【300字小説#5】賽子はいつもXが
早く醒めろ。夢なんだから。
足が透ける感覚に、目を何度も大きく見開いた。己の命を、一縷の望みに託して何が悪い。足音が、脳に直接響き渡る。
来る日も来る日もぶらぶらしていた。足がもげそうになっても、ぶらぶらしていた。飢えても渇いても、ぶらぶらしていた。
彼は待っていた。何かに出くわすことを。いや、強く望んでいた。それが、働かない働き蟻が最も輝く瞬間だから。
好きで働かない働き蟻になったわけではない。自分も、蟷螂と闘いたかった。でもそれは叶わない夢。だから、何かに出くわすしかなかった。それが、生きた証だった。
最期の力を目に込める。光さえ、見えない。
次の日、遺骸は、巣で幼虫に与えられた。