差し色と室外機
息をのむ偶然がある日常は、それだけで神秘的だ。好みの室外機を探してうろうろしていると、とても素敵な光景に出会うことがある。雑居ビルがならぶ路地裏の一角で見つけたこの組み合わせは、良い意味で暗示的だった。
狭い空間を最大限に利用し効率的に上へのぼろうという、いかにも機能的な螺旋階段。毎日毎日、必ず誰かがステップを駆け上がっていったはず。ペンキが剥げた手すりから感じる温もりは、人間が触れ続けた証だ。
大人の階段もこういう風なら楽だったろうにと思いながら、自分はまだまだ上っている最中だなあと頭の中でつぶやいた。幸せは誰かがきっと運んでくれるとは思わないけど、幸せを誰かに運んであげたいと思うようになったのは、ある程度年齢を重ねたからだろう。大人になるって難しい。
色褪せた螺旋階段の下に色褪せた室外機。そこに、突然現れたビビッドな色のモダンな自転車。幸せと力強さのカラーリングが、階段の一段目に足を運ぶ。
さて、自転車は何色だったでしょう?