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【300字小説#14】ジンテーゼ

「危ないから止めろ」

少しでも怪我や病気の可能性があるものを徹底的に排除されて育った箱入り娘の凛子は、困難に立ち向かう術を持っていなかった。

可か不可かが彼女の生存戦略の全てだが、基準が「少しでも危険なら不可」であるため、殆ど不可しか選択し得ない。親の遺産を食い潰したいま、電気もガスも止められ、究極の危険を前に布団に包まることしか出来なかった。

「危ないから、うまく出来る方法を考えろ」

なぜそう教えてくれなかったのか。

五輪は危険だから止めろと言うのを聞いて、凛子は幾分頬を緩ませた。日本は私ね。

危険なら全て止めろは思考停止。何も出来なくなる前に、危険を回避する知恵を身につけなければ。

負けないで。

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