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東京へ戻る新幹線にて

旦那のいる東京へ戻ることが嫌なのではない。
ただ、母とまたしばらく会えなくなってしまうのが、とてつもなく寂しくて涙が止まらない。

いつも、最寄りの駅ではなく、福井駅まで車で送ってくれて、お土産を選び、改札を通って、私が見えなくなるまで見送ってくれる。
(前回は改札中にエスカレーターがあることを知らず、トイレに行って出てこないと思ったようで、出発時間まで待っていたらしい。)
私は母の前で泣いてしまわぬよう、いつものように何食わぬ顔をして手を振るが、1人になり、電車が到着すると、抑えきれなくなってしまう。
幸い福井駅から乗車する人は多くないため、注目されることはないが、福井県を通り越して石川県に入り、富山県へ向かう…そうやって、もうどうしようも帰れなくなるまで諦めきれず、私の心は福井県に、実家に、母のところへ帰りたがってしまう。

早く結婚して家を出たいと、大学生の時はあんなに思っていたのに。いざ結婚して転勤族になり、実家からどんどん離れるたびに、帰りたいという思いが強くなっている。
結婚して家を出ても、すぐに帰れる距離であれば違ってはいたと思う。
週1くらいの頻度で顔を合わせて、仕事や家の話をして、何かあってもすぐに駆けつけられる距離。それくらいであれば、私の心も穏やかであろう。

今は東京と福井の最短でも片道4時間。新幹線に乗ってる時間は3時間で、頻繁に乗れるほど安くもない。帰省できるのは年1、2回ほど。
私も働いているため、長期休みがとれるわけでもないので、友人の結婚式など何か用事がないとなかなか帰省できない。
用事で帰省するとなにかとバタバタして、家族で過ごす時間も限られてくる。
かつては当たり前だった日常が、とても大切で愛おしいものであったことに気づかされる。

実家にいる間、私は子どもでいることができる。東京へ戻る時間は、子どもの私から、1人の大人であり、社会人であり、妻である私に戻る時間でもある。

今、私は2度目の転勤で東京に住んでいる。
新婚生活は様々な事情で地獄のようなものだったが、今は比較的安定した生活を送っている。
しかし、現在不妊治療をしており、先日初めての体外受精にチャレンジしたが結果は残念なものだった。明日は2周目の治療のため受診予定である。

旦那のことは愛している。しかし、東京の人混みや空気、心が荒むような環境に加えて、不妊治療で傷ついた心が癒えぬうちに始まる2周目。仕事と家事に追われる毎日。そんな諸々が、思っていたよりも私の心を圧迫していたようだ。

新幹線が新高岡についた。
ようやく私の涙も止まり、平然を装うことができるようになってきた。
長々と書いたが、単純に私はマザコンなのだ。
1番の理解者であり、いつまでも雑談をしていられる友人のような母に、また、すぐに会いたい。

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