JR東日本向け車両:来年度以降は何を造る?次の首都圏向け電車は?
E235系1000番台の製造は今年度で完了予定
2024年度をもって、E235系1000番台(11連49本・4連44本、横須賀・総武快速線用)の4年半に渡る製造がようやく完了する予定です。今年度中に製造を終わらせるためか、JR東日本の在来線向け車両の今年度の製造数は(E235系1000番台の残りの製造数と同じ)11連14本・4連12本分の計202両となっており、少なくとも来春まではE235系1000番台の製造が続きそうです。製造は、普通車をJ-TREC新津事業所・グリーン車をJ-TREC横浜事業所が担当しました。
中央快速線のグリーン車もまもなく製造完了
同じく今年度をもって、E233系0番台のグリーン車(114両、中央快速線用)の製造も完了し、2025年3月中旬までに全編成への組み込みを終える予定で、恐らく来春のダイヤ改正からサービスを開始するでしょう。製造はJ-TREC横浜が担ってきました。ちなみに、先行的に組み込まれた編成では「お試し期間」として無料開放が今年10月から来春にかけて行われる予定です。
来年度以降は何を造る?
これらの製造完了により注目されるのが「JR東日本が来年度以降に製造する車両」。製造所のJ-TRECの2事業所の製造ラインがある程度は空くものの、JR側から新車の公式発表が無いために先行きがわからない状況です。
近年、E131系がローカル線向けに4つの番台が製造されましたが、0番台以外、公式発表は実車がJ-TREC新津で目撃された後で(E235系などの幹線向けの車両のように)いずれの番台も製造の1年半前からは発表されませんでした。
すなわち、来年度の製造は(実車が目撃された直後に発表される)ローカル線向けの車両が大半を占めると考えられるのではないでしょうか。
今後導入されそうな車両
実は、現時点で公式発表は無いものの、これら2形式については別のホームページをソースに計画が判明しています。特に仙石線では205系3100番台の老朽化が顕著で、来年度中に満を持して置き換えに踏み切る可能性が高そうです。
その他、一部SNSやサイトで導入の噂を見かけたのはこれらの形式です。E723系に関しては群を抜いて多く噂されていて、719系5000番台の置き換えに踏み切るには、特殊仕様から実際に「新形式の設計+新車導入」を迫られそうです。
一方で、長野地区(3連のみ)・高崎地区の211系には延命工事が行われていますが、ベンチーレーター撤去・幕板を貼る工事・屋根上の修復とメニューは軽いもののみで、長くとも5〜10年程度しか見積もっていないような内容です。新車の導入待ちか、あるいは何かしらの転入を見越しているのか…。
製造所の方針に気になる記述
ところで、JR東日本の2024年3月期の決算資料内の「2025年3月期の戦略」において、J-TRECのステンレス車両ブランド「sustina」とJ-TRECについて、次のような言及がありました。
注目すべきは後者の「sustina専用工場である新津事業所の操業度を平準化」です。平準化とは、量や種類を均等にばらして生産する手法で、一定に生産量や生産品目が流れ続けている状態を表します。
この言及に対して様々な予想が立てられていますが、個人的には「今年度とは真逆の造り方になる」と予想します。今年度、J-TREC新津では(JR東日本向けの車両は)E235系1000番台のみを一括かつ大量に製造しましたが、来年度以降は年度毎で形式・ロット(一会社)毎に大体の製造両数を定めて、一社一線区向けの車両を一年度で一括に製造して大量導入する傾向を無くしたいという事を指しているのではないでしょうか。
コストダウンを狙っているので、当然ながら年度内に造る事業所全体の生産両数も予め定めていると思います。
製造する両数を年500両と定めて、1年度目と2年度目はA社がA1系の年300両(全600両)・B社がB1系の年100両(全400両)・C社がC1系の年100両(全300両)だとします。3年度目はA社が少数形式のA2系を100両のみ造ったので、その年度から造り始めるD社のD1系(全400両)を年200両と振り分け、1形式は増えましたが年500両の基準をキープ。4年度目はC1系の製造が終わったものの、A社がA3系を年200両(全400両)造ったので年500両をキープしました。
…というような感じで、全体の年間の製造両数を500両に保ちつつ、形式毎の年間の製造両数も均一に振り分ける、というロジックです。
ただ、仕様の共通化を図ろうとしても、形式は多様化する可能性が非常に高いので、今後のローカル線向けの車両の仕様は、E131系とある程度共通化されるのかもしれません。
平準化の一例に(現在1編成目の製造が完了したと目撃のある)東臨71-000形を挙げてみます。71-000形の時期について判明している事柄は以下の通りです。
今年度の製造が1編成なので、2025年度に3編成(で10連4本)、2026年度に3編成、2027年度(上期中)に1編成とすれば、2025年度・2026年度は同じ3編成30両になり、71-000形の生産ラインをある程度平準化することが可能になります。推測なのでこの通りにはならないかもしれませんが「J-TREC新津事業所が目指す“平準化像”」はこのようなことを言っているのではないでしょうか。
J-TRECでは、2025年度〜2026年度末 or 2027年度上期にかけて、私鉄向け車両の製造数やロット数が増えていきそうです。中には横浜製のものもあるかもしれませんが…
J-TREC横浜には東急5000系の5104Fが現在入場しています。
仮にリニューアルが行われれば(対象の)3000系・5000系・5050系・5080系のリニューアル工事をJ-TREC横浜が担う可能性が出てきます。そうなると、新車の製造ラインは極力新津で…という流れになるかもしれません。
新車の製造ラインの殆どを新津に委ねる場合、ある程度は仕様を統一化させてロットを共通化させつつ、年度内の事業所全体の製造数&一形式(or 一会社)毎の年度内の製造数を均一に振り分けるために、2027年の春〜夏頃(2027年度上期?)まではJR向け車両の製造数を減らす(=少数のローカル線向け車両をちまちま導入)…ということは考えられそうです。
次の首都圏向け電車は?
JR東日本の幹線向け車両・特急車両は、製造開始時期の約1年半前・導入開始時期の約2年前に公式発表があります。
仮に(私鉄向け車両の製造数が減りそうな)2027年の春〜夏頃(2027年度上期)から、JR東日本の幹線向け車両か特急車両を製造し始める場合、2025年の秋〜冬頃には公式発表がありそうです。
近年は、京浜東北・根岸線&横浜線用のE235系と、特急「成田エクスプレス」用の新形式の導入計画がありましたが、コロナ禍による計画変更で実現には至っていません。
山手線と京浜東北線(大宮〜東神奈川)では、2028年〜2031年頃を目処に、ATACS導入・ATO高性能化を実施する予定です。
京浜東北線では、E233系1000番台へのATACS対応改造・ATC/ATO装置搭載工事が行われていますが、山手線のE235系0番台に6〜10本程度の余剰が発生しており、他線区へ転出するのであれば(同じ改造を受ける隣接する)京浜東北線が一番力を発揮すると考えます。ただ、そのままではTIMS車とINTEROS車が混在してしまいます。なるべく避けたいパターンです。
山手線から10連10本を呼び寄せ、2027年から10連68本を新たに製造し、2030年頃のATACS導入・ATO高性能化に併せて対象線区をE235系で統一させる…という流れなら、個人的には自然に感じます。
実は、朝日新聞が2021年2月20日付の記事で「新型コロナウイルスの感染拡大で乗客減が長引いている影響もあり、車両(京浜東北線用のE235系)の導入時期などは変更される可能性がある」と導入延期の可能性に触れていました。かつての計画では2024年から導入が開始される予定でしたので、各事象の時期的にも証拠になり得ます。
また、高性能ATOがE235系以降の車両にしか対応していない可能性もまだ残っていて、今後が注目されます。
「せっかくATACSに対応させたE233系1000番台はどうするんだ!」という声が出そうですが、長編成ワンマン運転の動きは今後首都圏の他線区でも行われる予定ですし、ATACSも拡大させていく流れでしょうから、長編成ワンマン・ATACS非対応車の置き換えのために10連のまま首都圏の他線区へ転用させれば問題は無いでしょう。むしろ拡大の契機・仕様統一・老朽車の置き換え促進に繋がりますからね。
一方で、横浜線ではATACS導入・ATO高性能化は行われない他、長編成ワンマン運転が来年度以降に始まりそうですので、E233系6000番台が続投する流れに変わったかもしれません。
特急「成田エクスプレス」用の新型車両(E263系?)の計画がまだ生きているかどうかはかなり予想しづらいです。ただ…
これらのことから、計画延期のみの場合は(成田空港C滑走路が開業する予定の)2029年3月を目処に導入されるかもしれません。
このほか、常磐線特急「ひたち」「ときわ」用のE657系を置き換え、新潟方面の「いなほ」「しらゆき」等へ転用させる噂もポツポツと出ていますが(個人的には)交直流車は高価なので、E657系に改修を施した上で、新潟方面へは短編成の新形式を直接導入した方が合理的だと考えます。