【300字小説#12】素敵です
「こんなに広いとはなあ」
「シンバルは色んな音が重なってあの音になります。それが広さになります」
「しかもキラキラ輝いてるし」
「音色の豊富さによるものです。柔らかい音、硬い音などですね」
この街のどこかにある、音の博物館。画期的な装置の発明により音の中に入ることができる、世界で唯一の場所だ。
「音が好きなんですね」
「そうですね。でも、ここも直に閉めることにします」
「なぜですか」
「オンライン化です。生の音の価値が失われてきていて」
「でも音に変わりないのでは?」
「広さや煌めきは、やっぱり実際に見ていただいて初めて感動できると思うんです。私のこだわりかもしれませんが」
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音響さん、素敵です。ありがとう。