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首都圏の余剰車の行方

コロナ禍による減便と余剰

2020年。新型コロナウイルス感染症の蔓延による外出制限等により、テレワークなどの「新しい働き方」が普及したことで、通勤客の姿は電車から消えました。そして、コロナ禍が明けてから現在まで、需要はコロナ禍前までには回復していません。

この通勤客の需要の減少を見たJR東日本は、首都圏の主要線区で朝・夕ラッシュ時間帯の減便を行います。運行する本数が一番多いのはラッシュ時間帯なので、鉄道会社はその時間帯に沿った車両数を用意しています。従って、朝夕に減便を行うと必要数が減るので車両が余ることに繋がります。結果、都心部の経年が若い車両に大量の余剰車が発生しました。来年はコロナ禍突入から5年目を迎え、通勤客も減便ダイヤに慣れてきた中、余剰車に大鉈が振るわれるという可能性を考えていきたいと思います。

首都圏の余剰車一覧(今回取り扱う範囲)
┆E235系0番台┆
 11連6本?

┆E233系┆
・0番台:10連3本?(中央快速線)
・1000番台:10連2〜3本?(京浜東北・根岸線)
・2000番台:10連2本?(常磐緩行線)
・5000番台:10連3本?(京葉線)
・8500番台:6連1本(南武線)

E235系0番台の余剰車と今後

余剰車

E235系0番台

山手線用の車両で、11連50本が在籍している、E235系0番台。導入完了時の2020年1月のダイヤでは、48運用・予備2本となっており、余剰車は発生しない計算でした。

しかし「コロナ減便」が盛り込まれた4度のダイヤ改正で38運用にまで減少してしまい、予備が2本から12本にまで急増する異常事態となりました。実際には長編成ワンマン化改造が2023年から行われている関係で、数本の予備が必要となりますが、改造の工期を加味しつつ、それを差し置いても余剰車が発生してしまうでしょう。

更に、トウ01〜03・06〜08編成(初期の6本)が長編成ワンマン化改造を施工せず検査を通過しています。他編成の10号車がE231系からの流用車であるサハE235-4600なのにも関わらず、トウ04・05編成のみ新造のサハE235-500を組み込んでいる点からも、意図的に比較的経年が深い6本の改造を避けたと考えられ、山手線から不要と見做された場合に、流用車であるサハE235-4600を脱車した上で、10両編成を組む他線区への転用を見越している可能性がありそうです。

E235系0番台に搭載されているINTEROS

E235系は列車情報管理装置にTIMSの発展版「INTEROS」を搭載していますが、今のところINTEROSの面倒を見ているのは山手線と横須賀・総武快速線の2路線のみです。ただ、INTEROSの取り扱いを他所に教える事を面倒臭がってE235系を余らせるほうがよっぽど悪手ですので、考慮せず転用させる形にした方が良いと感じます。


転用案 ①:中央・総武緩行線

E231系0番台 ミツB11編成
(画像はWikipediaコモンズより)

E235系0番台の中で、余剰車になると推定されるのは6本です。仮に先述したように10連化する場合、10連6本の布陣になり、中央・総武緩行線のE231系0番台と同じ数となります。

E231系0番台(10連6本)を武蔵野線へ転用させれば、209系500番台(8連11本)の一部を置き換えられます。常磐快速線用の2本の余剰車も活用すれば、8本分の置き換え自体はできそうです。


転用案 ②:京浜東北・根岸線

先述した通り、E235系0番台では長編成ワンマン化改造が行われていますが、同じ内容の改造が京浜東北・根岸線のE233系1000番台でも行われています。仮にE233系を更に転出させたい場合には、京浜東北・根岸線を経由した玉突き転配が使えそうです。

E233系の余剰車と今後

0番台

E233系0番台 トタT71編成

10連43本のトタT編成・6+4連17本のトタH編成・6連10本の青600編成・4連3本の青400編成・4連5本のトタP編成が在籍し、中央快速線・青梅線・五日市線で活躍している0番台。T・H編成へのグリーン車の増結が間近に迫る中、対応改造・トイレ追設工事をほとんどの編成が済ませています。

一方、トタT編成のうち、トタT71編成は2020年6月製ですが、グリーン車対応改造に対応しておらず、製造時から転用を見越した設計であることが伺えます。

E233系0番台 トタH49編成

また、トタH49編成はグリーン車対応改造の対象外となりました。T・H編成の59本中58本が対象ですので、H49編成は転用される1本に選ばれた可能性が高いです。

E233系0番台 トタT40編成

また、本来は57本が対象でしたが、労組資料によると改造対象が1本追加されたようで、トタT40編成が入場中です。もしかしたらT40編成が改造を受け、代わりに分割編成を1本捻出するかもしれません。


1000番台

E233系1000番台

10連82本が在籍し、京浜東北・根岸線で活躍している1000番台。コロナ禍前は79あった運用は、現在は75まで減少し、予備編成は7本まで増加しています。E235系0番台と同じ長編成ワンマン化改造が行われており、予備編成を同じく4〜5本と設定すると、2〜3本ほどが余剰になる見込みですが、場合によっては予備が足りるギリギリまで捻出する可能性もあります。


8500番台

E233系8500番台 ナハN36編成
(画像はWikipediaコモンズより)

6連36本が在籍し、南武線で活躍している8000・8500番台。2022年3月の改正で1運用が削減、予備編成は3本に増加しています。

8500番台のナハN36編成は、元0番台の青670編成で、青梅線の減便を受けて2018年3月に転入、209系2200番台の最後の1本(ナハ53編成)を玉突きで幕張へ捻出させ「B.B.BASE」にさせた…という過去があります。

しかし、現在は1本分が余剰となっており、かつN36編成は唯一ワンマン化改造を受けていません。

労組資料より

2024年8月2日、労組資料にて「南武線では2024年度下期から長編成ワンマン運転を始める」と記載されました。今後、ワンマン化改造が施行されないまま、余剰となっているE233系の全編成を6両編成が走る線区へ転用する場合は、N36編成が動員される可能性がありそうです。


2000番台

E233系2000番台 マト11編成

10連19本が在籍し、常磐緩行線(+東京メトロ千代田線・小田急線)で活躍している2000番台。現在は16運用・予備3本ですが、昨年に労組資料にて2本分の転用を匂わせる記述がありました。

労組資料の記述(リンクは保護のため未掲載)

常磐緩行線(綾瀬〜取手)では、首都圏線区の中で先陣を切る形で2024年度下期から長編成ワンマン運転が行われる予定で、E233系2000番台にもワンマン化改造が行われていますが、労組資料にて改造対象が17本と明かされました。これが事実であれば、改造を受けない=常磐緩行線から転出する編成が2本存在するということになります。

仮に転用となれば、E233系の中で唯一2000番台だけが持つストレート車体が仇となり、10両の貫通編成を欲していて限定運用を作れそうな路線が適していそうです。209系1000番台は中央快速線へ転出しましたが、グリーン車が連結されるとなると同じ手を取るのは難しいでしょう。ならば…


5000番台

E233系5000番台 ケヨ553+F53編成

10連20本の固定編成・6+4連4本の分割編成が在籍し、京葉線(+房総地区)で活躍している5000番台。現在は固定編成が18運用・分割編成が2運用の20運用で、代走などを加味するとE233系のみでも余裕のある配置数になっています。

209系500番台 ケヨ34編成

2021年3月改正までは固定編成が20運用・分割編成が3運用ありました。固定編成側は209系500番台のケヨ34編成も残留していて予備は3本の状態です。

E233系5000番台 ケヨ553編成
「通勤快速 勝浦行」時代

ところで、2024年3月改正において、分割編成が唯一分割機能を活かす運用である「なるかつ」こと「通勤快速 成東・勝浦行」が「各駅停車 成東・上総一ノ宮行」に格下げ&区間短縮されました。固定編成でも十分な上総一ノ宮までの乗り入れになり、分割編成の存在意義が薄まりました。

労組資料の記述(リンクは保護のため未掲載)

また、2022年に公開された労組資料では、今後長編成ワンマン運転の実施に向けて検討・準備を進める線区の1つと明らかになりました。それに指定された線区では基本的に分割編成(非貫通編成)を極力嫌う傾向があります。

16本と大所帯が対応改造を受け、グリーン車連結後も残留が確約されている中央快速線のそれとは異なり、4本のみの京葉線の分割編成は、成東への直通を廃止に追い込むだけで存在意義が消え、予備を固定編成分のみ(20運用・予備2本)に削減できます。

そして、固定編成のE233系をもう2本追加できれば、固定編成22本の布陣となり、分割編成4本+ケヨ34編成を捻出できるようになります。そこで白羽の矢が立つのが2000番台の2本なのではないか…と私は予想します。京葉線の運用には朝のみの運用も2つあるので、中央快速線の209系1000番台のような扱いもできると考えられるからです。


ここからはE233系の転用案を考えていきますが、ここでE233系の余剰車を改めて見てみましょう。

E233系の余剰車
・0番台:10連3本?
・1000番台:10連2〜3本?
・2000番台:10連2本?
・5000番台:10連3本?(分割編成次第で変化?)
・8500番台:6連1本?

8500番台の余剰を活かすには、6両編成での転用が望ましいでしょう。

これらの編成数を足すと12本になりますが、老朽車の置き換えには若干数が足りません。
しかし、分割編成の数次第では15本程度にまで増加する可能性があり、6連14本が在籍する、211系の長野車 or 209系の幕張車の6連を置き換えるのに適した数になりそうです。

E233系の拡幅車体車で一番まとまった編成数を出す転用パターンは以下の通りです。

・2000番台(常磐緩行→京葉):10連2本
  ↓
・5000番台(分割編成):6+4連4本
  ↓
 E233系の拡幅車:6連16本+余剰10両
・0番台:6連4本+4両(6連2本、10→6連1本+2両、4連2本→6連1本+2両)
・1000番台:6連3本+6両(10→6連3本+6両)
・8500番台:6連1本
・5000番台:6連8本(6連4本、4連4本+1000番台余剰モハ3ユニット6両、T71モハ1ユニット2両=6連4本)


転用案 ①:長野地区

211系(長野車、6両編成)

6連14本・3連36本の211系(経年35〜39年)が活躍している長野地区。2020年の計画では、京浜東北・根岸線と横浜線にE235系を導入した上で、E233系1000・6000番台を転用することが予定されていましたが、その後の計画変更により、E235系の両線区への導入は取り止めとなり、E233系はワンマン化改造の上で続投する運びとなりました。

また、3両編成の方は2024年から延命工事が開始されており、向こう数年の続投が見込まれる一方で、6両編成のナノN611編成は延命工事が見送られた点からも、6両編成の数年以内の撤退が見込まれそうです。


転用案 ②:房総地区

209系2100番台(画像は4両編成)

209系2000・2100番台(経年27〜30年)が活躍している房総地区。こちらもE233系1000・6000番台を転用する計画が取り止めとなり、続投となっています。

しかし、209系も気づけば経年30年。少数であろうと置き換えられるなら置き換えた方が良いに越したことはありません。6両編成のみであれば置き換えは可能そうです。


参考資料
・飲み屋の住人あっと運用調査班 様
https://nomiyajunin.web.fc2.com/index.html

・【複雑な転属の幕開け?】2022年3月の運用数削減・転用考察〜209系以外も注視 - 鉄道ファンの待合室 様
https://train-fan.com/jre-dia2022-sharyo/

・運用数ノート - 4号車の5号車寄り 様
https://4gousya.net/notes?bpd_tag=%E2%97%86%E9%81%8B%E7%94%A8%E6%95%B0%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88


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