岳南電車の後継車両は?
岳南電車岳南鉄道線
静岡県の岳南江尾と、東海道線との乗換駅・吉原を結ぶ路線です。そんな岳南電車に、近年車両更新に向けた動きが出てきています。
「20m車」導入に向けて受け入れ体制
2024年11月18日に公開された「岳南電車財政計画(第4クール)及び第四次行動計画の見直しについて」内の「令和7年度(事業)の見直し内容」の中に「次年度以降の車両更新に向けて、車長が20mの車両を入線可能とするため、駅ホームの切削工事のための測量費を計上する」の記述が確認されたため、20m級の後継車両の導入が確実になりました。
また、後継車両の納車時期については、1本目が2027年2月・2本目が2028年2月とし、いずれも当初の予定より10ヶ月後倒しとなったことも明らかになりました。
現行車両の顔触れ
現行車両は全て18m級の車両で、今後20m車の入線に対応する工事を行うのは、大手私鉄からの18m車の放出が近年少ない傾向にあることが原因の一つと見られます。
今回の置き換え対象は、7000形1両(7003号車)・8000形2連1本(8001F)です。それぞれ代替車両を納車するとしていることから、新型車両は(少なくとも)2連2本が導入されることが予測できます。
一方で、7000形1両(7001号車)・9000形2連1本(9001F)は、新車導入と並行して車両検査を行うことがわかりました。
「車両更新」記述の推移
2022年
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それぞれの欄の記述を見るに、この段階ではこのような方針だったものと読み取れます。1両編成の中古車両の放出は現在ではほとんど発生しないことから、新造車両を計画していた可能性もあります。
2023年
「1両編成の車両を2両編成の車両に更新して輸送力の強化を図る」との記述が確認されたことから、これらが判明しました。
2024年
後継車両の納入延期により、7001号車が置き換えの対象から外れた上で、他の置き換えが1年度分繰り上げになっています。また、7001号車については(7003号車とは異なり)置き換えを見越した検査の縮小&車両保存費の減額を行わないことから、当面は置き換えが見送られた可能性があります。
従って、後継車両の(一次?)導入は2連2本と予想します。
後継車両の候補
岳南電車では、設備投資費は原則、国・県の補助金を活用することとなっています。
別の資料では「国・県などの安全対策補助を活用」との記述がありました。
これは「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(鉄道軌道安全輸送設備等整備事業)」を指すものと見られ、国が1/3以内を補助します。
新造車両
こちらは、独自設計の新造車両を新造し、中古車両と比べて柔軟な運用をこなせるケースです。近年では静岡鉄道・一畑電鉄・伊予鉄道・琴電と、新造車を選ぶ中小私鉄も増えています。
2025年度中に2連2本を製造し、2026年度後半〜2027年度中から導入することが決まっている、ことでん(高松琴平電気鉄道)の新造車両は、既に国・県・沿線市町の支援を仰ぎ、今年度に設計費を組んだ上で車両の設計を行っています。
ただ、費用面などを考慮すると、中古車両となる可能性も否めません。また、2022年の資料で単行車両の導入を示唆しながら、2023年の資料では2両編成としたり、2024年の資料ではわざわざ20m車に対応させたりと、中古車両(の仕様)に合わせたとも取れる計画の変更で、新造車両導入の可能性は低いかもしれません。
中古車両
① 213系5000番台(2連14本、JR東海)
213系は、隣県・愛知県〜長野県を結ぶ、飯田線で活躍している車両です。213系の特徴は「2ドア・転換クロスシート・トイレ付」という点です。
しかし、飯田線の中部天竜〜天竜峡間では、2026年3月からワンマン運転が実施される予定で、このタイミングに合わせて313系などへ置き換えられることが予測されています。
また、近年では、三重県の三岐鉄道が、JR線から直接輸送できる点を活かして、211系を譲り受けた例があります。
岳南電車も吉原駅構内にJR東海道線との連絡線が存在しており、213系は211系の兄弟車である点から、譲渡が発生しても不思議ではありません。
ただ、岳南電車の1本目の納車は2027年2月・2本目の納車は2028年2月ですので、改造などを加味しても半年〜1年半ほど在庫を確保しておく必要があります。一斉に放出されそうな213系よりは、各年度毎にちまちま放出される大企業の20m車の方が条件に適していそうです。また、クロスシートやトイレなど、山登りを見据えた装備は、仮に岳南電車に来るとなれば過剰な装備になりそうです。
静岡地区の211系については、2024年度末の完全撤退が報道済で、留置するには長期間となることから、候補から除外します。
② 205系1000番台(2連2本、JR東日本)
神奈川県の川崎近郊を走る、南武支線で活躍している205系1000番台。2連3本が在籍していますが、うち2連2本(ナハW1・W2編成)は、E127系0番台によって置き換えられました。
しかし、E127系に問題があったのか、ナハW2編成はこの夏の間、運用に復帰したのです。仮に来年以降もこの措置が続けば、放出が可能そうなのはナハW1編成のみということになりそうです。
仮に、2027年頃に新型車両(E131系?)が導入されれば、一斉置き換えのタイミングを狙う…ということもあるかもしれませんが、それならE127系を購入した方が良いでしょう。
「2両・ロングシート」という点は合致しますが、本数・時期・状況証拠が揃って合わず、可能性は低そうです。
③ 東武10000系 10030型・10050型
関東の大手私鉄の一つ、東武鉄道の10030型・10050型。東武鉄道で一大勢力を誇る当形式ですが、まもなく新型車両によって置き換えられる車両が出てきます。
6連9本(10030型5本・10050型4本)が所属している野田線には、80000系(5連25本)が2025年春から順次導入され、8000系(6連16本)と共に置き換えられる見込みです。置き換えられる5本の10030型はリニューアル車で、非リニューアル車などが残る他線区へ転用されるものと推測されます。
また、5日前の決算説明資料にて、2026年〜2027年度にかけて、大師線に2連4本の新型車両を導入することが発表されました。現在、大師線と亀戸線は共通運用を行っていて、運用数は4です。従って、亀戸線から10050型(簡易リニューアル車、ワンマン改造済)が予備車を除いて撤退する可能性があります。
これらの置き換えによって、非リニューアル車など他の既存車・運用・玉突きとの兼ね合いにはなりますが、10030型・10050型から2〜3本程度の少数規模の余剰が発生する可能性は高いと考察します。
また、岳南電車の既存車両(全て元京王車)の譲渡時の改造は、京王重機が担当しています。その京王重機は近年、東武20000系のアルピコ交通への譲渡改造(先頭車化改造・ワンマン化改造・VVVFの機器更新など)を担当していたことから、東武車の譲渡改造のノウハウを掴んでいそうです。
また、東上線用のリニューアル車のうち10連2本(11032F・11639+11443F)ではVVVF化も併せて施工されているため、10030型においてはVVVF化の前例があります。
東武鉄道にはまだ8000系も残っていますが、「2両・ロングシート」という基本スペックの他、新型車両の導入時期や改造元など、極めて重要なポイントに多く合致する傾向にあり、車両によっては209系の初期車と遜色ない製造日の編成も居ることから、東武10000系列である可能性が極めて高そうで、複数社への譲渡が発生するか否かにも注目が集まりそうです。