雑記 Vol.4
かんぼこのはなし
練り物が好きです
毎冬狂ったようにおでんを作ります
ここで暮らすようになるとすり身まで買いだした
でも
かまぼこを買うのは年末年始くらい
しかししかし
もし私が長崎に住んでいたら。
かまぼこしか買わないかもしれない
遡って大学時代、長崎出身の彼氏のところに
親戚からかまぼこが届いた
叔母さんがかまぼこ工場にパートに行っているからと
私は正直かまぼこを軽んじていた
かまぼこってそんなに食べないでしょうと
普段うどんにうすいかまぼこが2枚くらいでしょうと
送るほどのものなのだろうかと
届いたかまぼこはただラップに包んであるのがニ本
工場直送にも程がある感じだったけど
スーパーで見かけるものより大きく
ずっしりしていた
一本はよく見るピンクのかまぼこ
もう一本は見慣れない、昆布の巻いてあるかまぼこ
ご相伴にあずかった私はかまぼこのあまりの美味しさに
え、もう一回すぐ送ってもらえん?と図々しいセリフを堂々と吐いた
とにかく、かまぼこが信じられない美味しさなのだ
もちろん美味しいかまぼこを食べたことはある
練り物好きな家族だったから
でももうそういう次元ではない
ピンクのものはもちろん、
昆布巻きのかまぼこの美味しさは筆舌に尽くしがたい
むちっとしたかまぼことそれを支える昆布のハーモニー
こんなに美味しい食べものを知らなかったなんて
20歳の私には、あの昆布巻きのかまぼこが人生で1番美味しい食べものだと思えたしそうだったと思う
私があまりの熱量でかまぼこを褒めたので
彼氏の叔母さんも大変に喜んでくれたようで
それからもよく送ってくれた
もちろん図々しくも昆布巻きのかまぼこは必ず入れて欲しいとリクエストして。
社会人になり、彼氏とお別れをして しばらくたち
ふとあの昆布巻きのかまぼこが食べたくなり
インターネットで検索した
昆布巻きのかまぼこ、はすごく珍しいものであり、検索したらすぐどこのお店か見つかるだろうと思っていた
だが
私が珍しいと思っていた昆布巻きかまぼこは
長崎ではポピュラーなものだったのだ
それどころか長崎以外にもあった
どこのお店のものか分からない…
送られてきたかまぼこはラップに巻かれているだけだった
なんのヒントもなく、未だ私はあの昆布巻きのかまぼこを特定できていない
彼氏にお店を聞かなかったことが悔やまれる
きっと、長崎のどのお店のかまぼこも美味しいと思う
でも私はラップで巻いて送られてきた、あのお店の昆布巻きのかまぼこを食べたい
あのかまぼこを探しに行きたい