「どこへいく?」 西武新2000系 2連2本
「終末トレイン」に怪しい動き
2024年9月9日。西武新2000系の2連2本(2451F・2453F)が、冬に検査を受けたばかりにも関わらず、なぜか(南入曽→)武蔵丘車両検修場へ自走で再入場しました。
9月25日。再び武蔵丘を出場した2本は(飯能方のMc車の屋根上配管の一部を新品に交換した上で)自走で武蔵丘→小手指車両基地へ入場しました。
そして9月27日。小手指にて甲種輸送用の機器が車内に搭載されている姿が目撃されました。
甲種輸送用の機関車とのブレーキ読替装置とエアータンクとみられ、西武から地方私鉄へ車両が譲渡される際の甲種輸送でよく搭載される機器です。従って、2451F・2453Fは今後地方私鉄へ譲渡される可能性が高くなりました。
西武鉄道は長年に渡り不要となった車両を「中古車」として地方私鉄へ譲り渡しており、元西武車を保有する地方私鉄は多いです。では、2451F・2453Fはどこへ譲渡されるのでしょうか。
近年の傾向から譲渡先を探る
近年の譲渡先
2000年以降、西武鉄道の中古車が譲渡された中小私鉄は次の通りです。
このうち、以下の地方私鉄は、両数が異なるか、西武車の譲渡または譲渡自体の見込みが少ないと判断し、候補から除外します。
そして、譲渡の可能性があると判断した「上信電鉄・流鉄・近江鉄道」の3社から、過去に車両が譲渡された時の輸送ルートを元に、2451F・2453Fと一番近い動きをしていた私鉄を検索します。
上信電鉄
2005年、新101系(2連2本)が譲渡され、500形として現在は活躍しています。
現在、方向転換回送(自走)は東村山駅付近の高架化工事に伴う配線変更により行えなくなり、E31形→新101系263Fに置き換えられている点を留意する必要があります。
しかし、今回の新2000系とは以下の異なる点があります。
・武蔵丘車両検修場で譲渡先向けの改造を済ませている点
・武蔵丘→小手指へは(E31形の)牽引で輸送されている点
前者については、近年同社に譲渡された元JR東日本の107系(→上信700形)が上信電鉄の車両検修場にて改造を行っていますが、元は高崎地区のJRで運行していて、改造中に高崎駅構内の留置線を共有できた点から、輸送費を抑える目的があったものとみられます。
従って、上信電鉄が西武車を譲り受ける流れにしては「武蔵丘での改造」が行われていないのは不自然で、可能性は低いと考えます。
流鉄
2009〜2013年、新101系(2連5本)が譲渡され、5000形として現在は活躍しています。5年度に跨って譲渡されたため、輸送経路や牽引車両に変更が生じたため、最終編成となる5005Fを参考とさせていただきます。
上信電鉄500形と同じように、今回の新2000系とは「武蔵丘車両検修場で譲渡先向けの改造を済ませている点」が異なり、合致しないことから、可能性は低いと考えます。
近江鉄道
2009〜2013年、新101系(計19両)が譲渡され、900形(2連1本)・100形(2連5本)として現在は活躍しています。また、2014年〜2015年には3000系(6連2本)が譲渡され、300形(2連2本)として現在は活躍しています。
流鉄に倣い、輸送ルートは直近の3000系のうち、普遍的な経路を辿った3007Fのものを使用します(3009Fは中間車2両の脱車のため横瀬へ入場するなど特殊的な動きが見られたため)。
今回の新2000系とは「武蔵丘車両検修場に入場していない点」が異なりますが…
「甲種輸送前に譲渡先向けの改造を行っていない点」は、今回の2451F・2453Fと共通しています。
また、2451F・2453Fが武蔵丘で行った改造は(確認できる限り)飯能方のMc車の屋根上配管の一部を新品に交換したのみで、改造というよりかは整備に当たるような内容です。
従って、2451F・2453Fに一番似たルートを辿っているのは、近江鉄道への譲渡車と考察する事ができます。
近江鉄道では「車両更新の動き」
近江鉄道は、2023年の移動等円滑化取組計画書で、移動等円滑化基準に適合しない2連11本の存在に触れた上で「老朽化した車両を更新する際は、移動等円滑化基準に適合するための計画を推進していく」としました。
これは(車齢60年以上の車両が大半を占める)800系・820系(2連10本)を指す文章と見られ、所属数が西武2000系の2両編成と合致しています。
2023年10月24日には「第12回近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会」が行われ、西武鉄道・近江鉄道・近江鉄道線管理機構の3者が支援協定を締結しました。
地元局の報道によると、協定では近江鉄道が西武鉄道から技術支援・人材派遣・中古資材の提供・中古車両の譲渡などを受け、安全運行の確保や利便性向上を目指すことなどが挙げられていたそうです。
更に、鉄道事業再構築実施計画の具体的な内容の1つとして「観光列車の導入経費のためのクラウドファンディングの募集」が検討されているとの記載もありました。
同年11月には、近江鉄道線鉄道事業再構築実施計画(案)の資料が公開され、以下の3点が明らかになりました。
要約すると「VVVFインバータを搭載した西武鉄道の中古車両を近江鉄道へ譲渡する計画が挙がっている」ということです。
西武2000系は界磁チョッパ制御車ですが、VVVF車の9000系・30000系(2連)の放出が見込めないことから、現在はVVVF車ではない車両のVVVF化を行うことになりそうです。
また、サステナ車両(小田急8000形・東急9000系)での置き換えが予定されている、新101系・2000系(国分寺線用の6連)・4000系については「譲渡予定はありません」と言及されているため、譲渡の候補からは外れます。
また「近江鉄道沿線地域公共交通計画の原案」の「車両や軌道等の設備投資や車内改装等の実現に向けて早急に検討を開始する」とされたページの中に「施策の優先順位を決定し、それに応じて “2024年度〜2033年度までの再構築事業実施期間” に実施する」と書き記されていました。
「放出の目処がないVVVF車、譲渡予定がない新101系・2000系(国分寺線用6連)・4000系を除く、直近で余剰になりそうな西武車」と考えると、やはり「2000系(2両編成)のVVVF化」が有力なのではないでしょうか。
前例を見るに「263Fのお迎え」が来たら、譲渡(甲種輸送)の合図です。
新2000系の2両編成といえば、2463Fことアポジー号が舞台となった…
2024年の春アニメ「終末トレイン どこへいく?」。
人気の高かったアニメだけに、もし新2000系…ましてや2463Fに第二の人生が待っているとなれば、かなりの話題になりそうです。