新しい気動車③:HB-E220系 誕生か
↑⚠️:前回の①をご覧になっていない方は必ず先にご覧ください↑
(②は今後東日本以外の車両を扱う記事として投稿するため空番)
前回の①において、JR東日本が導入を進めている「ハイブリッド車両」・「蓄電池電車」・「水素電車」の車両をそれぞれ紹介した上で、今後の導入について「ハイブリッド車両の新形式が造られるのではないか」と予想していましたが、その予想通り、ハイブリッド車両の新形式が造られることが、設計に携わった会社のホームページの記載より明らかになりました。
HB-E220系 存在が明らかに
「2022(年):JR東日本 HB-E220 車体設計」
ーー見覚えのないこの形式名は、鉄道車両の設計に携わる、三共技研工業 ㈱ が設計に携わった車両を記載したホームページに記載されていました。
「HB-E」=「JR東日本のハイブリッド車両」を指しますが、現在これに該当する形式は、HB-E210系(仙石東北ライン)・HB-E300系(観光列車用)の2つしか無く、かつ220は210の続番であることから「HB-E220」は現在未発表の新形式と見て間違いないでしょう。
そして、この記述の存在が判明し、情報がXなどで拡散されると、ホームページは2022年度の事業のみ記述が一旦削除された後、「メンテナンス中」として閲覧できなくなってしまいました。恐らく公開前の情報を掲載してしまったために検閲が入ったものと思われます。
GV-E400系(電気式気動車)ではない理由
ということで「HB-E220系」の誕生が確定的となりましたが、Xでは「なぜ電気式気動車のGV-E400系ではないのか」という疑問を非常に多く頂きました。
電気式気動車・ハイブリッド車両はともに「ディーゼルエンジンと発電機による電力でモーターを動かして走る」もので、違いは電力を溜めるバッテリーの有無のみであることが疑問の声を大きくした原因でしょう。では、改めて経緯を振り返ることにしましょう。
GV-E400系は、2018年〜2021年に新潟・秋田地区に導入され、キハ40形・キハ47形を置き換えましたが、本来であればその後さらに90〜190両を製造し、既存の気動車を置き換える予定でした。
しかし、2021年6月に発表された「ゼロカーボン・チャレンジ2050」の資料にて、気動車の置き換えはハイブリッド車両・蓄電池電車を軸にした上で、水素電車(燃料電池車両)の試験も行うと記載された他、環境に配慮した気動車の地図に電気式気動車の記載が無かったため、この時点で「GV-E400系の製造が打ち切られたこと」と「電気式気動車が環境に優しくない扱いを受けたこと」が暗示されました。
GV-E400系の製造が打ち切られた訳は公式にはわからないものの、これら導入を経て抱えた実用性の問題が原因なのでしょうか…。
また、GV-E400系のメリットとしてはこれらが挙げられますが、HB-E210系の登場から10年が経過しており、JR四国は58両もハイブリッド車両を導入することを発表していることから、技術発展によりハイブリッド車両もある程度の一般化・量産化・廉価化が出来るようになったと捉えるべきでしょうか…。
プロジェクトの進境度から、以前から老朽化した気動車を置き換える際はハイブリッド車両の導入が既定路線ではないかとされていました。
HB-E220系 仕様予想
製造メーカーについて。三共技研工業 ㈱ が主要取引先に挙げていたのが、J-TREC・近畿車輛・日本車両・川崎車両の4社でした。
HB-E210系の前例を見るに構体はJ-TREC製で、E129系・E131系の構造をある程度踏襲する可能性が高そうです。恐らく「E131系の3ドア版で20m車」になるでしょうか。
製造数について。それを紐解くために怪しい受注が無いか「鉄道車両等生産動態統計調査」の「JR向け車両」のページの記載を確認したところ、2023年4月に20両・2023年8月に19両のディーゼル動車の受注を確認しました。
ただ、今年度はJR九州向けのYC1系が8両程度製造される見込みで、その受注を含んでいる可能性があります。また、他社が受注を掛けている可能性も否定できません。ただ、最低でもどちらかがHB-E220系の受注と見て良いのではないでしょうか。
HB-E220系 導入先予想
HB-E220系が導入される目的は、キハ100系(16.5m車)・キハ110系(20m車)の置き換えと見て間違いないでしょう。1990年〜1999年製、今年で25年〜34年目。鋼製車体や内装の床など随所に劣化が見られ始めています。
一方で現在、両形式では延命工事が行われており、小牛田・郡山・新津・長野・小海のキハ110系、盛岡・八戸のキハ100系で確認されています。これは、電気式→ハイブリッド・蓄電池・水素への転換による導入の遅れやコロナ禍による不況を受けたものと推測され、延命工事が行われた車両は置き換えの順番が後回しになったと見て良いでしょう。しかし、雑誌や目撃以外に延命工事が行われている可能性も否定できませんので、あくまで参考程度にご覧ください。また、置き換えられた後に延命した車両のみ転属するケースも想定することはできます。
導入先の予想は、延命工事をまだ行っていない車両・所属区や、特徴的な路線環境などのさまざまな視点から7つ挙げます。しかし、実際に導入されるのは7つ全てでは無いでしょう。
① 八高線 高麗川〜高崎(高崎車:キハ110系 21両)
高崎車両センターに所属する八高線用のキハ110系(21両)は、現時点で延命工事が行われていません。
また、この区間では、現在「GNSS(全地球航法衛星システム)」と携帯無線通信網を活用した新しい列車制御システムの試験が行われています。
今まではいずれも地上設備が担当していた、踏切を鳴らす列車の検知機能を衛星システム・踏切の制御を携帯無線に置き換えることで、電車のブレーキ制御を自動化し、スリム化とコストカットを図るものです。
発表後、2020年9月から2021年1月にかけて、秋田用のGV-E400系3両(GV-E400-9、GV-E401+GV-E402-18)で試験走行が行われました。
追って、2023年2月からは、キハ110系による試験走行が始まりましたが、よりによって試験対象車は高崎車ではなく郡山車(キハ111+キハ112-108)でした。
更に、八高線の混雑率の上昇を嘆いた方がJRの職員の方に伺ったところ「キハ110系は老朽化や故障で動かせない車両があり不足している」との回答がありました。
しかもこの区間は、概ね2両編成で運行されています(朝晩1.5往復の3両運用や昼間1往復の1両運用を除く)。ハイブリッド車両は、2両固定編成を組むケースが多く、導入に適した線区と言えるでしょう。
そうこうしているうちに、踏切制御システム(GNSS)の導入目標時期が今年度中に迫ってきています。その一方で、キハ110系に今から改造を施すには不条理な条件が揃いすぎています。
従って、八高線の非電化区間には(GNSSに対応した)2両固定編成のHB-E220系が真っ先に導入される可能性があると見ています。仮に先述した20両の受注がこれに当てはまるのなら、2連10本の導入になるのでしょうか。
② 北上線・大船渡線(一ノ関車:キハ100系 23両)
盛岡車両センター一ノ関派出所に所属する北上線・大船渡線用のキハ100系(23両)も、現時点で延命工事が確認されていない上、初期車が多く所属していて老朽化がより顕著です。ただ、HB-E220系は20m車になることが予想される一方、キハ100系は16m車で、かつ単行運用が多いです。他所の延命工事を受けたキハ100系などの転入で一時的に置き換えられる可能性も否定はできません。
③ 釜石線・山田線・花輪線(盛岡車:キハ100系 16両・キハ110系 39両)
最大勢力の計55両を抱える盛岡車両センター。特に、快速「はまゆり」用のキハ100系・キハ110系0番台は最初期の車両に当たり老朽化がより顕著な他、2形式をあわせた所属両数は最大勢力で、テコ入れを図るには効果が高いです。ただ、八高線と比べると1両の運用が多いため単行仕様も設計しなければならない上に、キハ100-23には延命工事が既に施されている点に注視する必要がありそうです。
④ 石巻線・気仙沼線・陸羽東線・陸羽西線(小牛田車:キハ110系 42両)
小牛田車両センターには、キハ110系が42両在籍しています。盛岡に次ぐ勢力となっており、直接的な置き換えによる効果は盛岡に並んで高いでしょう。一方で、盛岡と同じく1両の運用があり単行仕様を用意しなければならない上に、キハ111+キハ112-207には延命工事が既に施されている点に注視する必要がありそうです。陸羽西線・陸羽東線はハードルが低そうに見えますがどうでしょうか…。
⑤ 仙石東北ライン(小牛田車:HB-E210系 2連8本)
わずか10年前の先代の車両にも関わらずなぜリストアップしたのか。それは仙石東北ラインの2両運用が消滅したため、4連固定編成のHB-E220系を導入した上で、2連8本あるHB-E210系を2両運用が6つある左沢線に玉突き転配させて、キハ101系を置き換える…という考察ができるからです。
ただ、転配を伴う車両の動きを行うかと言われれば疑問符が付く一方で、製造から10年が経ったHB-E210系に今更中間車を造らせるかと言われるとそうとも言い難い状況です。現状維持させる線を含め様々な予想が飛び交っています。
⑥ 左沢線(山形車:キハ101系 13両)
左沢線にHB-E220系を直接導入するという考察も可能ではあります。キハ100系の兄弟車の単行車ですが、延命工事がなされていない上、現状は2両を繋げた運用となっており、後継車両も2連固定編成となることが濃厚なので、既存設計のままのハイブリッド車両に置き換えられる環境です。ただ、電化区間も走るという点では蓄電池車両の可能性も無きにしも非ず、今後の選択に注目です。
⑦ 久留里線(木更津車:キハE130系 10両)
最後に変化球。久留里線は木更津〜上総亀山までを結ぶ千葉県の路線ですが、途中の久留里で運行形態が分かれており、木更津側は複数両の運用が多い一方で、上総亀山側は単行運用が多い上、近年は廃線を含めた今後の検討が行われ、数年内の廃線が濃厚となっています。仮に久留里〜上総亀山が廃止された場合、複数両での運用が多い木更津〜久留里間にはテコ入れを兼ねて2両固定編成の新型車両を入れて、キハE130系100番台を単行運用が多い線区へ回すという可能性もあるのではないでしょうか。ただ、こちらも蓄電池車両を含めた様々な選択肢がありそうです。
キハ110系の今後は?
さて、置き換えられるキハ110系ですが、中古の気動車を購入する中小私鉄への譲渡となれば適齢期で、複数社への譲渡が発生する可能性がありそうです。次回はその可能性を見ていきたいと思います。