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A案は本線案、B案は対抗案、C案は本心案。

広告のクリエイティブ提案は、3方向のことが多いです。最初は「なんで3方向なの? 1つでよくない?」と思っていました。しかし、いくつかの案件を経るうちに「3つの方向性プレゼン」にはそれなりの合理性があることに気づきました。

コピーライターとして勢いのある時は、どんな案件でも「渾身の一撃」をぶつけたい衝動に駆り立てられていました爆。いわゆる「1案プレゼン」ですね。まぁ、営業担当者やクリエイティブ・ディレクター(CD)としてはヒヤヒヤしますよね。

そんなことを思いながらも、3方向でのプレゼンをしていると「3つの方向性の本質」が見えてくるようになりました。ABC案があったら、A案とB案とC案をどう作り分けるか、が見えてきたのです。この分解能を持つことで、提案の納得性だけでなく、コピーライティングの書き分け力が飛躍的に高まったと感じています。

このnoteでは、僕が見つけた「3案出しの本質とコツ」について、書いていこうと思います。


A案「そうだよね」の重要性

コピーライターとして、お客さま(クライアント)からいただくオリエンテーションには大切なヒントが詰まっています。商品・サービスの特徴はもちろん、社内で重視しているイメージワードやブランド理念。そして、最終的には「売上を伸ばしたい」「ブランドの若返りを図りたい」など、解決したい課題も山積みです。

そんな“欲張りな要望”をまずはズバッと短い言葉にまとめるのがA案です。私の場合、A案はなるべくストレートに、オリエンどおりの要望をきっちり描写したコピーに仕上げます。

  • たとえば、「安心」「信頼」が大事と言われたら、そのまま安心感を前面に出すフレーズを考える。

  • もし「とにかく認知度を上げたい」という場合は、誰が見ても分かりやすい表現でインパクトを意識する。

A案を見せると、クライアントの方々はだいたい「うん、そういうことだよね」と納得してくれます。これって地味に大事で、「まずは自分たちが伝えたいことがきちんと汲み取られている」という事実が、クライアントに安心感を与えるんです。ここでの“安心”こそが、次の提案をスムーズに受け入れてもらうための下地になっていくんですね。

こういった背景もあり、A案は本命案と呼ばれることがあります。しかし、僕は「本当に本命なの?」と思っていました。本命というより本線に近い。だからこそ僕は、A案を本線案と呼んでいます。この違い、理解していただけますよね……?

ただし、一方でA案は「無難な路線」にとどまってしまう危険性もあります。だからこそ、A案を見せつつ、ここがスタートラインになり、B案C案が生まれるのです。


B案「それもあるかも」の意外性

B案は「自分のなかのクリエイティブスイッチを解放するコピー」と考えたほうがいいと思います。A案がストレートな「オリエン返し」だとしたら、B案は「ズラし」が入る。あえて、ズラすわけですね。そう、あえて。

  • キャッチーなフレーズを加えたり、表現をシャープにしたり、あるいは逆に柔らかくしたり。

  • 全然違うターゲット像を想定したようなコピーを作ってみることも。

この“ズレ”がもたらすのは、「あ、そういう考え方もあるんだ」という意外性です。クライアントとしては、A案だけでは見えなかった視点を、B案で感じ取ることになります。B案の存在によって、ここからどんな議論が生まれるのか、どんな方向に飛び火するのか……。そういった化学反応を生みだすのも、B案の醍醐味と言えるでしょう。

A案が本線案ならば、B案はまさに対抗案です。

そして、クライアントが「A案より攻めたいけど、B案ほどはいけなそうな気もする」と思い始めたとき、C案への扉が開かれるのです。


C案「これしかないね」の納得性

いよいよC案のお話です。私のなかでC案の役割は明確で「本心案」です。

A案は本線案、B案は対抗案、C案は本心案。

A案やB案を徹底的に考え抜いたあとで、そして、プレゼンテーションとして幅を広げたあとで「やっぱり僕はこのメッセージを採用すべきだと思う」という強い意志を共有するのです。

  • 機能的な価値や、利便性に留まらない、存在意義を提示する。

  • あたりまえすぎて、そして、大きすぎて、誰も言及してこなかった価値の再発見と言語化。

もう、ここです。ここしかないと思います。このC案には、コピーライターとしての、クリエイターとしての、意地や極限や矜持が詰まっているものになります。

しかし、やっぱり、いきなりC案をつくることは難しい。A案とB案を経ないと、C案にはたどり着けない。そして、聞く側としても、同じだと思うのです。いきなりC案を出されても納得感が低い。A案、B案、そしてC案にたどり着くと「これしかないね」に着地できるのです。

こう考えると、3方向でプレゼンするのは、実に理にかなっていると思います。作り手にとっても、聞き手にとっても。ここまで3方向の意味や役割をもって「3案プレ重要!」と言っているかは不明ですが、皆さんの指針になるととってもうれしいです。


C案を出せるコピーライターだけが生き残る。

少しだけ振り返りましょう。

  • A案の説得力
    まずA案がしっかりしているからこそ、クライアントは「このコピーライターはきちんと自分たちのニーズを分かっている」と安心します。

  • B案の意外性
    B案で「こんな世界観もあり得るのか」と好奇心をくすぐることで、「もっと違う何か」を求める意識が高まります。

  • C案の必然性
    最後に提示するC案には、一見リスクがあったり、使う言葉が強かったりするかもしれません。けれど、それらを踏まえて「やはりこれが本質で、やるべきなんです」と言い切る根拠があれば、案外すんなり受け入れられるものです。

情報が溢れる現代、生活者の心に届くコピーは「企業やブランドが本当に伝えたい言葉」しかありません。そして、それは同時に「コピーライターが本当に伝えたい言葉」でなければなりません。そうじゃないと噓でしょ、とすら思います。

企業とコピーライターの「本当に伝えたい」を合体させる。ベクトル合成させる。そこに、C案の意味が集約されるのだと思います。そんなコピーを書きたいと日々思っています。いっしょに頑張りましょう!


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