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鵜飼い大橋はなぜ吊り橋なのか? @ ふらっとインフラ#1

株式会社2ndStarのインフラマニア、オワDです。
最近インフラ見てますか?
本日から連載します「ふらっとインフラ」では、インフラマニアの私オワDが日本全国のいろいろなインフラを訪れて、取材させていただき、このnoteで取り上げさせていただく企画でございます。
全国のインフラオタクの皆様、この企画を通してインフラの魅力をより感じていただき、日本の土木をもっと盛り上げていけたらと考えておりますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

さて、記念すべき初回に取り上げさせていただくインフラは、岐阜県岐阜市、長良川に掛かる「鵜飼い大橋」でございます。
この橋、非常に特殊な形をしておりまして、私も設計者の方々からお話をいただくまで、気にも留めていなかった内容に非常に面白く感じまして、これはふらっとインフラで取り上げたいと思い、初回を飾ることになりました。
拙い文章ではございますが、少しずつレベルが上がっていく私の文章も一つの趣として捉えていただければと思います。
それではみなさん、魅力あるインフラの世界へ、行ってらっしゃい

なぜ吊り橋?

さて、鵜飼い大橋の写真をご覧いただいた皆さんは、この橋の違和感にお気づきになられたでしょうか。
鵜飼い大橋の構造は非常に面白く、私のような土木マニアにとっては最高の構造物です。
まずは、鵜飼い大橋の特徴について説明させてください。

鵜飼い大橋を設計したのは、岐阜が誇る総合建設コンサルタントの大日コンサルタントさん(株)ですが、そのホームページには以下のような概要説明が記載されています。

岐阜環状線の内、一級河川長良川に架かる鵜飼い大橋(橋長469m、鋼6径間連続箱桁橋(RC床版)+鋼単径間斜張橋(鋼床版))の詳細設計である。流水部の上部工形式は、鵜舟の通行を妨げない、風景との調和、後世に残せる橋などの基本コンセプトに合致する、主塔から斜めに張ったケーブルでスパン154mの橋桁を支える単径間斜張橋を採用した。75°に傾けた主塔から3方向に伸びるケーブルは「手繰り糸で鵜匠が鵜を操る様子」をイメージしている。

大日コンサルタントHP 実績紹介 鵜飼い大橋詳細設計

岐阜環状線とは、岐阜市内を一周するように通っている県道77号で、長良からこの鵜飼い大橋を通り抜けると国道21号に合流します。この道路は岐阜市内をはじめとする県内の移動をより強化する、すなわち、移動による活力と安心安全な暮らしの実現を求めた道路にもなっています。

そんな環状線を長良川上に通す鵜飼い大橋には、建設する上で考慮しなければならない地理的条件がいくつもありました。
今回はそれをいくつか紹介させていただきます!

長良川という清流

まずは、やはり岐阜県が誇る清流長良川でしょう。
長良川は郡上市の方から美濃や関を通り、岐阜市に流れ、西濃を目指し海津へと流れていく、国管理の一級河川です。
長良川については、そのうち取り上げさせていただこうとは思っているのですが、鵜飼い大橋を知るために、河川と運搬される土砂について、ここで解説させてください。

河川というのは源流から始まり、途中様々な支流と合流しながら河口を目指していきます。日本には河川が3万河川以上あるのですが、その話はまた別の機会でさせていただきます。
長良川もその河川の一つではありますが、河川というのは山間地を流れている間、大体谷間を進みますからその流速は早く、川幅は細いです。また、山間地は地形によってまちまちですから色々な流れ方をします。
そして、水の性質としてポテンシャルの低い、すなわちこの場合、位置エネルギーの低い方へと流れていきますから、山から海へと流れるわけです。
現代の河川の多くは山間地を抜けると平野に出ますから、小学校でも習う運搬と堆積がここでその機能を発揮します。山間地から運搬された土砂は開けた平野に出た習慣散りばめられて、堆積していきます。
そうしてできるのが扇状地です。
扇状地に関してはまた面白い深い話があるのですが、それもまた後ほど。
扇状地を抜けた河川は非常にクネクネとした蛇行原(氾濫原)と呼ばれる状態へ移ります。関東平野でも荒川なんていうのは非常にクネクネしてたりしますよね。
長良川はまさしく岐阜市のあたりでそのフェーズに入ります。

河川工学

このフェーズの川は主に運搬を続けます。
ここで、河床形態について注目します。
中規模河床形態として、交互砂州と複列砂州がありますが、鵜飼い大橋がちょうどある長良川では、交互砂州の形になっており、砂が交互に堆積している様子が写真からもわかります。
この交互砂州というのがポイントで、右岸側に砂の陸地があり、左岸側を水が流れています。
こうなっている状態では、少し水深が深くなり、断面積が小さくなる分流速が上がります。そのため、ここは藻や苔が育ちやすく、川魚の餌が溜まりやすいのです。

こうして、ここは鵜飼のポイントになるわけです。

岐阜の伝統 鵜飼との相性

さて、金華山麓の長良川の特徴について抑えたところで、この鵜飼が鵜飼い大橋の構造を決めるポイントになります。

右岸側から伸びる橋は、鋼6径間分の橋脚が並んでいます。すなわちこの橋は途中までは普通に桁だけの橋なのです。
そんなことは見りゃあわかるよと思われるでしょうが、これがなぜ川の中にも橋脚を立てなかったのか。
それがまさしく鵜飼いと関係があります。

長良川の鵜飼は、岐阜が誇る夏の風物詩であり、その歴史は1300年以上にも遡ります。
現在ユネスコ無形文化遺産への登録を目指すこの伝統文化は、長良川がなければ成立しません。
長良川の特徴と相まってこそ、鵜飼ができます。
もっと具体的なことを話すと、川の流れが変わってはいけないということです。

交互砂州というのは、片方の川幅が非常に狭くなり、水深が深くなります。
そんな断面積が減少している場所に橋脚を立てたら、今までの流れが大きく崩れてしまい、治水的にももちろんですが、生態系への影響も少なくありません。
また、単純に鵜舟の通行も妨げますよね。
そのため、橋脚を立てないという選択肢を取ることになったのです。

ただデザインだけを意識して作ったような橋に見られがちですが、実はこういう文化と地学を考慮した構造設計になっているわけですね。
鵜飼を配慮したポイントは他にもありまして、夜に鵜飼い大橋を通ると少しオレンジ色にライトアップされているのをご存知でしょうか?
そうだったっけ?という方は、ぜひ確認を兼ねて通っていただきたいのですが、実は街灯がありません。
主塔の上の方は白く光っておりますが、道路の方は明日もとで淡く光っているだけです。
これも下を流れる川と鵜飼に配慮した設計なのです。

斜張橋と箱桁の鋼橋のハイブリッドとなった鵜飼い大橋。
それでは、最後の謎、なぜ主塔が斜めになっているのかについて見ていきましょう。

金華山と景観

タイトルにもある通りですが、金華山をバックにした時に、まっすぐと主塔が伸びていると景観が悪いというのが理由です。
金華山のその頂には、岐阜城があり、城下とあわせた時の美しさはなかなかのものです。
しかし、そんな金華山にまっすぐと伸びる主塔が被ったらどうでしょうか。
ちょっとした違和感を感じて、気持ち悪さがあるでしょう。
土木インフラを建設する際には、景観を意識したデザインが非常に強く求められます。
そのため、この鵜飼い大橋にもその条件が求められました。

その結果、金華山の斜面とマッチした斜めデザインが取られたのです。

長良には有名な旅館やホテルも多いですから、ぜひ鵜飼いとセットに鵜飼い大橋を堪能する旅に来ていただければと思います。

以上が長良川にかかる鵜飼い大橋でしたが、いかがだったでしょうか。
鵜飼い大橋に関するもっと面白い話が聞きたい方はぜひ、フォローしていいねをいただければと思います。
この投稿の人気具合では、鵜飼い大橋でまた企画をさせていただくことになるかもしれません。

次回の投稿は10月19日(土)になります。
テーマは「木曽川水系を辿れ!!」です。
お楽しみに!

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