与えられている問題もあり、問題文に直接書き込みをしたくなることが多いですが、CBT方式だと書き込みがマウス操作になるので難易度が爆上がりします。
これらはCBT方式を選択する上で無視できないデメリットになりますが、1科目ずつ受験できるメリットの方が圧倒的に大きいと思いました。
試験科目の順番
結論から言うと『勉強した科目の順番』の逆の順番で受験しました。
つまり、『法規』→『電力』→『機械』→『理論』の順番です。
この順番にした理由ももちろんあります。
法規はCBT初日の7月4日(木)に受験しました。平日だったので有給休暇を取得しました。
法規を最初に受験した理由は2つあります。
1つ目の理由は、法規は暗記中心の勉強になるため、最後に勉強を開始して試験は真っ先に終わらせた方が良いと考えたからです。言い換えると短期決戦ですね。
2つ目の理由は、CBT方式での受験が初で、CBTの操作に不安があったからです。法規は他の科目に比べて計算問題が少なく、CBTの操作に慣れていなくても時間的な余裕はあるだろう、ということでCBT方式に慣れておく目的もありました。
電力は7月13日(土)に受験しました。
『勉強した科目の順番』でも述べた通り、電力と法規の関連性は強いので、勉強だけでなく試験も続けてやった方が良いと思い、電力を2番目にしました。
機械は7月22日(月)に、理論はCBT最終日の7月28日(日)に受験しました。機械の受験日は平日だったので、法規と同様に有給休暇を取得しました。
理論を最後に受験した理由ですが、理論は計算問題の比率が一番大きく、CBT方式との相性が一番悪い科目だと思ったからです。理論受験までに3回CBT方式で受験してれいば、流石に操作で戸惑うことはなく、最後まで落ち着いて受験することができたので、この選択は正解だったと思います。
さいごに
ここまで電験三種の勉強法や試験の戦略などについて、色々と記載しましたが、一番効果が高いのは過去問を繰り返し解くこと、また、勉強を継続することだと思っています。
4科目合格するために多くの勉強時間が必要になり、勉強のモチベーション維持も難しいですが、これから電験三種の勉強を開始する人は頑張ってください!
本記事が少しでもその助けとなれば幸いです。
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