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あぁ、無情!

昨夕、都市に住む息子からLINE。
 銀行窓口での手続きが必要で、
急遽、取引銀行へ出掛けたらしい。


年末の週明け。クリスマスも迫る
銀行はとても混雑していた。

長らく待つ間に、生まれつき
寒さに弱く、腸も弱い彼は
トイレに行く必要が生じた。


順番が来そうでも、
堤防決壊は避けたい。
が、銀行には客が利用できる
トイレは無いのだった。

彼はそれを知らなかったのだ。


私は知っていた。
それはまさに、彼自身が幼児で、
その姉の娘も幼児だった昔。

二人の幼児を連れてATMの
長い列に並ぶ私は疲れ果てていた。

もう後二人ほどが終われば、
私たちの番が来る。
寒い戸外のATMに並ぶのは
それまでの辛抱だった。


その時・・・


「おかーさん、オシッコ!!」


目の前が暗くなる、絶望の声。
姉がそう叫ぶと、弟も泣き出す。
泣きたいのはこっちである。


状況は待った無し。
弟はまだ紙オムツだから良いが、
姉はもうオムツではない。
漏水するのは避けたい。


私は意を決し、銀行内に駆け込んだ。

が、

銀行でトイレは貸してくれない。
防犯上の理由であった。

トイレの振りして内部に入ると、
そこで武装するなり立て籠るなり
危険な犯罪を引き起こす輩を
警戒しての決まりであった。


幼児二人を連れてヤツレた
主婦が強盗を働くかよ!
と、泣きたくなったが、
まさかの犯罪が当たり前に
なりつつある時代であった。


私は泣く子供二人を連れて、
銀行を後にした。
心の中で母も号泣していた。


と、そんな昔話をすると、
息子は納得したようだ。
彼は結局、銀行近くのコンビニで
難を逃れたのだが、
スッキリして戻ってみたら、
銀行の窓口業務は終了し、
シャッターが閉ざされていた。


彼の心にはきっと、
木枯らしが吹いていただろう。


毎日毎日、信じられない
恐ろしい犯罪のニュースが流れる
この社会。

身を守るため仕方ないと、
判っていても、どこか悲しい。

真面目で弱い者が耐える。
それで良いのか?

とりあえず、
年末の銀行に行かれる方は、
トイレ対策を是非、徹底してから
出掛ける事をオススメする。

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