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タイミーで夫の職場へ行った時の話

人生初のタイミーに行って思った事がある

もう何か月も前。
次の仕事が決まるまでの間、少し暇な時があった。
そういえば…と、前に友達が「タイミー」の話をしていた事を思い出した。
友達の知り合いが登録していてホテルの洗い場やベッドメイキング等しに行っていると言う。
多分仕事内容は気楽だろうし、お試しにやってみよっかな~と
思い立ったら吉日。
私はこういう時の行動は早い。
即アプリをダウンロードして登録、仕事の検索をしてみた。
マクドナルド、スーパーのレジ打ち、居酒屋…田舎なせいか職種はあまり多くない印象。
(後で思ったのが初回だと出てくる仕事が限られている様子。一度評価がつくと申し込み出来る仕事が増えるみたい。)

と、その中にうちの夫の職場があった。
夫の職場なら多少知ってるし、安心だ。
職場は幾つもの部門があって職種も広いし、勤務中に夫に会う事もないはずだ。
そこでまずは、夫氏に聞いて見る。
夫が言うに人手が足りなくて困っていたけど「タイミー」導入してから人が来るようになって助かってるのだそうで。
夫はそこの職場の管理職。
結構上の地位なんで一応確認してみる。
「私、タイミーで夫くんの職場に行ってみようと思うけど。いいかね?」
「構わないけど…」
と、いうわけで日時を選んで申し込みしてみる。
幾つかある職種の中で私が選んだのはレストランのホールの仕事。
食器の片付けがメインとなっていた。

いざ、仕事へ。

当日早めに職場へ到着し、指定された場所へと行く。
因みに夫がそこで働いている事は内緒にして潜入する。
「あ、あの〇〇さんの奥さん」と思われるのは互いにやりづらいので。
ホールの制服をもらって仕事をするレストランへと向かう。

レストランに到着したら
「今日タイミーで来た〇〇です。よろしくお願いします。」
と挨拶。
荷物の置き場等教えてもらい、とりあえず制服を着る事にした。
もらった制服はエプロンベレー帽。
ベレー帽の色は常勤の人は赤でタイミーの人は緑。
色で見分けがつくようになっている。
制服を装着していると60オーバーのおばちゃんに声を掛けられた。

「エプロンの付け方が違うよ、それだと肩ひもが落ちてきちゃうよ。」

どうやら紐の結ぶ位置が違ったようだ。
「タイミーさんは、エプロンの付け方を知らない人が多いね」
と言いながら、直してくれる。
言い方に棘はあるけど、悪い人ではないようだ。
多分…

その後簡単に仕事の作業内容について聞いた。
とりあえず最初の1時間くらいは洗い場の本職の人が来るまで、食事が終わった人達の下げてきたトレーや食器を洗い場まで繋ぐ仕事をするらしい。
残飯と割箸、食器、グラス、トレーを分けて洗い場のシンク付近に置いて行く。
「厨房へはシューズが専用の靴ではないから滑って転んだら危ないので中へは入らなくてよい」と説明がある。
一畳もないトレー置き場とシンクの入り口までの狭い間で作業するようだ。
以前給食センターで働いた事があるのだが、その時は衛生的な配慮で洗い場と厨房は汚染ゾーンとそうではないゾーンという事で明確に仕切られていた。
「そこまでの仕切りはないのだな..でも配慮はしておこう」
と思いながら仕事開始。
ては言え、レストランはオープンしたばかりですぐに食べ終わる人なんていないので暇…
調理場の人達は調理に忙しいようで、私のところだけ時間が止まっているよう。

そのうちぽつら、ぽつらと食べ終わる人が出始め、仕分けを始める。
それでも手持ち無沙汰なので
「何か手伝う事はないだろうか…」
と辺りを見回した。
仕分けした食器は洗浄機にセットして最終的に洗うようだ。
私が仕訳けた食器はシンクの前で詰まれている。
「これをシンクの中に入れたりしようかな、指示してくれたら食洗器にセットもするのに」
と思い、シンクの方へ数歩入る。
そんな事をしていたら調理場の人が通りかかった。

「あ、そこ入ったらダメじゃない! 言われたでしょ!」

さっきののエプロンおばちゃんに少し強めの口調で叱られた。

「何か手伝える事はないかと思って」
と、言いかけたところを優しそうな別のおばちゃんが

「知らなかったのよね」

とカバーしてくれた。
どうやら黙って待機しているしかないらしい。
「悪気があって入ったわけではないのにそんなに言わなくても」
と思いながらも、そのうちどんどん食器が下げられてきたので仕事に集中した。

そうこうしているうちに洗い場受け持ちの人達が出勤してきたので次はホールへ出る事になった。
次の仕事は食べ終わった人達の食器を下げたりテーブルをふきあげたり、足りない箸やトレーの補充等。
観光客が多く、中国や韓国からのお客さんも多い。
食器を一切下げないのは勿論、子供がこぼしまくった食べ物もそのままで帰ってしまう人もいる。
まぁでも昔、接客の仕事でもっとおかしな人達の対応してきたのでこのくらいはなんて事はない。
15時頃にはほぼ全ての仕事が終わってそこから先は消化試合らしく、みんな椅子に座ってスマホを見たりしている。

洗い場で私をかばってくれた優しいおばちゃんが
「このハイビスカスティー余ったから飲まない?」
と声をかけてくれ、お茶をごちそうになって終了時間まで休憩する。
そうして時間少し前に
「もう帰っていいよ」と帰してもらう。

施設から出ると心なしか太陽がまぶしい気がした。

そして駐車場まで歩きながら今日一日を振り返る。
確かに仕事自体は難しい事はなかった。
あと数回も行けばもう少し慣れて要領もわかるようになるだろう。
こういう働き方もありかもな…と思う。
ただ、私の呼ばれ方は「タイミーさん」
マウントとってきたエプロンおばちゃん。
あの日あの中では、私は一番下っ端だからまぁ仕方ないのかもしれない。
でも私があそこの施設の施設長の奥さんと知ったら同じ対応だっただろうか…?
私は普段は社会的にはある程度地位のある職業の非常勤を仕事としている。
私の職業を知っても同じ対応だっただろうか…?

私が今まで出会った中で「人格者だな」と思う人達は社会的地位が高いのに
誰にでも笑顔で誰にでも腰が低くて、とても感じが良かった。

常にどんな人へでもリスペクトを忘れない事は大事なのだと思った。

「タイミーどうだった?」
帰ってきた夫が言った。

その日あった事を話して、マウントおばちゃんの話もした。

まぁそういう人もいるよね、、、くらいで会話が終わって私もその事は忘れていた。

数か月後、夫は海外から来たお客さんと食事をしにそのレストランへ行ったらしい。
家に帰って来てから
「マウント取ってきたおばちゃんて 〇〇な髪型の人?」
と聞いてきた。

「厨房の人でホールに出てないから多分その人じゃないよ」
と言いながら
「まだ覚えていたのか」
と思う。

あぁ、壁に耳あり障子に目あり。

人の振り見て我が振り直せ。







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