なぜ「モバイルハウス」か①|旅暮らしの住まい【#30-7】
2020年の「夢リスト」を見て、驚きました。
私は「移動式モバイルハウスに住む」そして「山奥で庭を持つ」という、どう考えても矛盾する願望を抱き、無意識にそれに向かって行動していたのかもしれないし、ただ身を任せただけかもしれません(多分後者)。
3年後、奇しくもほぼ同時期にどちらも実現しました。
私はこの10年以上、庭のデザイン界隈で図面をひいており、毎日どなたかの居住空間づくりに関わらせて頂いています。私自身は持ち家を所有したい気持ちはありませんが、自分もいつか庭をいじりたいとずっと思っています(この時点ですでに矛盾しかないのですが)。
モバイルハウスはどうか。
きっかけとなったのは、坂口恭平さんの著書「モバイルハウス 三万円で家をつくる」だったこと、これははっきり覚えています。バンライフ界隈では、この本に影響された人は多いようです。
4年前の自分が、この本のどこに魅力を感じたのかを、今考えなければもう思い出せなくなる気がするのです。
家を手放して1年半ほどたちます。当時は家がないという自分の生き方が、自分自身でおもしろくて仕方なかったのですが、今ではそれが普通になってしまいました。その時々にしか書けないもの、持ち得ない言葉を残しておくのが、こういった文筆のおもしろいところです。
居住を考えることは、生き方を考えることに近いと思います。どこに滞在するのか、誰と過ごすのか、そしてそれにいくら掛けるのか。
前述の書籍にて、モバイルハウスの材料をホームセンターで買った坂口さんは、こう言っています。
2020年5月、私は東京都内のマンションの高層階で暮らしていました。その家賃は2LDKで月額20万円とちょっと。新築で入居したそこは、東京としては標準的な価格だったと思います。
のべ8年で終えた東京での暮らしは、それなりに楽しいものでした。主だった美術展やコンサートは必ず東京に来るし、海外に行くのも便利そのもの。どのジャンルのレストランでも近くにある。必要なものはなんでも手に入りました。
(少なくとも、当時はそう思っていました)
ところが一転、流行り病下の東京は、空気自体にグレーの色がついたかのように、窮屈さが充満していたように思います。
それに合わせて、私も今後の人生を考えるようになりました。
おそらくいちばんの要因は、高額な家賃が全く見合わない部屋。もちろん部屋自体は変わりませんが、以前なら真っ先に楽しめていた東京のメリットが、何も感じられなくなっていたからです。
おまけに当時産休明けでスローリスタートをきっていた私は、その家賃のためだけに働いているようなものだったからです。
ここに居る意味はなにか、
ここで何がしたいのか、
このままでいいのか、
何かを変えたい。
この流れと、この本がマッチしたのだと思います。