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商品やサービスから逃げないコピーの書き方を伝授します。
「いいコピーだけど、この商品じゃなくていいよね?」
このように言われたことのある方は多いと思います。コピーを書いていると、どうしても言葉の魅力やインパクトに意識が向いてしまいます。その結果、いい言葉なんだけど、商品から離れた言葉や表現が量産されます。
僕自身、「おしゃれで耳障りがよい言葉を超えた『なぜこの商品でなければならないのか』にまでたどり着くための発想法・着想法を知りたい」とずっと思っていました。
実際、広告やキャッチコピーの世界では、表面的な華やかさが話題を集めることもあります。SNSで「面白い!」と拡散される仕掛けとしては有効な場合もあるでしょう。しかし、商品やサービスを使う側に「このコピー、結局どの商品にでも使えるよね?」と思われてしまうと、購買にまで至りません。これでは、コピーはコピーの役割を果たしません(というか、こういう言葉であふれてますよね!?)
では、どうすれば「商品やサービスから逃げないコピー」を書けるのでしょうか。そのときに軸となるのが商品やサービスに直結する「動詞」の存在。今回のnoteでは、動詞に注目しながら、商品やサービスから逃げないコピーの書き方について整理します。
人は「動詞」で商品やサービスとつながる
商品やサービスには、ユーザーが実際に行う行動が必ずあります。飲料であれば「飲む」、書籍であれば「読む」、スマホゲームであれば「フリックする」など、ひとつの動詞が商品との接点を象徴しています。
つまり「人は動詞で商品やサービスとつながる」わけです。言われてみれば当たり前なのですが、言われなければ気づかない。この動詞が、使用や利用を意味するわけですから。
この単純な動詞を正しく捉えないままコピーを書き始めてしまうと、「一体どんなシーンで使うのか」「そのときユーザーがどんな行動をするのか」が見えない状態になってしまいます。
ここで挙げられる動詞を掴んで離さないこと。これが最も重要です。この動詞から離れてしまうと、商品性や、商品やサービスが持っている利用シーンから離れてしまうわけです。
一方で、動詞がはっきりしていると、「この飲み物は、朝の眠気を吹き飛ばすために“飲む”のか」「この書籍は、知的好奇心を満たすために“読む”のか」など、ユーザーの日常にどう入り込むかを具体的にイメージできるようになります。すると、コピーを書くときに狙いたいポイント――たとえば「朝のリフレッシュ感」「読み終えたあとの達成感」など――が自然と浮かび上がってくるのです。
つまり、人が商品やサービスとつながる最初の接点は「動詞」であり、それを見失わないことこそが「商品やサービスから逃げないコピー」を生むための鍵になります。
体の動きを示す「動詞」から、心の動きを示す「動詞」へつなげる
動詞を押さえたとしても、「飲む」「読む」「食べる」といった行動だけを書き連ねても「そりゃそうだよね」で終わってしまいます。なぜなら、それらはあくまで体の動きに過ぎず、読者の“感情”や“心の変化”に訴えかける領域まで踏み込んでいないからです。
たとえば、朝にコーヒーを“飲む”行為が、単に「苦味のある液体を口に入れる」だけかというと、実際にはそうではありません。「目覚めのスイッチを入れる」「仕事モードに気持ちを切り替える」「ホッと一息ついて心を整える」など、心の中ではいろいろな体験が起こっています。そこにこそ、コピーが入る余地が生まれます。
マーケティングでは「ベネフィット(機能的・情緒的・社会的)」といった形で区分されることがありますが、動詞を入り口にしながら、“飲む”や“読む”といった体験の先にある情緒的ベネフィット――たとえば「リラックスできる」「前向きな気持ちになれる」「誰かとつながる実感がある」――を描き出すことができます。
さらに、社会的ベネフィットへ昇華すれば「となりの人にやさしくなれる」「この国がもっと前向きになる」「誰だって、ひとりじゃない」へとつながります。このように表現することで初めて、ユーザーは「自分はこの商品を使うと、こんな気持ちになれるのだ」と具体的に想像することができるのです。
自分の書いたコピーが「動詞」に戻ってこれるか
大切なのは、コピーが「商品やサービスならではの着地点」にしっかり結びついているかどうかです。どんなにいいコピーや、心をゆさぶる言葉を生み出したとしても「で、結局この商品と何か関係あるの?」が見えなければ意味がありません。
そこで重要になるのが、上記で考えた情緒的ベネフィットや社会的ベネフィットを踏まえて生み出したコピーが、動詞に戻ってこれるか、を確認することです。この確認作業を行うことで、自分が生み出したコピーが商品やサービスから逃げていないかを、客観的に判断することができるのです。別の言葉で言い換えれば、着地感を確認する作業ですね。
動詞を軸にしつつ、体の動きから心の動きへ。そして最終的に特定の商品・サービスならではの体験価値へと昇華させる。そして、元の動詞に戻ってこれるかを確認する。このプロセスこそが、まさに「商品やサービスから逃げないコピー」を生みだし(確認する)流れです。
つまり、「商品らしさ」「ブランドらしさ」が感じられる“結び”まで意識した表現にすることが、コピーライターの重要な仕事です。
商品やサービスへの着地感こそが全て
魅力的なコピーを書こうとするとき、私たちはつい言葉の面白さやキャッチーさに目を奪われがちです。しかし、そこに商品の本質的な魅力が反映されていなければ、「いいコピーだけど、この商品じゃなくていいよね?」と言われてしまいます。大事なのは、商品やサービスを使うときの“動詞”をしっかり捉え、その先にある“心の動き”や“体験価値”を丁寧に描くこと。そして、動詞への着地を確認すること。
この視点を持つだけでも、あなたのコピーライティングは劇的に変わるはずです。商品から逃げずに、“今まさに目の前にあるモノ”を真正面から見つめてみてください。すると、ユーザーの行動や気持ち、その先の広がりが自然と見えてくるでしょう。それを言葉として表現するのが、コピーライターの真の腕の見せどころなのです。