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非破壊検査技術者試験/過去問の解説、科目ごとの勉強法
この記事では、非破壊検査技術者試験の過去問の解説、科目ごとの勉強法について、詳しく掲載しています。
非破壊検査試験の過去問と重要事項
放射線透過試験(RT)レベル1
1.放射線の電荷
放射線は、その種類によって電荷を持つものと持たないものがあります。それぞれの電荷の特性を理解することが、放射線透過試験の基礎となります。
・電荷を持たない放射線(中性) … X線
・正の電荷を持つ放射線 … α線(アルファ線)、重陽子線
・負の電荷を持つ放射線 … β線(ベータ線)
X線は透過力が高く、非破壊検査に適しています。一方、α線やβ線は物質との相互作用が強く、透過試験にはほとんど使用されません。
2.放射線透過試験で使用する放射性同位体(核種)の半減期
放射線透過試験では、使用する放射性同位体(核種)の半減期を把握しておくことが重要です。半減期が短いほど強い放射線を発しますが、時間の経過とともに減衰が早いため、頻繁な交換が必要になります。
・60Co(コバルト60) … 半減期 5.3 年
・169Yb(イッテルビウム169) … 半減期 32 日
・192Ir(イリジウム192) … 半減期 74 日
放射性同位体の選択は、試験対象の材質や厚さ、必要な透過力を考慮して決定されます。
3.白色X線とは
白色X線は、X線透過試験で使用される放射線の一種です。
・白色X線は、異なるエネルギーを持つX線が混在している。
・白色X線の実効エネルギーは、同一の半価層を持つ単色X線のエネルギーと同じ値を示す。
・試験の目的に応じて、フィルターを使用し不要なX線を除去することが重要。
4.X線の性質と画像品質
X線を利用した透過試験では、線質や散乱線が透過写真の品質に大きく影響します。
・X線透過写真の像質(画像の鮮明さ)に影響を与える要素 … 線質と散乱線
・線質の定量的な指標 … 半価層と実効エネルギー
・半価層が大きいほど、X線のエネルギーが高くなり、透過能力が向上する。
適切なX線の選択と散乱線の低減が、鮮明な透過画像を得るために重要となります。
5.放射線の照射方向と試験体
放射線透過試験では、放射線の照射方向を適切に決めることで、欠陥を正確に検出することができます。
・放射線の照射方向は、欠陥による放射線の減弱差が最も大きくなる方向を選ぶ。
・溶接部の試験では、試験体を透過する厚さが最小になる肉厚方向に照射することが望ましい。
・適切な照射角度を選定することで、画像のコントラストが向上し、欠陥の検出精度が上がる。
6.透過写真の濃度と特性曲線
X線透過試験では、透過写真の濃度を測定し、試験結果を評価します。
・写真濃度 D … 透過写真の黒さの程度を表す。
・濃度の計算式 … D = log10(L0/L)(L0:入射光の強さ、L:透過光の強さ)
・X線フィルムの特性曲線 … 縦軸にフィルム濃度、横軸に露出量をとったグラフで表される。
特性曲線を正しく理解し、適切な濃度範囲を維持することが、高品質な透過写真の取得に不可欠です。
7.放射線透過試験におけるNDT指示書の役割
NDT指示書は、非破壊検査技術者が現場で作業を行う際に使用する重要な文書です。次の記述は誤りのため注意が必要です。
・NDT指示書は、NDT仕様書の一部として記載される。
・NDT指示書は、NDT手順書に組み込まれる。
・NDT指示書は、溶接継手の種類が多くても一度作成すれば再利用できる。
NDT指示書は、検査対象や条件に応じて適切に作成し、正確な試験を実施するための指針となる文書です。
8.被ばく線量測定用の測定器
放射線作業に従事する非破壊検査技術者は、個人の被ばく線量を管理するため、適切な測定器を使用します。
・フィルムバッジ … 長時間の積算線量測定が可能だが、温度や湿度の影響を受けやすい。
・蛍光ガラス線量計 … 近年、より精度の高い測定が可能なため使用が増加している。
・以下の記述は誤り。
・個人の被ばく線量測定には、直読可能なガラス線量計が主に使われる。
・ポケット線量計は、衝撃に強く、湿度や温度の影響を受けないため広く利用されている。
・熱ルミネッセンス線量計は、放射線を受けると安定した蛍光中心を形成し、紫外線を当てると橙色の蛍光を発する。
放射線作業では、安全管理の一環として適切な線量測定を行い、必要な対策を講じることが求められます。
ワンポイント解説
放射線透過試験は、非破壊検査技術者試験の中でも特に重要な分野の一つです。試験では、放射線の種類や特性、半減期、透過写真の評価方法などの基礎知識が問われます。また、NDT指示書や被ばく管理に関する問題も頻出するため、現場での実務に即した知識が必要です。特に、放射線の透過特性や試験条件の設定方法を正しく理解することで、より精度の高い検査が可能になります。試験対策として、基本概念をしっかり押さえ、過去問を繰り返し解くことが合格への近道となるでしょう。
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