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【300字小説#9】真昼の夢は叶わない

カントは神は存在すると言った。100年後、ニーチェは神は死んだと言った。少なくとも100年のあいだ神が生きていたという事実が、人類の記憶に残り続ける。

書架からぼろぼろになった本をそっと取り出し、慎重にページをめくる。人類の叡知の結晶は、蟲が毒果実を卑しく嘗め回した後にひり出す糞や吐瀉物と同じだ。禁断の果実を食べた者の血塗れの排泄物だ。

もとの場所に本を戻す。大賢人の肩から大地を見下ろせば、果たして地球上に生きた人類の総数(何億人×何万年だろうか)の屍が不条理に散らばっている。神はどれほどの人間を屠れば気が済むのか。しかも、たった一人で。

巨人の肩から身を投げることさえ、魂の救済にはまだ足りない。

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