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しびれと向き合うために~抗がん剤治療による末梢神経障害の対策ガイド~
「指先がピリピリする」「手袋をはめているような感覚」「足が重だるい」などの症状に悩むことはありませんか?これらは、抗がん剤治療による末梢神経障害の一例です。特に冬場は症状が強くなり、生活の質(QOL)が低下することもあります。しかし、適切な対策に取り組むことで症状の緩和が期待できます。希望を持って、症状に向き合っていきましょう。
このnoteはこんな方におすすめです。
・抗がん剤によるしびれについて知りたい方
・しびれがどのぐらい続くのか知りたい方
・しびれを和らげる方法を知りたい方
このnoteで得られる知識を1枚で!
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抗がん剤のしびれってどんなもの?
抗がん剤はがん細胞を攻撃する一方で、手足の感覚を伝える末梢神経にも影響を与えます。その結果、「ピリピリ」「ジンジン」といった感覚異常や感覚の鈍化、筋力低下などの多様な症状が現れることがあります。
特に乳がん治療で用いられるタキサン系薬剤(例:パクリタキセル)は、高頻度で末梢神経障害を引き起こすことが知られています。
パクリタキセルによるしびれの特徴
パクリタキセルは術前・術後補助化学療法で広く使用される重要な薬剤ですが、用量依存的に手足の感覚過敏やしびれを引き起こすことがあります。治療終了後も症状が長期間持続することがあり、不安を感じる患者さんも少なくありません。
パクリタキセルを含む術前・術後化学療法を受けた乳がん患者における末梢神経障害の発生頻度は、化学療法終了後、1ヶ月時点で68%、3ヶ月時点で60%、6ヶ月時点で30%と報告されています。半年後時点でも3割程度の方がしびれを感じることに驚かれた方も多いかと思います。治療終了後の軽快率は研究によって異なりますが、症状が長時間持続することがあります。
Seretny M. Pain. 2014;155(12):2461-2470.
しびれはいつまで続くの?
「このしびれはいつ治るの?」という不安はもっともです。多くの場合、治療終了後に徐々に軽快しますが、一部では数ヶ月から数年にわたり症状が続くことがあります。個人差が大きいため、正確な予測は困難ですが、医療チームと協力しながら適切な対策をとることが重要です。
しびれを和らげるための対策
しびれに対する対策は薬物療法、運動療法、その他の方法に分けられます。
薬物療法
アセトアミノフェン(カロナール)や非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニン)
なじみのある薬剤であり、軽度から中等度の疼痛に対して有効です。化学療法による末梢神経障害に対して馴染みは薄いですが、カロナールやロキソニンのみで「ビリビリ感」が良くなることもあります。
プレガバリン (リリカ)・ミロガバリン(タリージェ)
この2つは兄弟のような薬です。神経の興奮を鎮め、疼痛やしびれを緩和します。いずれも少ない容量から開始し段階的な増量が必要であり、急な中止は症状の悪化を招く可能性があるため、注意が必要です。
・プレガバリン (リリカ): ジェネリック医薬品(後発品)も存在します。1日25mgから600mgまで用量調節が可能です。
・ミロガバリン(タリージェ): 副作用の発症頻度がリリカに比べて低いことが報告されています。一方で、用量調節の幅は狭いです。
頻用されますが、2025年1月現在、比較試験によるエビデンスはありません。両薬剤とも、効果は同等と考えられていますが、患者さんの状態や副作用、費用などを考慮して選択されます。眠気やふらつき、めまいの副作用があり相談しながら投与量や内服タイミングを決定します。
デュロキセチン (サインバルタ):唯一ランダム化比較試験によるエビデンスがある薬剤です。化学療法による末梢神経障害に対して、疼痛軽減効果が示されています。副作用として、眠気や吐き気が報告されています。
Smith EM. JAMA. 2013;309(13):1359-1367.
漢方薬
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん): 大腸がんに対するオキサリプラチンによる末梢神経障害のしびれに対して、予防薬としての日本発のエビデンスがあります。治療薬としてのエビデンスは確立されていません。
Oki E. Int J Clin Oncol. 2015;20(4):767-775.
人参養栄湯(にんじんようえいとう): 胃がんに対する術後化学療法のオキサリプラチンによる末梢神経障害のしびれに対して、予防薬としての臨床試験の報告があります。
Motoo Y. Int J Clin Oncol. 2020;25(6):1123-1129
運動療法
適度な運動は、血流改善に寄与します。特定のエビデンスがある運動はありません。患者さんがやっている運動で多いものにはヨガ・ストレッチ・ウォーキングがあり、いずれも筋の柔軟性向上と血流改善を促します。
その他の対処法
温める:患部を温めることで血行を改善し、症状を緩和します。特に冬場は、手袋や靴下などで保温を心がけると良いでしょう。
まとめ
抗がん剤治療中のしびれは辛い症状ですが、適切な対処により、症状の緩和やQOLの改善が期待できます。希望をもって医療チームと連携し、個々の状態に合わせた対策を講じることが重要です。
治療が終了しても、しびれが完全に軽快しないこともあります。しかし、様々な治療法や対処法を組み合わせることで、症状とうまく付き合い、より快適な生活を送ることは可能です。 医療チームと共に、あなたに合った解決策を見つけていきましょう。
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