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DeepSeekがもたらすNVDAや米国株式市場への影響

DeepSeekの件でNasdaq先物が-4%、NVDAが-12%と大きく下落している。
そこで今回は今出ている情報を整理して、DeepSeekの登場によって株式市場にどのような影響があるのかを考えていく。


そもそもDeepSeekとは?

DeepSeek R1とは中国企業High Flyerのサイドプロジェクトとして開発され、1月20日にリリースされたオープンソースの大規模言語モデル。もともとDeepSeek V3が去年の11月にリリースされ、それを改良して推論に特化した大規模言語モデルとしてDeepSeek R1が登場した。

なぜこれほどまで騒がれているかというと、OpenAIなどの最新モデルと比べてはるかに安価な費用でトレーニングされ、同レベルのパフォーマンスを実現したからだ。
DeepSeekは、少ないチップと、よりH800と呼ばれる中国の輸出制限による制限機能チップを使用し、$5.6 millionでトレーニングされたモデル。競合のOpenAIやAnthropicの最新モデルは、$100 millionから$1 billionのトニーニング費用が掛かっていると言われている。

AIモデルのパフォーマンスランキング

では、DeepSeekはどうやってこれを実現したか?

複数の要素があるがその一つとしてMoEシステム(Mixture of Experts)を採用していることが挙げられる。複数の専門家(エキスパート)モデルを組み合わせて、各入力に対して最も適したモデルを選択し、予測や分類を行う手法だ。従来モデルでは、巨大なパラメータが常時アクティブだったが、DeepSeekではエキスパートを必要なときだけ呼び出すことで、それを節約することができる。その結果、トレーニング費用も節約でき、必要なGPUも大幅に少なくすることができた。そしてDeepSeekはオープンソースになっているので、その技術の全容にだれでもアクセスすることができる。


市場では、数十倍安価にハイパフォーマンスな大規模言語モデルが作ることが可能なのであれば、今後AIモデルを作る企業のAI投資額が下がっていくのではないか?と懸念されている。
Nvidiaは高価な高性能GPUをOpenAIやGAFAMのような巨大企業に売ることで売上を作っていたが、それよりも安く低性能なGPUを使ってより小さなチームでもAIモデルを作ることができるようになるかもしれない。
今までとにかくGPUを買いまくってトレーニングしてAIモデルを作るマネーゲームの側面があったが、その傾向も変わる可能性がある。


また、DeepSeek以外にも、より低費用で効率的なトレーニングによってハイパフォーマンスを実現しているモデルも増えている。例えば、中国企業である01.aiもトレーニングに2000ものGPUと$3 millionしかかからなかったと主張。今後もこの動きは加速していく可能性が高そうだ。

実際にアメリカのAppstoreの無料ランキングでも、ChatGPTを抑えて1位になっており、人気と話題ぶりがうかがえる。

まだ試されていない方は、下のリンクから無料で実際に利用できる。

https://chat.deepseek.com/sign_in


NVDAをはじめとする半導体株への影響は?


DeepSeekのCEO自体も、「米国の半導体輸出規制が依然としてボトルネックになっている」発言している。つまりGPUがもっとほしいということ
だ。

Scale AIのCEOは下記のように発言しており、そもそもDeepSeek高性能なGPUを所持しておりそれを隠しているという噂もある。

ディープシークは約5万台のNVIDIA H100を持っているが、米国の輸出規制があるため話すことができない。


企業のAI投資はまだ止まっていないが

先週、MetaはAIの設備投資額が2025年は$65 billionになると発表した。2024年は$40 billion前後のAI設備投資額と推定されているので、大きな増加だ。

OpenAIとオラクル、ソフトバンクで今後4年間で$500 billionを投資すると発表しているスターゲートプロジェクトもある。

このようにOpenAIやMeta,マイクロソフトなどトップティア企業のAI投資は現時点では止まっているわけではないが、今までのようにGPUを中心とした投資を大きくしていくだけのゲームが続くかというと疑問が残る。DeepSeekが低価格を実現し、価格破壊をもたらしたことで、OpenAIなども価格を下げないとユーザー流出の危険性もある。そうすると投資対効果が悪くなっていくリスクもある。

一方で、AIの世界はWinner takes allの可能性が高く、今後も競争は続いていく。競争が続く限り、AI投資の手を緩めることができないのも確かだ。ある意味チキンレースは続いていくと思われる。

まだまだ未知数な部分が多い。ただ、トップティア企業の投資はまだまだ続いていく一方で、より多くの人がAI開発に参画する可能性が増え、全体的にはAI市場、GPU市場にはプラスの影響があると個人的には考える。

Nvidiaも声明を発表

ディープシークは優れたAIの進歩であり、テスト・タイム・スケーリングの完璧な例です。DeepSeekの研究は、広く利用可能なモデルと輸出規制に完全に準拠した計算能力を活用し、この手法を用いて新しいモデルを作成する方法を示している。


著名人の反応

世界的有名投資家Marc Andreessen

Deepseek R1は、私がこれまで見た中で最も素晴らしく印象的なブレークスルーのひとつであり、オープンソースとして世界への深い贈り物である。

ジャーナリストのHolger Zschaepitz氏

米国株式市場にとって最大の脅威となる可能性がある
同社は画期的なAIモデルを極めて低価格で、しかも最先端チップにアクセスすることなく構築したようで、この業界に注ぎ込まれている数千億ドル相当の設備投資の有用性に疑問を投げかけているからだ。

Y Combinator CEOのGarry Tan氏

トレーニングモデルがより安価で、より速く、より簡単になれば、AIの推論の需要はさらに急速に成長し、加速し、コンピューティングの供給が確実に利用されるようになる

Elon Musk氏

Deepseekが「明らかに」主張以上のNVIDIA製GPUを所有している

OpenAIのSam Altman氏

deepseekのr1は、特に価格に見合った素晴らしいモデルだ。
我々は明らかにもっといいモデルを提供するし、新しいライバルができるのはとても刺激的だ! 我々はいくつかのリリースを引き上げるつもりだ。

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