【薄桃色にこんがらがって】少年少女を捨てられない私たち③【ネタバレ感想/妄想解釈】
※2020年4月よりシャニマスを始めた新参者です。そのためキャラやコミュ解釈等が間違っている可能性があります。初心者の新鮮な感想を認めておく意味でのnoteです。読むのは二回目です。散文、個人の解釈です。
※ネタバレ感想
※かなり長くなりそうなので連載方式にしています。投稿後加筆修正がされる可能性が高いです。
【薄桃色にこんがらがって】少年少女を捨てられない私たち②【ネタバレ感想/妄想解釈】の続きです。
4.【ふたつの夜】/大人じゃないんだってば
はづきと千雪の二人が居酒屋にいるところから始まる。
話題はもちろん、『アプリコット』のオーディション。
私はこの二人のプライベートの空気感が好きだ。はづきが仕事抜きで千雪の相談に乗っている優しさが垣間見えるし、千雪もまたはづきを信頼していることが容易に見て取れるから。
Pは千雪がオーディションに受けることを反対しているようだ。
それはそうだろう。このオーディションは出来レなのだから。たとえ千雪がオーディションを受けたところで、落ちること……つまり、千雪の想いが砕かれることが目に見えているのだから。Pとしても千雪のメンタルを心配しなくてはならない。
一方、甜花は夜、Pに自分が立ち聞きしてしまった「出来レ」の真相を確かめにいく。
このシーン、千雪の「告白」と甜花の「真実を既に知っている告白」が交互に描写されている。それは千雪が今のままオーディションを受けたところで、受かるわけはない、彼女の想いは果たされないことを強く印象付けているようだ。
「……やっぱり私、ヘンだよね……」
「…………嫉妬、だと思うの 自分でも……驚いちゃうけど」
千雪が「嫉妬」という感情を表に出すのは、意外だった。それに、嫉妬の対象が彼女の大好きなユニットのメンバーに向けてなのも。
「嫉妬」は、何か大きく求めているものがあるから生まれる感情だと私は思っている。自分にはない「何か」を求めて、その「何か」を持っている人が羨ましくて、自分には何故ないのかとかなしみ、あるいは怒り、他人に妬ましい思いを向けてしまうのだ。
彼女の大人な部分は、その感情を「嫉妬」だと認めていること。しかし、嫉妬は少し大人らしくない感情だとも私は思っている。大人として割り切ることができないから生まれるものだと。今の彼女は「大人」と「少女」でちぐはぐな状態だ。
「それね、本当に大好きな雑誌だったの 中学の頃、図書館でバックナンバーを見つけて──」
「雑貨に夢中になったのだって あの世界できらきらしてた小物の影響なんだよね」
優しく話す彼女は、昔を懐かしんでいるのだろうか。
彼女にとって「雑貨」は人生の中で大きな存在だろう。彼女がアイドルになる前、雑貨屋の店員をしていたのは成り行きではなく、彼女自身が好きで選んだことなのだろうから。彼女はアイドルに出会うまでは「雑貨」が好きなだけの少女だったのだ。今はアイドルを選んだとしても、その感情が消えることはない。彼女は未だ、雑貨が好きで、昔の少女性を捨てきれてはいないのだ。
捨てることが成長することかと言われたらそうではない。彼女は雑貨屋だったことを生かして、アイドル衣装の小物を作ったりしているし、その経験は確かに生きている。しかし、彼女の場合、雑貨好きになった影響を受けた『アプリコット』は彼女の未練となっているのだ。
好きだった雑誌、いつの日か読めなくなった雑誌、そして今復刊しようとしている雑誌。そしてその憧れや未練に手が届きそうな今。
それは彼女の少女時代を呼び起こすには不思議でもないことだった。
「復刊するって聞いてから」
「なんか、昔しまった大事な宝物が もう一回見つかったみたいな気持ちになっちゃって……」
「でも、見つかったとたんに 自分のものじゃなくなったみたいな……」
「おかしいよね、初めから自分のものなんかじゃないのに」
この気持ち、オタク文化を好む人なら理解できる人、共感できる人は多いのではないだろうか。私も共感できるオタクの一人だ。
例えば昔好きだったゲームのリメイクだとか、アニメのリメイクだとか。昔好きだったもの、それが復活する。それは嬉しいことだ。だけれど、改変をされていたり、好きだったものが変わってしまっていたとき。その時私は「このコンテンツは自分に向けられていたものじゃなかったんだ」と落胆する。
しかし、落胆するのもおかしいな話なのだ。それが、千雪の言う、「初めから自分のものなんかじゃないのに」に全てが込められている。そして、次の言葉を聞いたとき、私は胸が締め付けられた。
「────なんで…… 甘奈ちゃんなんだろうって」
好きな想いも、知識も、好きなものに関しては負けないはずなのに、どうして自分じゃなく、他人に「好き」が奪われてしまったのだろう。どうして、自分の「好き」は報われないのだろうって。
そんな想いをはねのけるように、Pと甜花の会話が挟まる。甘奈がグランプリに決まっていること。それは、今千雪が想いを募らせ、紡ぐ言葉が多ければ多いほど、強く鋭く突きさす事実だ。それを知らない千雪は、想いを募らせていく。
しかし、千雪は一方で大人な回答も持っていた。
「私はただ好きってだけで、私があの世界を素敵にできるわけじゃない……」
「新しい『アプリコットガール』が甘奈ちゃんだったら 私、絶対ときめくもん──」
「……ふふっ、もうどっちなの~」
「……っ どっちもほんとなのー……っ」
彼女が迷っているのは「大人」としての自分も「少女」としての自分もいるからだ。それはどちらも本当の気持ち。それは間違いではない。
だからこそ、彼女はどちらの想いも振り切れずに、迷っているのだ。
自分がオーディションを受けるのは自己満足、と言うが、それにはづきは付け加える。
『嫉妬のせいで甘奈ちゃんに迷惑かけちゃうくらいなら自分もエントリーして、堂々と戦うことで応援したい』
千雪の想いは友人であるはづきには見えていたのだ。だからこそ彼女は第三者的な立ち位置で、あるいは千雪の友人として、応援する。
しかし、千雪は自分の想いを清算するために甘奈の力を借りるのだと言う。
『3人で、アルストロメリア』であることを呟く。
それを聞いたはづきは言うのだ。
「……頑張れ、アルストロメリア」
はづきもこれが千雪だけでの問題ではないことを理解した。この困難を乗り越えるには三人がいなければならないのだとわかっているのだろう。
「はぁ……私の方がお姉さんなのに」
「全然……大人じゃないよね……」
千雪は自分がアルストロメリア内で大人でなければならないという使命感が少なからずある。それは人間として普通のことで、年下の二人を可愛がりたいという気持ち、護りたいという気持ちは彼女の中にあることは今までのコミュからしても明確だ。しかし、今は自分の大人じゃない気持ちでみんなを振り回してしまっている。彼女はそれに罪悪感を感じている。
そんな時、ゆっくりと、はづきは言うのだ。
「……だから」
「大人じゃないんだってば」
「大人じゃないんだってば、私たち~」
この言葉を聞いてしまったとき、私は泣いてしまった。私も、大人でなければならないという気持ちがあった。一方で子どものように公園で駆け回りたいし、子どものように好きなものを好きと言いたい、我儘を言いたい気持ちもあった。その二つともを叶えることは難しい。社会が、世界がそれを許してくれないと思っていた。
しかし、はづきは私たちの「少女」を許容したのだ。自分達の中の「少女」を認めたのだ。成人をしたら大人でなければならない世界で、ただ一つ、その一言だけが、私にとって柔らかく見えた。好きは、好きでいていいんだと言われたような気がした。
以下、初見の反応。
私たちは「大人じゃない」んだ。
途中遮った、Pと甜花の会話で印象的なところを抜粋する。
「勝負が決まっているなら 千雪はいったい、何と戦うことになるんだ……?」
このコミュの主題の一つがこれだろう。千雪が目指している先は暗闇だと分かっている。暗闇の中で何の光も見つけられなかったら、彼女はどうするのか。これからどんな展開になるのか全くわからない作りになっていて、シナリオとしても面白いと思った。
5.【こわい】/関係性の崩壊
甘奈が「千雪が大崎宅へ行き、告白した」シーンを思い返すところからはじまる。
甘奈は千雪の『アプリコット』への想いを嫌でも思い出す。私は甘奈が共感性が高い人物だと思っている。具体的に理由はあげられないが、彼女はただの明るいだけで何も考えていない人間ではないし、周りのことを気遣うことのできる、優しい人物だと思っている。
だから彼女は思うのだ。
「なんで甘奈がシードなのかな……」
「千雪さんが……シードにならなきゃ、おかしいよね」
彼女は千雪の大きな想いが報われるべきだと思っている。それは彼女がまだ「大人」ではないから。「好き」は報われるべきものだと、信じているから。だからこそ、彼女は何故自分がシードなのか疑問に思っている。
しかし、それよりも彼女にとって大きな感情は「恐怖」だ。甘奈は今の関係が、「今」が崩れることを誰よりも恐れている。今の心地よい関係が甘奈にとっての幸せ。その幸せが少しでも変貌したなら……それはもう、幸せに感じられなくなってしまうのではないか? 甘奈はそれを甜花との関係でも思っていた。今回はアルストロメリア。『3人で、アルストロメリア』が合言葉のユニットが崩壊してしまうことを彼女は恐れているのだ。
「……『頑張らなくちゃ』って言ったのはほんとは……反対……」
彼女は自分が頑張ることで、千雪の幸せが、好きが壊れてしまうのが、嫌なのだ。そして、3人でいられなくなることが、何よりも怖いのだ。
ここで過去のコミュを回想するのも、すごくつらい。彼女たちがアルストロメリアの思い出を大事に宝物のように持ち続けていることが容易に想像がつくから。
全てを知っている甜花は言う。「心配だったら出なくてもいい」「出るなら、全力出さなきゃ」彼女にもどちらの想いもある。どちらも本当の想いなのだ。甘奈に気に病んでほしくない、それなら逃げていいよという優しさと、Pが言っていたように二人で全力で勝負してほしいという想い。
それを聞いて甘奈は弱音を吐く。
「全力だから……──」
「負けた時が、怖いよ…………」
人と人の想いが全力でぶつかった時、どちらかの想いが壊れてしまう。どちらかが悲しんでしまう。それを甘奈は誰よりもわかっているから、怯えている。
Pは編集長へ直談判をする。しかし業界はそこまで甘くない。Pの想いだけで動くことはない。商業的な成功を見込まれているのは、甘奈ただ一人なのだから。
「勝負するかしないか、俺たち次第ってことか」
そう結局は、アルストロメリアの想いのために、勝負をするかしないか。ただそれだけなのだ。
しかし、甘奈はオーディションの辞退を宣言する。
少年少女を捨てられない私たち④へ続く
余談
千雪の想いが叶ってほしいと願う気持ちはきっとみんなある。それでもそれが叶わない世界なんだ。現実には、敵わない。想いは、叶わない。
ただ、彼女たちだけがこんがらがっている。敵わないとわかっている世界で足掻こうとするから。でも私はそんな彼女たちが大好きだ。人間は最善の行動をとれない生き物だ。感情に眩んで正解を選べない生き物だ。だからこそ、私たちはお互いを想い合い、生きていられる。私の中の少女はそう信じている。
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