ノスタルジーと室外機
とても不思議な光景に思えたのは室外機のせいだ。不思議というより二律背反的というべきか。とにかく、視線が吸い寄せられて逸らすことのできない、何気ない違和感をもった景色だった。
鉄製の蒼い窓枠には、重厚さと懐かしさが混じりあっている。目隠しの波打ちトタンが柔らかなアクセントとなり、昏さと明るさの調和が楽しい。街角にひっそりと、昭和後期の佇まい。
この家の住人は、蒼い窓に白いカーテンの内側で、きっと音楽を聴いている。モダンなジャズや心地よいクラシック音楽だろうか。いや、ここはあえて、さだまさし『恋愛症候群-その発病及び傾向と対策に関する一考察-』をチョイスしたい。昭和60年の若者は、令和2年のいまは還暦を迎えるころだろう。人の恋心のあり方は、いつの時代も変わらない。
そんな昭和レトロな風景に溶け込む、少し古ぼけた一台の室外機。エアコンは平成の家電というイメージを持っているのは、僕だけだろうか。ぼんやりとした違和感の正体。