ポケモンセンターのお姉さんに、毒の牙で噛まれた思い出。
私が小学生の頃。
電車で行ける距離にあったポケモンセンターフクオカに、月2回ペースで通っていました。
その目当てはお姉さん・・・ではなく、ポケモンカードの対戦相手。
当時、ポケモンセンターでは定期的に、カードゲームの対戦会が開かれていたのです。
今でこそポケモンカードには爆発的な人気がありますが、その頃はどちらかと言えば「ゲーム本編に次ぐ」レベルの位置づけだった印象があります。
ところが私は、タイプ相性を覚えられなかったから気軽に遊べるポケモンカードの方ばかり遊んでいるという、珍しい種類のポケモンファンでした。
プレイヤーもちびっ子ばかりで、小学校高学年の私がイベント参加者最年長ということもザラ。
年の功もあって、ほとんど負け知らずの日々を送っていました。
そんなある日のことです。「ポケモンセンターのスタッフと対戦できる」というイベントが開かれたのは。
私がそのイベントの開催を知ったのは、べつの用事で博多駅(駅ビルにポケモンセンターがある)を訪れていた時。ゆえに、自分のカードデッキは家に置いたままでした。
それでも、なかなか無い機会なので参加を決断。デッキはポケモンセンターで用意されているモノをレンタルしました。
対戦テーブルの向かい側に座っているのは、いつも対戦会のデッキ確認でお世話になっているスタッフのお姉さん。
はじめての年上との対戦に緊張が高まります。
プロフェッショナルらしく、カードを扱う段取りも今までの対戦相手とは別格。
カードを使う宣言の声もクリア。何より、常にスマイルを絶やしません。
・・・直後、私は知ることになるのです。
ポケモンセンターのお姉さんのスマイルには、じわじわと効く毒の牙が隠されていたということを。
そのポケモンの名は、クロバット。
当時、ほとんどの人が「ポケモンEX」という強力なカードを使っていたのに対し、彼女は進化カードを軸にした、泥臭い戦法の使い手でした。
強さの秘密は、わざ「げきどくのキバ」。
通常は「10」であるどくダメージを「40」にするという効果があります。
さらにさらに、ポケセンのお姉さんは「どくの効き目が4倍」では飽き足らず、こんな仕掛けまで使ってきました。
これは、どくの効果が20アップするというもので、クロバットの能力と合わせれば「60」のダメージ。
ポケモンカードでは、自ターンの後と相手ターンの後の両方でダメージが発生するため、1回の攻防につき120ダメージを受ける、ということになります。
100ダメージ以上の攻撃にリスクが付いていることも多かった当時、この威力は破格です。私は完全に毒されてしまいました。
・・・そして、今にして思うと、これが私のポケモン人生のはじまりでした。
ポケモンが教えてくれること。
カードでもゲーム本編でも、ポケモンには番狂わせがつきものです。
2014年のポケモン世界大会では、パチリスが名だたる強豪ポケモンを抑える大活躍を果たし、このポケモンを採用したセジュン氏を優勝に導きました。
2017年には、公式がレベル10のホルビーでレベル70のミュウツーを圧倒する動画をアップし、ポケモンの奥深さをアピールしました。
ポケモンが私に教えてくれるのは、「力のあるものが勝つとは限らない」ということ。
それはポケモンに限らず、あらゆる勝負ごとの醍醐味です。
同時に、どんなに見込みのない勝負でも、決して諦めてはならない最大の理由でもあります。
もしポケモンと出会っていなければ。
いや、もしあの日ポケモンセンターのお姉さんに噛まれていなければ、根性にだけは自信のある今の私はいなかったかもしれません。
そんな私が後にドクロッグEXというカードに出会い、どく戦術を丸パクリするようになったのは、また別のお話です。
いつかリベンジしに行きたいなあ。