
岳南電車の後継車両は?
岳南電車岳南鉄道線

(https://www.city.fuji.shizuoka.jp/machi/c1301/rn2ola000004dfyj-att/hngtkl000000c1y2.pdf)
静岡県の岳南江尾と、東海道線との乗換駅・吉原を結ぶ路線です。そんな岳南電車に、近年車両更新に向けた動きが出てきています。

「20m車」導入に向けて受け入れ体制

(https://www.city.fuji.shizuoka.jp/machi/c1301/rn2ola000004dfyj-att/hngtkl000000c1y2.pdf)
※以下引用元の記述が無い画像は全てこの資料より引用
2024年11月18日に公開された「岳南電車財政計画(第4クール)及び第四次行動計画の見直しについて」内の「令和7年度(事業)の見直し内容」の中に「次年度以降の車両更新に向けて、車長が20mの車両を入線可能とするため、駅ホームの切削工事のための測量費を計上する」の記述が確認されたため、20m級の後継車両の導入が確実になりました。


また、後継車両の納車時期については、1本目が2027年2月・2本目が2028年2月とし、いずれも当初の予定より10ヶ月後倒しとなったことも明らかになりました。

現行車両の顔触れ

|岳南電車(岳南電鉄)既存車両|
・7000形(←京王3000系):2両(7001・7003号車)
・8000形(←京王3000系):2連1本(8001F)
・9000形(←京王5000系):2連1本(9001F)
※括弧内は改造元の形式名(全て元京王車)
現行車両は全て18m級の車両で、今後20m車の入線に対応する工事を行うのは、大手私鉄からの18m車の放出が近年少ない傾向にあることが原因の一つと見られます。


今回の置き換え対象は、7000形1両(7003号車)・8000形2連1本(8001F)です。それぞれ代替車両を納車するとしていることから、新型車両は(少なくとも)2連2本が導入されることが予測できます。
一方で、7000形1両(7001号車)・9000形2連1本(9001F)は、新車導入と並行して車両検査を行うことがわかりました。

「車両更新」記述の推移
2022年

(現在閲覧不可)
車両更新(新型車両へ置き換え)
・2026年度:7001号車(7000形)
・2027年度:8000形
・2028年度:7003号車(7000形)
車両検査
・2025年度:7003号車(7000形)・9000形
・2026年度:なし
・2027年度:なし
・2028年度:9000形
・2029年度:新型車両(1編成1両)
・2030年度:新型車両(1編成2両)
・2031年度:新型車両(1編成1両)・9000形
丨丨
・7000形2両・8000形2連1本
→同数の新型車両(新造?)で置き換え
・9000形
→共存(or 2032年度以降に置き換え?)
それぞれの欄の記述を見るに、この段階ではこのような方針だったものと読み取れます。1両編成の中古車両の放出は現在ではほとんど発生しないことから、新造車両を計画していた可能性もあります。
2023年

https://www.city.fuji.shizuoka.jp/sp/machi/c1301/rn2ola000004dfyj-att/rn2ola000004doaz.pdf
「1両編成の車両を2両編成の車両に更新して輸送力の強化を図る」との記述が確認されたことから、これらが判明しました。
・7000形2両(7001号車・7003号車)の置き換えは2連2本
・後継車両の導入数は2連2本〜2連4本
2024年



車両更新(代替車両へ置き換え)
・2026年度(2026/4→2027/2):8000形
・2027年度(2027/4→2028/2):7003号車(7000形)
車両検査
・2025年度:7003号車(7000形)→ 必要最低限に限定
・2026年度:7001号車(7000形)
・2027年度:9000形
その他
・2025年度:ホーム切削工事(20m車対応準備)
「次年度以降の車両更新に向けて」=車両更新は2026年度〜
→ 代替車両は20m級の車両
2022年の計画と比べて変更になった点
2025年度
・7003号車の検査が必要最低限分に(車両保存費を減額)
2026年度
・後継車両の1本目の納入が2027年2月へと10ヶ月分延期
・7001号車が検査を通過(後継車両への置き換えを回避)
・8000形の置き換えが1年度分繰り上げに
(=納入延期により7001号車の検査に間に合わず?、次年度検査の8000形にスライド?)
2027年度
・後継車両の2本目の納入が2028年2月へと10ヶ月分延期
・7003号車の置き換えが1年度分繰り上げに
(=納入延期により検査順の流れで7003号車にスライド?)
後継車両の納入延期により、7001号車が置き換えの対象から外れた上で、他の置き換えが1年度分繰り上げになっています。また、7001号車については(7003号車とは異なり)置き換えを見越した検査の縮小&車両保存費の減額を行わないことから、当面は置き換えが見送られた可能性があります。
従って、後継車両の(一次?)導入は2連2本と予想します。

後継車両の候補

岳南電車では、設備投資費は原則、国・県の補助金を活用することとなっています。

https://www.city.fuji.shizuoka.jp/machi/c1301/rn2ola000004dfyj-att/rn2ola000004doaz.pdf
別の資料では「国・県などの安全対策補助を活用」との記述がありました。

https://www.mlit.go.jp/common/001136990.pdf
これは「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(鉄道軌道安全輸送設備等整備事業)」を指すものと見られ、国が1/3以内を補助します。
新造車両

こちらは、独自設計の新造車両を新造し、中古車両と比べて柔軟な運用をこなせるケースです。近年では静岡鉄道・一畑電鉄・伊予鉄道・琴電と、新造車を選ぶ中小私鉄も増えています。

https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/45527/04_ikkatsu.pdf
2025年度中に2連2本を製造し、2026年度後半〜2027年度中から導入することが決まっている、ことでん(高松琴平電気鉄道)の新造車両は、既に国・県・沿線市町の支援を仰ぎ、今年度に設計費を組んだ上で車両の設計を行っています。
ただ、費用面などを考慮すると、中古車両となる可能性も否めません。また、2022年の資料で単行車両の導入を示唆しながら、2023年の資料では2両編成としたり、2024年の資料ではわざわざ20m車に対応させたりと、中古車両(の仕様)に合わせたとも取れる計画の変更で、新造車両導入の可能性は低いかもしれません。
中古車両
① 213系5000番台(2連14本、JR東海)

213系は、隣県・愛知県〜長野県を結ぶ、飯田線で活躍している車両です。213系の特徴は「2ドア・転換クロスシート・トイレ付」という点です。

しかし、飯田線の中部天竜〜天竜峡間では、2026年3月からワンマン運転が実施される予定で、このタイミングに合わせて313系などへ置き換えられることが予測されています。

https://sangirail.co.jp/files/211kei.pdf
また、近年では、三重県の三岐鉄道が、JR線から直接輸送できる点を活かして、211系を譲り受けた例があります。
岳南電車も吉原駅構内にJR東海道線との連絡線が存在しており、213系は211系の兄弟車である点から、譲渡が発生しても不思議ではありません。
ただ、岳南電車の1本目の納車は2027年2月・2本目の納車は2028年2月ですので、改造などを加味しても半年〜1年半ほど在庫を確保しておく必要があります。一斉に放出されそうな213系よりは、各年度毎にちまちま放出される大企業の20m車の方が条件に適していそうです。また、クロスシートやトイレなど、山登りを見据えた装備は、仮に岳南電車に来るとなれば過剰な装備になりそうです。

静岡地区の211系については、2024年度末の完全撤退が報道済で、留置するには長期間となることから、候補から除外します。
② 205系1000番台(2連2本、JR東日本)

神奈川県の川崎近郊を走る、南武支線で活躍している205系1000番台。2連3本が在籍していますが、うち2連2本(ナハW1・W2編成)は、E127系0番台によって置き換えられました。

しかし、E127系に問題があったのか、ナハW2編成はこの夏の間、運用に復帰したのです。仮に来年以降もこの措置が続けば、放出が可能そうなのはナハW1編成のみということになりそうです。
仮に、2027年頃に新型車両(E131系?)が導入されれば、一斉置き換えのタイミングを狙う…ということもあるかもしれませんが、それならE127系を購入した方が良いでしょう。
「2両・ロングシート」という点は合致しますが、本数・時期・状況証拠が揃って合わず、可能性は低そうです。
③ 東武10000系 10030型・10050型

(画像はWikipediaコモンズより)
関東の大手私鉄の一つ、東武鉄道の10030型・10050型。東武鉄道で一大勢力を誇る当形式ですが、まもなく新型車両によって置き換えられる車両が出てきます。

https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/releases/202404161247115gFjCdYsG3H5MfjtzUEqxQ.pdf
6連9本(10030型5本・10050型4本)が所属している野田線には、80000系(5連25本)が2025年春から順次導入され、8000系(6連16本)と共に置き換えられる見込みです。置き換えられる5本の10030型はリニューアル車で、非リニューアル車などが残る他線区へ転用されるものと推測されます。

https://t.co/1NZQtiGzaV
また、5日前の決算説明資料にて、2026年〜2027年度にかけて、大師線に2連4本の新型車両を導入することが発表されました。現在、大師線と亀戸線は共通運用を行っていて、運用数は4です。従って、亀戸線から10050型(簡易リニューアル車、ワンマン改造済)が予備車を除いて撤退する可能性があります。
これらの置き換えによって、非リニューアル車など他の既存車・運用・玉突きとの兼ね合いにはなりますが、10030型・10050型から2〜3本程度の少数規模の余剰が発生する可能性は高いと考察します。

また、岳南電車の既存車両(全て元京王車)の譲渡時の改造は、京王重機が担当しています。その京王重機は近年、東武20000系のアルピコ交通への譲渡改造(先頭車化改造・ワンマン化改造・VVVFの機器更新など)を担当していたことから、東武車の譲渡改造のノウハウを掴んでいそうです。

(画像はWikipediaコモンズより)
また、東上線用のリニューアル車のうち10連2本(11032F・11639+11443F)ではVVVF化も併せて施工されているため、10030型においてはVVVF化の前例があります。
東武鉄道にはまだ8000系も残っていますが、「2両・ロングシート」という基本スペックの他、新型車両の導入時期や改造元など、極めて重要なポイントに多く合致する傾向にあり、車両によっては209系の初期車と遜色ない製造日の編成も居ることから、東武10000系列である可能性が極めて高そうで、複数社への譲渡が発生するか否かにも注目が集まりそうです。
一部画像・・・Wikipediaコモンズ
①
Description 日本語: 東上線の大山 - 下板橋間を走行する10000系(10030系)更新工事車による池袋行き急行列車
Date 8 October 2017, 10:31:34
Source Own work
Author MaedaAkihiko
②
Description 日本語: 東武野田線(アーバンパークライン)の八木崎 - 豊春間を走行する、10030系11631編成リニューアル車
Date 20 April 2021, 16:42:23
Source Own work
Author MaedaAkihiko