【300字小説#6】笑顔という病理
突然、魔法が使えるようになった。
手を振ると、他人の願いを叶えることができる魔法。
どんな事でも、立ちどころに叶えられた。
皆が、つぎつぎ笑顔になった。
嬉しかった。
あるとき、A氏が僕の頭を見て、
「なんやお前、禿げとるで」
と言った。
「魔法はな、自分の身体を犠牲にするんやで」
次第に指が動かなくなり、脚が棒になり、腕が石になった。
医師は、
「ま、魔法使いですから。自己責任ですな」
と告げた。
僕の症状は、自己責任、なのか。
世のため人のために力を使い、身体を壊した原因が、自己責任。
手が動かないから、もう魔法は使えない。
あと一度だけ使えたらな。
自己責任という病に苦しみながら生きるのは、死よりも辛いに違いない。