続・サイズ交換はできますか?【ショートショート】
「無理ってわかってるけどなー」
一度履いてしまったスニーカー2足を前に、菜莉はまだ頭を悩ませていた。
ところへ、ガチャっとドアノブをまわす音がしたので振り返ると
「お呼びでしょうか?」と
執事が立っていた。黒のタキシードの袖から白い毛がモコモコとはみ出している。顔を見ると羊だった。
え? どちらさま? 人間じゃないの? どっから来たん? いえいえ呼んでませんケド「何か?」ってこっちが聞きたいぐらいやわ。
「サイズ交換ですね?」
え? なんでわかったん? いいのー?! 羊やのに喋れるんや! すご! 23.5㎝じゃなくて23㎝にして欲しいんですけどー!
「XS、S、M、L、LL、とございます」
なんやー、服かいな。靴がよかったんですけど。まぁ、換えてくれるんやったら頼もうか。え? そうじゃなくて自分自身のサイズを変えてもらえるの?! すご! ほな、今やLサイズに変貌を遂げようとしているマイボディをMサイズにしてもらおうかな!
けど、ちょっと待って。ジャストサイズやったらまたスグ肥えて、限りなくLに近いMサイズで苦しみそうかも。ほな、大は小を兼ねるの応用で、Sサイズにしておこうか。なんかSって、か弱くて、かわいく見られるかもやしな。
「Sサイズですね。それがお客様の本当の願いですね?」
ギク。
違う。Sはちょっと違う。本当はMサイズが自分の中でのピッタリ理想。ズボラとちょっと見栄も張ってのSサイズやな。ですから、ちゃいますけど…それでお願いします。
と、ぎゅっと目をつむってファイナルアンサーを提出した。さぁ、世紀の瞬間だ!
ドキドキしながら目を開けると、羊のタキシードが消えていた。
え? どこ? どこに行ったん?!
うしろでバタンと扉の閉まる音がした。
振り返ると、モコモコのウール 一塊が落ちていた。
菜莉のサイズは、変わっていない。