【樋口円香pSSR「ギンコ・ビローバ」】ちぐはぐな銀色の気持ち【ネタバレ感想/妄想解釈】
※【ギンコ・ビローバ】のネタバレ感想。散文、個人の解釈です。
樋口円香pSSR【ギンコ・ビローバ】が実装された。
樋口円香に一目惚れをしてシャニマスを始めた私は天井まで引いてやっと手に入れた読み進めたが、最後に待ち受けていたのは暗黒だった。
これは、もう一度読み直した上での走り書き感想である。メモ書きのようなものであるため、期待しないで見てほしい。
私は樋口円香を明確に言語化することに少し抵抗があるため、たどたどしい文章になっていると思う。浅倉やノクチルのことは敢えて省き、Pと樋口という観点で進めていく。
1.【囀】/「気持ち」は見えない
Pがお菓子作りを鼻歌混じりにしているところから始まる。(ギャグパートかな?)
樋口はPの「肩書き」を気にしている。
彼女にとってPは「プロデューサー」であり、それ以外でもそれ以上でもない。
昼休みとはいえ、お菓子作りに興じるPは、偉そうな身分の癖に変だと。
しかし、Pは「肩書きに意味なんてない」「自分自身が何をするかだから」と言う。
もう樋口とPの思想はすれ違っている。
彼女は、お菓子に込めたPの応援の「気持ち」が見えないと言う。
それは彼女が少なからずPの「気持ち」を気にしていることになるだろう。
「気持ち」とは内面。外見ではわからないことだ。
彼女はPの肩書きに注視しているはずが、Pの内面にも関心を抱いている。
それは、彼女の中で、Pへの感情や想いが複雑に入り混じっているのではないだろうか。
2.【信】/気にしないフリってだけ
樋口の昔のクラスメイトが樋口の噂をしている。
同じ空間にいるのは気まずいだろうと感じたPは、他の車両へと移ろうとするのだが、「余計な気遣い」の一言で静止される。
樋口はこういった他人の行動の意図を読み取ることに長けている。それはよくPのことを観察しているからかもしれない。
噂話に関して樋口は「気にするだけ無駄」と言う。
「気にしないからって気にならないとは限らない」
このPの言葉が樋口の他人への認知のほとんどだと私は思う。
彼女は他人へ気を張っている。どんなことを言われても、されても、「気にしない」フリをしているが、彼女の内は確かにそのことが残っているのだと思う。
天塵でやらかしたステージの小糸へのフォロー等、彼女は自分や自分の世界における過去のことをなかったことにしない。できない。
Pは「正面で向かい合う必要はない」「自分は嫌な気持ちになった」と伝える。
それに樋口は「私の代弁者になろうとしないで」と答える。
樋口は後々のコミュで語られるが、自分の感情の言語化に臆病で慎重だ。
私はPの発言は樋口にとって的外れではないのだろうと思った。
しかし、樋口はPに対して突き放すような態度をとる。
それは彼女にはPの「気持ち」がわからないのに、Pには彼女の気持ちが少しでもわかられてしまうからじゃないだろうか。※樋口もPの気持ちが理解できているが、Pへの邪推によってそれが本心かわかっていないのではないか?
彼女はPに理解されることが、癪なのだ。自分はPを理解することが、Pへの複雑な感情が邪魔をして、完全にできていないのに。
・余談
樋口のコミュでは幼馴染以外の第三者が登場することが非常に多い。
オーディションで泣いていたアイドル、街頭のファン、昔のクラスメイト……
彼女の世界(視界)には幼馴染だけではなく、部外者が密接に関わってくる。
それは、彼女が望んでいるわけではないのに。
彼女は無意識に第三者の「気持ち」を気にしている。否、気にしてしまう。
それは人の「気持ち」に敏感だからだろうか。
彼女は他人に容易く笑顔を振りまかないクールな少女に見えるが、その実、他人の存在を認知している。
それは他人と親密な関係を築きたいというよりも、他人が彼女の世界を脅かすことを恐れているのではないかと思う。
実際、彼女がアイドルになった理由は、彼女の世界(幼馴染)に踏み込んできたPを監視するためだった。
彼女は変わることを恐れる。WING共通コミュの「知りたくなかった」という言葉はそれを物語る。彼女は新しいものや関係を「知る」ことに臆病だった。
3.【噤】/沈黙は金
樋口とPは映画を観た。その関係者に感想を言うシーンが特徴的だった。
「言葉で表せないくらい、素晴らしかった」
「最初は主人公をつまらない男だと思っていた」
「ラストシーン、世界が金色に染まったのは……」
「彼の心が世界に溢れ出た表れなのだろうな」
樋口は映画をこのように言う。
私が【ギンコ・ビローバ】で注目している点に「金」と「銀」の比較がある。
True Endのコミュ名「銀」、「銀杏」、そしてイチョウの風景は「金」のように輝いている。
この二文字が使われたことわざに「沈黙は金、雄弁は銀」があるが、これは金が銀よりも高価なことから、「沈黙」はもっと大事という意味になっている。
樋口にとってこのことわざはぴったりだと私は思う。樋口の言葉へのスタンスはこのことわざのようだ。
この映画に出てくる主人公はPのことを示唆しているように思える。
樋口は「金色に染まる=彼の心が表現される」とした。
最後のコミュの話になるが【銀】では、イチョウの並木道をPと樋口が歩く。
その世界は「金色に染まって」いた。
あそこで話すPの想いやPとしての言葉は、Pを表現した全てだったのだろう。
しかし、樋口にとってはそうは思えなかった。彼女はPにただならぬ感情を抱いていた。その感情は彼女の認知を歪ませる。
何故最後のコミュ名が【銀】なのかは、彼女が彼女の心情を言語化してしまったからだと思う。
彼女は独白でありながらも、透明だったPへの感情を表現してしまったのだ。「雄弁は銀」。
しかし、その心は世界に溢れ出ることはない。彼女の中に渦巻いたままだった。
一方で、彼女が言語化し、表現したからこそ、最後のイチョウが舞い散るイラストが出てくるのかもしれないとも思う。
彼女が初めてはっきりと、本心でPへの感情を表現したからこそ、「ラストシーン、世界が金色に染まった」のかもしれない。
この辺りは感覚的な話だから、置いておこう。(そして話が脱線している)
このコミュの選択肢がどれも好きだったのでそれぞれについて感想を述べる。
選択肢・予定より長引いて悪かった
「大切なんでしょ ああいう積み重ねも」と樋口は言う。
【囀】でPがスタッフとの縁を繋ぐためにお菓子作りしていたことを彼女は覚えているのだ。
選択肢・映画、楽しめたようでよかった
「あの映画は一人で観たいものだった」と言う。
彼女にとって、自分の感じたことは大切にしたいのだろう。
もしくは、言葉にすることで、自分の感情が陳腐なものに思えてしまうのだろうか。
選択肢・映画、好きなのか?
Pが「好きだと思えるものを見つけたら教えてほしい」というが、樋口はこのように返す。
彼女は他者と何かを共有することを恐れている。それは、他者が自分を脅かすかもしれないから。自分が大切だと思っているものを突然破壊されてしまうかもしれないから。
樋口にとって幼馴染はそういうものだった。だから、幼馴染の中に入ってきたPを警戒しているのだと思った。
4.【偽】/多面的な人間
樋口が他のアイドルを励ましているところから始まる。
『願いは叶う』『願い続けることが大事』
彼女らしからぬ言葉で、そのアイドルは笑顔になった。
樋口は無理だと思っていても、アイドルに「楽」ではない言葉をかけた。
彼女は優しいと私は思う。そして、物事を多面的に、多角的に見ることのできる人だと思う。
彼女は他人に関心のないフリをしているが、その実、他人への理解が早い。他人の心情、かけてほしい言葉を彼女は素早く理解する。
だからこそ、逆もできる。Pにとげとげしい態度をとり、とげとげしい言葉を言うのは、Pがかけられたくない言葉を理解しているからだ。
彼女の中には、色んな側面がある。彼女が「願いは叶う」と言ったのは、彼女の中にそういった価値観が少なからず存在しているからだと思う。
私もPの言ったように、彼女が嘘をつこうとしているようには思えない。
5.【銀】/ラストシーン、世界が金色に染まる
問題のコミュ。あまりにツイッターで語りすぎて、もう出すものも出ない。
樋口とPは車まで二人でイチョウの並木道を歩く。
樋口はPへの所感を述べる。
「あなたは欠点も愛嬌に変えて、結果『いいひと』『すごいひと』にしか見せないですよね」
「本当に、信用ならない」
そんな樋口に、Pは「プロデューサーでありたい」「頑張るしかない」と言うのだ。
私は実は樋口コミュのシャニPが苦手だ。
面白いとは思うけれど、嫌に好きになれなかった。
それが何故だか、このコミュを読んでわかった。
彼はどこまでも「善人」だった。裏表がなく、美しく、どこまでも前向きで、へこたれない。欠点も愛嬌に変え、失敗も恐れず挑戦する。
「プロデューサー」としてピカイチな存在だった。
私はそんな彼に、嫌気がしていた。そういう人にコンプレックスがあった。
私はどちらかというと樋口に感情移入してしまうタイプの人間だった。
シャニPのことを、私は理解ができなかった。少しくらいズルい考えを持っている人のほうが理解ができた。シャニPの存在への実感がなかった。
私はだから、あの言葉に共感した。
樋口は彼と過ごしてきて、きっと彼が本当に裏表がない「善人」であることを薄々理解しているだろう。
彼女はそれでも邪推してしまう。「何か裏がある」。
彼女もPを信じたい気持ちがどこかで芽生えているのかもしれない。しかし彼女の意地と邪念がそれを簡単にさせない。
彼女はまだ少女だった。そう簡単に割り切れるほど大人ではなかったのだ。
彼女のPへの感情は一言に言い表せないものだ。
前向きに生き、浅倉の隣に突然現れたことへの「嫉妬」なのかもしれないし、誠実さへの「劣等感」なのかもしれない。
しかし、これだけは言える。
シャニPがぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまったその時、彼女はきっと後悔する。
そう願ったことを、後悔する。
なんとなく、そう思った。
〇余談 私の読了当時のふせったーやツイートなど
『シャニPは光、樋口は影』
シャニPは光であり、太陽であり、樋口は影であるという思考はあるだろうなと思った。
人間の性格性質に光と影なんて明確に分類づけてるわけではないだろうけれどシャニPは、誠実で、失敗してもへこたれず、弱みも愛嬌に変えて、前向きに夢なんか語っちゃう。
そんな人を「光」だと思って眩しいと思っている樋口円香はいるんじゃないだろうか。
光は救いにもなるけれど、眩しすぎたら鬱陶しくて仕方ない。
樋口はその光をうざったく思いながらも、どこかで焦がれていて、だからこそ嫉妬してしまう。
自分は「誠実」にはなれない。
薄手のアイドルの衣装を着て「外面」を偽で固めることにも嫌悪している。
それでも、「誠実さ」に惹かれてしまうし、「アイドル」の光を知ってしまった。
樋口は単純にはなれないから、手のひら返しですぐにそれらを掴もうとはできない。
シャニPへのキツイ態度は、「心を許してはならない」という意地ばかりだと思うし、
シャニPが前向きに語る態度を見れば見るほど、その意地は大きく拗れてしまって、
最終的に、「ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのに」と言ってしまう。
「ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのに」っていうのは、自分が引き裂くわけじゃなくて、何らかの障害にぶつかって引き裂かれてしまえ、と思ってるのだろう。
自分と同じように、周囲の環境や思惑にぶつかって引き裂かれろ。
周囲の環境や思惑に揺れ動いている自分と同じように……
『唯一の暴力性』
3つ目のコミュ【偽】でどうしたって他人(弱者)に優しくしてしまう(樋口にとっては「優しくない」)彼女が、唯一暴力的に感情を向ける相手がPっていうのがさ……
彼女は前向きに頑張れて、うまく呼吸もできる(息苦しくない)「できた人間」=強者に、上に立たれてる気分なのかな…
だから引きずり下ろしたいという感情なんだろうか。
素直に愚直に言葉を出せず、「正しく」美しくなれない醜い欠点だらけの自分のようになったらいいのに。
「正しく」美しく整った外面が、ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのに。
それは「妬み」とか「恨み」とか「羨み」とか色んな感情が入り混じった結果の言葉だったんだろうなあ。
一番大きなものは「嫉妬」だろうけれど。
……言葉にしても私の中でうまく整理がついてない。どうしたらいい?
樋口は自分のことを「正しい」と思っていないんだろうか。
「できた人間」にどうしてもなれないから、「正しくない」と思っているんだろうか。
終わりに
彼女は言葉を誰よりも大切にしていた。
そして自分の感情を言葉で表現することを恐れていた。
言葉で言ってしまえば、誰かに伝わってしまうから。
自分の本心を知られてしまうことが、それに対して何かを言われるのが、彼女は恐ろしかった。
しかし、やがて彼女はWING共通コミュの中で、自己表現をする。
今まで堰き止めていた感情があふれ出すかのように。我慢ならずに泣き出してしまうように。
彼女にとって、それは自身の心臓を握られてしまうようなものだった。
だから、念を押す。アイドルとプロデューサー。「気持ち」を共有しても踏みにじられない、信頼できる唯一の関係になれると気づいた彼女は──
これはきっとそこまでの過程の話。
今後、どのように彼女が変化していくのか、見守っていきたいと思う。
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