E233系2000番台 転用の可能性は
E233系2000番台
E233系2000番台。10連19本が在籍する常磐緩行線用の車両で、直通先の東京メトロ千代田線・小田急線にも乗り入れます。
E233系と言えば普通はこの見た目をしていますが、2000番台だけは地下鉄に乗り入れるため、車体を膨らみがないストレート車体とし、ドア間隔を4,820mm・先頭車乗務員室直後は4,780mm(他番台は4,940mm、先頭車乗務員室直後は3,610mm)に狭めています。そのため、他のE233系と比べてドア位置の差が発生するので、混在させた場合はホームドアを設置する際にネックになります。
迫る来春「長編成ワンマン運転」開始
さて、常磐緩行線ですが、2025年春(労働組合の情報では2025年3月)から、長編成ワンマン運転が開始され、車掌が居なくなります。
ワンマン電車と聞くと「整理券をお取りください」「ドアボタンを押してください」「一番前の車両の一番後ろのドアから乗って一番前のドアから降りてください(前降後乗方式)」「運賃は運賃箱に入れてください」などという、田舎の電車あるあるの客に何かと要求が多いワンマン電車を思い浮かべる方が多いと思いますが、そのような俗に言う「地方型ワンマン運転」とは全く異なるものです。
長編成ワンマン運転とは(JR東日本の位置付けで)原則7両以上の編成で行われる「都市型ワンマン運転」です。地方型ワンマン運転や車掌が乗る電車とは何が違うのかを、電車が駅に停まってから走り出すまでの手順で見て行きます。
長編成ワンマン運転では車掌常務の列車と比べて、運転のほとんどを機械が担って運転手が車掌の業務を兼ねることで車掌を削減するという手法です。
長編成ワンマン運転で自動運転を行うためには、ATOという機器とホーム検知装置を車両に設置する改造が必要です。TASCをATOの代わりに設置するケースもあります(自動運転が減速時のみに限定されるがATOより安価)。また、CCTVという駅ホームの様子を運転席で確認するモニターも追加で設置する必要があります。
2本はワンマン改造の対象外?
E233系2000番台のうち、上記の機器を設置するワンマン改造が終わったのは、マト2編成とマト11編成を除いた、全19本中17本となっています。
しかし、2023年11月付の労働組合の資料によりますと、JR車(E233系2000番台)のワンマン改造の対象車は「17編成」とされています。また、メトロ(16000系)は全37本が対象なのに対して、小田急(4000形)は全16本中14本のみが対象となっています。
ただ、小田急4000形については(15本目となる)4063Fの大野検車区への入場が確認されており、対象外とされた2本も追加でワンマン改造が行われているものとみられます。
一方で(昨年度まで改造を請け負っていた)長野総合車両センターを含めたJRの各工場の2024年度の改造内容に、E233系2000番台の改造が行われるとの記載はありませんでした。
すなわち(資料が公開された2024年3月から)8ヶ月の間で見直しが行われていない場合、マト2編成・マト11編成の2本はワンマン改造の対象から漏れることになります。もちろん、このまま改造されないとワンマン運転には対応できませんので、2025年春を目処に常磐緩行線からの撤退を余儀なくされます。
車両の在籍数と運用数の関係を見ると、いずれの形式もコロナ禍減便によって、予備車が必要以上に確保できている状況です。
16000系・4000形が全編成残留しそうな状況を踏まえると、E233系2000番台を(予備1本になることを強いてでも)2本離脱させることもできる状況です。そうでなくとも(JR東日本が多くの路線で予備を2本にしていることを踏まえれば)1本が余剰になることは確実で、転出しても全く影響は無いでしょう。
そんな中、渦中のマト2編成が長野へ
そんな中、2024年11月5日。マト2編成が長野総合車両センターへ入場しました。これまでワンマン改造を受けてきた編成の多くが長野へ入場している上、ドア窓にある小田急線のホームドア用のQRコードが残されていることから、現状では残留との見立てが多い一方で、転用との見立てをする方も居ます。
転用先は限定?ネックになるドア間隔
先述の通り、E233系2000番台は他番台と比べてドア間隔が異なるため、混在した場合はドア位置にズレが発生し、ホームドア設置の際に厄介な存在になります。E233系2000番台を転用する場合は、同じドア間隔の路線 orドア位置が混在しても問題の無い路線に限定されそうです。
① 東西線直通:輸送力増強の戦力に?
E231系800番台は、中央・総武緩行線→東京メトロ東西線へ直通する列車で運用されている車両で、E233系2000番台と同じ「JR東日本車、地下鉄乗り入れ、ストレート車体」の条件に当てはまります。一方で、ドア位置の混在はここでも発生することになりそうです。
ただ、東西線を走る東京メトロの車両でもドア位置の混在が起こっていたために、東西線内では大開口式のホームドアを採用しているため、E233系2000番台のドア位置でも対応できる可能性がありそうです。中央・総武緩行線の乗り入れ区間においても、将来的にホームドアを設置する際は大開口式にする必要がありますので、E233系2000番台が転入してもドア位置の問題は無いと考えられます。
次に、在籍数と運用数の関係を見ると、こちらも多く予備車を抱えていることがわかります。ただ、この運用数は将来的に変わる可能性が極めて高いです。
東西線は混雑率ランキングに例年ランクインするほどラッシュ時の混雑率が激しく、遅延も常態化している状態です。
そこで、遅延拡大の防止を図るべく、東京メトロは2027年度にかけて南砂町駅の改良工事を行っています。1面2線だったホームを2面3線に増強することで、前の列車が停まっていても次の列車が反対のホームに入線できるようになるため、同じ方向の列車を交互に発車させることを可能にさせることが狙いです。
並んで、輸送力増強を図るべく、飯田橋〜九段下駅間の折り返し設備の増強工事も行われています。現在は折り返し列車が後続の列車の進路を塞ぐ構造になっていますが、同時運行をできるよう増強することで、将来的な増発を可能にするというものです。
これらの工事が完了した場合、東西線ではダイヤの見直しと、輸送力増強(=増発)が行われることになりそうです。実際に増発が行われる場合は車両数を増やす必要が生じます。
E231系800番台を除くJR東日本車で東西線に入線できそうな車両は(両数等を加味すれば)E233系2000番台に限られそうで、転入によって増発分を補う必要が出てきそうです。
ただ(現在は2027年の完成を予定している)これらの工事の竣工が遅れる可能性もあるため、状況は不透明です。
② 青梅線(線内運用)
青梅線は、ドア位置が混在しても問題ない路線になるかもしれません。
直通する中央快速線の車両には、グリーン車の増結が現在進められています。一方で、中央快速線に直通しない青梅線内完結の車両にはグリーン車は増結されません。
そのため、グリーン車の増結後は、拝島〜青梅間では4種類、立川〜拝島間では5種類の両数が混在することになります。車両はE233系0番台で統一されているため、ドア位置の混在は運転台部分の差によるものとなりそうですが、それが複数箇所で発生することは確実で、ホームドアの設置は難しく、設置する際には大開口式の全面的or部分的採用を強いられそうです。従って、E233系2000番台が転入しても問題ない状況がしばらくは続くかもしれません。
「E233系2000番台が青梅線に転入し、青梅線内で完結する6+4両の置き換えに充てられる」と噂する方もネット上で散見されます。10両固定編成の転入によって、6両と4両のE233系0番台(青編成)を捻出し、他線区転用の駒に回す…という玉突きが行われる可能性もあります。
中央快速線においても、E233系0番台が10連60本なのに対して、グリーン車の製造が57本分で終わりそうで、トタH49編成・トタT71編成を含めた10連3本が余剰になる可能性が高そうです。南武線のナハN36編成も含めて、転用などがあるか今後の動向に注目です。