見出し画像

日本語の大疑問

定期考査が近づいています。
3月に実施されると、定期考査というより、学年末考査という名前の方がふさわしいものでしょうか。
今回は仮定法が含まれるため、理解し難い内容も多いように思います。
というのも、日本語的な概念を理解していないと外国語理解するのは困難なんですよね。
否定疑問文とかが理解できないと結構きついように思います。
というわけで、今回は日本語の大疑問という本を読みました。
Chapterに対して専門家の先生が答えて下さるタイプの本なので面白かった部分を抜粋していきたいと思います。



毎日あたりまえに使っている日本語。だが、ふと疑問に思うことはないだろうか。そもそも漢字はいつから日本にあるのか?「シミュレーション」を「シュミレーション」とつい発音してしまうのはなぜだろう?「確認させていただいてもよろしいですか」は乱れた日本語なのか?これまでの絵文字・顔文字とLINEのスタンプでは何が違う?ことばのスペシャリストが集う国立国語研究所が、国民の抱く素朴だが奥深い疑問に呻吟(しんぎん)しながら出した名回答を厳選。

だれもがやっている表現の微調整(敬語のつかいかた)p.52

want to の丁寧表現にwould like toがあります。
ということで、以前の勤務校でI'd like you to tell me about…とネイティブの先生に使ったところ「それは失礼だよ」と言われ驚きました。
理由を聞いたところwould like toは丁寧な仮定法表現だから、相手ができない(現実の反対)ことを前提に頼む表現になってしまうとのことでした。
日本語でも丁寧にしようとすると実現の可能性が下がっていきます。それが否定疑問文ですね。
①窓を閉めてもらえますか
②窓を閉めてもらえませんか
だと②の方が丁寧です。頼みにくいことを頼む表現が否定、疑問文ですので、より丁寧な表現になっていくということです。
ここら辺の機微がわかってくるとi wonderとi wonderedとi was wonderingの違いを区別出来るようになりそうですね。



いらっしゃいませこんにちは、は遠近両用(p.67)

人間関係を形成する上で、日本語には遠い言葉と近い物言葉というものがあるそうです。
簡単に言うと、ガチガチの敬語が遠い言葉、タメ口が近い言葉ですね。
たまにタメ口で生徒から話されると結構びっくりしちゃうんですよね。そんな関係じゃないぞ?みたいな。
そういう時は敬語で話してこちらから距離をとるようにしています。

閑話休題、店員さんがいらっしゃいませ、こんにちはというのはこちらの遠近両用を使っているからだそうです。
いらっしゃいませは遠い言葉、こんにちはは近い言葉でお客様と店員という距離を保ちながらも心理的な距離を縮めている言葉のようです。
非常に面白いなと思いました。言葉を使ってきちんと距離をとっていくというのは、人間関係の形成上大切だと思いますので、自分も気をつけたいと思います。


発音しにくい音は母語によって違う(p.118)

生徒が英語のスピーキングで躓くのって、Rの音なんですよね。
それは何と言っても日本語のらりるれろってRとLの間くらいの音だからです。
根本的にない音を発音するのは非常に難しいです。
私も中国語を勉強した時に苦手な音がたくさんありました。ネイティブの先生に違うと言われても、なぜ違うか全然わからなくて困りました……

一方で日本語において難しいのは小さい「つ」や「ん」らしいです。
あっさりがあさりになってしまったり、しょうしょうがしょしょになってしまうらしいです。
ちなみに外国人に日本語で話す時は極力短い文章で話すのがポイントです。
でも、ネイティブイングリッシュスピーカーって容赦なくハイスピードで話してくるの、あれは英語が国際言語っていう自負から来てるんですかね。


言葉のテクニックより大切な話そうとする姿勢

本年度英語のエッセイを生徒たちに書かせたのですが、どうもきれいすぎる文章を使っているなという印象を抱きました。
というのも、AIで構成していいよっていう話をしたら、ガチガチに添削をしてもらったようで、最終的には、Google翻訳が作った文章じゃないか?みたいな素っ気ない英語が並んでいました。
自分の指導の至らなさに反省した契機となったのですが、コミュニケーションには伝えようとする気持ちが重要という点を生徒たちに理解してもらう必要があると感じました。


柳田直美(2020)の研究「接触場面における母語話者のコミュニケーション方略」によると、日本人が行う説明に対して、外国人がどのような点に注目しているかを分析したところ
①積極的な参加態度
②落ち着いた態度
③相手に合わせた適切な説明
④言葉に関する具体的な説明
⑤非母語話者向けの説明
の中で上記三つを重要視しているという結果となりました。
つまり、理論的な説明というより、積極的に会話をし、リラックスに話をし、相手に合わせて自分の話し方を調整するという点が重要だそうです。
ここら辺がとても文系的な思考と言いますか、対人的な能力を試されるような部分だと思います。
どうしても点数主義に陥り、綺麗で丁寧な文章を書こうとするのですが、結構つまんないんですよね。伝わるものが少ないというか。
文法的なミスがあっても、自分で書いた文章の方が内容が伝わってくるように思います。

やっぱり言語を司る仕事なので、言葉に対しては常にセンシティブでありたいと思っています。
年齢が若い頃って何で伝わらないんだろうって相手のせいにしてたけど、他人って結局変わらないので自分がどう伝えるかっていうところにフォーカスするしかないですよね。
言葉って面白いなと思います。

いいなと思ったら応援しよう!