知っておきたい入札用語:予定価格と最低制限価格
公共工事の入札において、「予定価格」と「最低制限価格」は重要な概念です。これらの価格設定は、入札の公正性と適正な工事品質を確保するために欠かせません。この記事では、それぞれの解説とこの二つをどのように入札の分析に使っていくのかをお伝えします。
予定価格とは?
予定価格とは、発注者が工事の発注前に設定する、工事費用の見積もり額で、設定することが義務付けられています。発注者は工事の内容や規模、過去の実績、市場価格などを基に、適正な工事費用を算定し、この価格を予定価格として設定します。
日本の競争入札では、落札額は予定価格を超えることができないようになっていますから、入札するときの上限と言えます。この上限を超えて入札しても落札できないのです。
予定価格は、入札の際に公表されることもありますが、非公開の場合もあります。予定価格が事前に公表されている場合ですが、後述する最低制限価格は予定価格を基準に算出されることが多いため最低制限価格の推測につながったり、見積能力に欠ける建設業者も参入しやすくなる可能性があります。
最低制限価格とは?
最低制限価格とは、入札価格の最低限度を設定することで、過度に低い価格での入札を排除し、適正な工事品質を確保するための価格です。最低制限価格を下回る入札は無効となり、適正な競争が促進されます。
入札は安い金額で入札した会社が落札できるわけですが、いくら安いと言っても最低制限価格を下回る金額で入札すると無効とされます。
例、最低制限価格が1,000万円の場合
A社 999万円
B社 980万円
C社 1,005万円
C社の入札金額が一番高いのですが、A社、B社の入札金額は1,000万円を下回っているので、C社が契約の相手方となります。
最低制限価格は事前公表されていることもありますが、公開することでくじびきになりやすいといったように適正な競争が行われにくい状況になることから事前の公表はしない自治体が増えているように思います。
予定価格と最低制限価格と入札金額を見比べると見えてくること
入札は行われた後、結果が公表されるのですがその結果を見てみると、どのくらい競争が激しいのかなど見えてきます。
例えば
ケース1 最低制限価格が1,000万円
A社 1,000万円
B社 1,000万円
C社 1,000万円
D社 1,000万円
みんな最低制限価格で並んでいます。互いに忖度することなく、利益を削ってでも工事を取りに来ていると思われます。このような工事しかないと落札できるか運も相当絡んできてしまい、新規参入者が入札に参加できても、落札し実績を作ることが難しそうです。
ケース2 最低制限価格が1,000万円
A社 1,040万円
B社 1,200万円
C社 1,180万円
D社 1,150万円
なんだかA社だけがやる気を出しているようにも見えますね。工事ごとに落札している会社は違うけれど、似たような感じの結果が続いているのであれば、お互い忖度しているのかなぁとか感じてしまいますね。
ケース3 予定価格が1,000万円
A社 1,200万円
B社 1,150万円
C社 1,300万円
D社 1,120万円
全社予定価格を超えてしまっているので入札が成立しません。こういった工事は参加者にとって採算が取れるとは思えないものだったのでしょう。ただ、採算が取れそうにないなら無理に取りに行かない会社ばかりならば、新規参入者の立場からは、そういった案件が出てくれば、実績づくりのチャンスと解釈できる余地はあるかと思います。
まとめ
入札の結果を漠然と見るだけでは、競争の激しさや落札の裏側にある要因を深く理解するのは難しいかもしれません。しかし、「予定価格」と「最低制限価格」の意味を理解し、それらと入札金額を比較分析することで、競争の程度や特定の傾向を見極めることができます。
例えば、最低制限価格付近での入札が多い場合は競争が激しく、一方で落札金額が最低制限価格と比較して余裕がある場合は競争が緩やかであることを示します。このように価格設定の意味を把握することで、入札の結果に対する洞察が深まり、より戦略的な入札活動が可能になります。