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北海道の地域おこし協力隊が、静岡県南伊豆町で体験したこと

人が魅力であることをどう伝え、どう足を運んでもらうか?
そんなことを考えていたら、静岡県の南伊豆町にたどり着きました。

はじめまして、いそのさとみです。
北海道鷹栖町(たかすちょう)の地域おこし協力隊です。出身は大阪です。相手に喜んでもらうことが好き、色々な人に会いたい、という思いがあり、商工観光係の協力隊を募集していた鷹栖町へ。前職は北海道東川町の地域おこし協力隊(日本語教師)でした。


12月22日から3日間、南伊豆町で研修を受けました。


鷹栖町を前日の夕方に出発し、飛行機、終電始発を駆使しての移動は13時間。それでも南伊豆町に行きたい、実際に見て感じたい、何かヒントを掴みたいと思っていました。
鷹栖町で、何ができるか?どうやったらできるのか?あと2年弱となった地域おこし協力隊の活動期間に、焦りを感じていました。

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バスの運転手さん「どこへ行くの?」
見かけない顔のわたしに声をかけてくれました。

わたし「ローカル×ローカルというところです」

バスの運転手さん「え?どこ?」
と言って、そばに停まっていたタクシーの運転手さんに聞いてくれました。

タクシーの運転手さん「聞いたことない」

私「・・・」

バスの運転手さん「あぁ~この通りにあるやつじゃないか?」

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ローカル×ローカルはバス停のすぐ近くでした。


迎えてくださったのは、いじゅういんいってつさんです。

ウェブメディア「南伊豆新聞」、南伊豆の方と交流体験ができる「南伊豆くらし図鑑」や、宿「ローカル×ローカル」の運営、マンガ「ローカル×ローカル(cakes)(note)」の執筆など、さまざま取り組んでいらっしゃる方です。お忙しいなか、研修のお願いを受けてくださいました。


今回お世話になり拠点となる宿、ローカル×ローカル。植物と木とアートな感じで、おしゃれだけれど落ち着く空間です。​

1日目​

午前中は、いってつさんの取り組みのお話や思い、人となりをうかがいました。また、鷹栖町についてや、私についてもお話をしました。

とにかく情報盛りだくさんでしたが、中でも「ローカルとローカルをつなぐ」ために今の取り組みがある、というお話が印象的でした。そして、最初はやろうと思っていなかったけれど、気づいたらこの形になっていた、ということも。

不勉強な私にはすべてのお話が目からウロコでした。

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「弓ヶ浜海水浴場」12月も暖かかったです。


「ローカルとローカルをつなぐ」を体感しまくる3日間の始まりです!

午後は、南伊豆新聞で取材した所に連れて行っていただきました。
移動中の車内では、いってつさんが行く先々の方のことを少し話してくださっていました。車を降りるとその延長に、「今ちょうど、いってつくんの話してたんだよ。元気?」というやり取りがあって、関係のよさを感じます。

「ここのごはんは結構大盛なんです。少な目にしてもらったほうがいいかもしれません」といってつさん。お店によく通っているのだなぁ、と感じられる気づかいがすごいです。

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食事処 斉」にて。鮮度抜群な地元のお魚。

初対面のわたしにも、挨拶以上にたくさんお話をしてくださったのは、いってつさんと一緒だったからだなぁと思いました。もちろん初めて来た人に対しても、みなさんお客さんとして親切にしてくださるのだと思います。
ただ、それ以上のやり取りをいきなりできるのは、一緒にいる人への信頼感があるからこそではないでしょうか。

夜は、いってつさんと、ローカル×ローカルに滞在されていた方と一緒に、「海老しか勝たん」へ行きました。
エビメニューに特化したお店なのですが、エビ以外のメニューもとってもおいしいお店でした。

写真を撮る前に料理を食べてしまいました…
お酒がすすむと話も弾みます。


ローカル滞在中の方は、SNSで有名になりたい、という野望を話してくださいました。そのために、素敵な写真を撮って、日本語と英語で発信をしていらっしゃるのでした。

物腰柔らかな方だったのですが、静かに野心を持っていらっしゃるのがとてもかっこよかったです。

地元の方とつながるのももちろんですが、その場にいた人同士がつながれるのも、ローカル×ローカルのよさだと感じました。

いってつさんから海老しか勝たんのまこと店長にお願いしていただき、2日目の朝ごはんを作っていただけることになったのでした。

2日目


まこと店長のおいしい海老チャーハンで1日がスタートしました。

帰りには、「自分のを淹れるついでだから」と、コーヒーを持たせてくださいました。いってつさんにも、と言って受け取ったコーヒーに、まこと店長の温かさと、いってつさんとのよい関係を感じました。

この日は、南伊豆くらし図鑑を2つ体験しました。

午前はジオガイドたまさんと行く、中木(なかぎ)ツアー。

行きの車中で、「ガイドのたまさんはすばらしい方なんです」と力説するいってつさん。到着して挨拶をすると、たまさん、いってつさんにお弁当を渡します。スタートから早速、相互ファンの関係が垣間見える瞬間でした。

ジオ解説を聞きながら景色を見ると、きのうボーっと見てた景色が何倍もステキに見えました。異なる岩石が観察できることも、教えてもらって初めてその面白さがわかりました。

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岩場を歩きながら、地形や地質のお話を聞きました。

伊豆半島や中木地区の地形的な成り立ちから、かつて風待港(かざまちこう)として栄えた様子や石切場のあと、地震で様子を変えてしまったことと堤防、石垣など、織り込まれた歴史と暮らしをすこしのぞかせてもらった気分になりました。

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写真中央左のくぼんだ影は、
いけすの語源になったかもしれない「生け洲」

たまさんは「地元にいるのが井の中の蛙で恥ずかしかったけれど、ガイドを始めてどんどん好きになった」とおっしゃっていました。
それを聞いて、地元にいることや戻ってくることが恥ずかしいという話は、鷹栖町でも聞き覚えがあるなと感じました。

一方で、鷹栖町が好きで地元にいらっしゃる方々の顔も思い出していました。

私が何気なく「ヤシの冬囲いが、みんな物言いたげに見えてしょうがない」というと、「毎年のことだから気にも留めてなかったけど、ホントだね!面白いね!」とたまさん。

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もの言いたげなヤシの木たち。

地元のことを熟知しているたまさんに、外から見た私の視点を「面白い」と言ってもらえて嬉しくなりました。


午後は、「自然派美容室杜とあお.」を営むみよこさんと、セイタカアワダチソウでシャンプーづくり。

植物の名前を聞いてもピンとこなかったのですが、検索した写真を見ると、空き地でよく見る草でした。
なんと、セイタカアワダチソウは、土に栄養を与えて、土の栄養が十分になったら枯れるのだそうです。ただの雑草だと思っていた植物の力に驚きでした。

刈り取った「セイタカアワダチソウ」
この日は草を束にして干すお手伝いをしました。

「植物でシャンプーを作って使うのはいいけど、とるだけじゃだめ。目に見えて減ってるからだめだ、育てなきゃ。そう思って樹医の勉強をしたんだよ」とみよこさん。本当にパワフルです。

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髪も心もすっきりさっぱり。

南伊豆に移住したのはいろいろな偶然が重なったからだそうですが、土地の自然とともに営みを楽しまれているみよこさんは、すごくすてきでした。

最後に、つくったシャンプーで洗髪してもらい、アールユヴェーダを取り入れたアロマやドリンクに癒され、サッパリとした気分になりました。


夕食に、くらし図鑑でジャムづくり体験をやっているちえこさん、つねさん宅へ伺いました。

つねさんは最近、町の感じ方が変わったと話していました。
毎日同じ時間に散歩とゴミ拾いをすると、夕日がきれい、だけど今日は特別キレイ、とか、微妙な違いがわかるようになったこと。
外の人が喜ぶのを見て自分たちの暮らしの良さを再発見したということも。くらし図鑑に来た人たちと、SNSでのやりとりも楽しんでいるそうです。

ポジティブな話とともに、ネガティブに感じることについてもお話を聞き、よりリアルに南伊豆町を感じることができました。

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鷹栖町で見ない魚(イサキ)も食卓にのぼります。
ちえこさんの料理はどれも絶品でした。


鷹栖町についても興味を持ってくださり、町の様子をお話しすると、いいね、とたくさん言ってもらいました。
でもそれは、鷹栖町ではお馴染みのことばかりです。雪はね(雪かき)や、豆腐作りや味噌づくり、保存食作りのこと。絶対に市場に出回らないちっちゃいきゅうりや、家庭菜園のちっちゃいジャガイモのこと。

うそをついてない、無理していない、鷹栖町の当たり前。褒めてもらって、それはやっぱりおもしろいことだと再認識しました。

そして、鷹栖町の地元の方に、普段のくらしの中で、ほかの町の人との交流を楽しんでもらえればいいな、と、そんな野望を密かに抱いたのでした。

3日目

3日目は、編集することや取材について、文章を書くことについて、いってつさんから研修を受け、これまでの2日間を踏まえ、初めてのnoteを書き始めました。自分の会話下手さや、文章力のなさを痛感しながら、それでも書きました。

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たくさん書き留めたふせん。選んで組み立てていきます。


私が南伊豆で感じたおもしろさとは、実は尖っていること、無理をしていないことでした。

いってつさんをはじめ、南伊豆で出会った方は、やさしい方ばかりでした。でも、ただ穏やかなだけじゃなくて、私はこのポイントにすごくこだわりがある、ということがお話の端々から感じられて、その尖り具合に痺れる3日間でした。

無理をせずに楽しんでこだわっているからこそ、傍から見るだけではわからないけれど、話せば話すほど尖っている。その尖っているギラギラ感が本当にかっこいいと感じました。

みなさんの楽しんでいる世界をほんの少し覗かせていただけて、実際に会ってお話ができて、南伊豆という町とつながりを持てて、本当によかったです。もちろん、海辺の景色も、暖かさも、温泉も、ごはんのおいしさも、言わずもがな、とても素晴らしかったです。

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中央、いってつさん。いちばん左、いその。DITのみなさんと一緒に。
帰る日が、ローカル×ローカル別館づくりの作業を行う日でした。参加できず無念。


人が魅力であることをどう伝え、どう足を運んでもらうか?


まずは自分が無理なく楽しむこと、町の人が楽しんでいること、こだわっていることを一緒に面白がること。その時間が何より大切で、どうやって、はその次に考えること。
そして、その面白さを外の人に伝えることも、とっても大切。そんな当たり前のようで焦って見落としていたことを、再認識するよい機会となりました。

現在、鷹栖町は観光に重きを置いているわけではありません。
それでも、少なからず、お客さんを呼びたい人がいます。鷹栖町に興味を持ってくれる人がいます。

私は、そんな人たちをつなげる場所として、鷹栖町観光協会を法人化し、その運営に取り組みたいと思っています。
その準備として、鷹栖町で、これからもたくさん楽しい時間を過ごそうと思います。そして、私視点で伝え続けていこうと思います。

このnoteを通して、鷹栖町に興味を持ってくださる方が、ひとりでもいらっしゃったらうれしいです。

鷹栖町地域おこし協力隊についてはこちら>>(Twitter)(Facebook

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