見出し画像

燕が翔んだ日。

約2ヶ月ぶりに書く記事が、まさかこのような悲しい記事になるとは。

2ヶ月半に及ぶ実家生活のあれこれも、血液検査で重度の貧血が判明し、「生きていることが奇跡」と言われたことも、佐々木朗希のドジャース入団会見のことも、途中で書きかけては放置してしまっていた。

しかし、このことについては絶対に書き切りたい、投稿したいと思った。


2月19日、燕が翔び立った。


唯一無二、唯一無双の存在だった。

スワローズファンでなくとも、野球ファンは全員好きだったのではないか?と思う。
プロ野球ファンでなくとも、「つば九郎」という名前を聞いたことはあるかもしれないし、その姿をメディアなりグッズなりで目にしたこともあるかもしれない。

日本プロ野球「球団公式マスコット」のパイオニアであり、常にそのトップを走り続けていた。


風刺のきいたひらがなで書くフリップは絶妙だった。

契約更改では、ファンを招いてイベントも行われた。昨年の契約更改は中日の「耳の大きな広報」ことドアラも登場した。
「今日の朝食はパンですか?米ですか?」というドアラの質問に、「うちのきゅうだんは こめOK」と仲良しのドアラに言い放ち書き放ち、米騒動を盛大にイジった。

ブラックすぎるユーモアなのに誰も傷つけず、ギリセーフのラインを越えることはなかった。

愛らしい表情で、Tシャツバズーカの銃口を妹のつばみや、他の球団マスコットに向けることも多々あった。

敵チームのチアやパフォーマーに自チームのTシャツを着せようとすることもあった(しかもパフォーマンス中)。

球団関係者やスタッフに留まらず、ファンにもつば九郎の魔の手は及び、小学生や中学生に膝蹴りを喰らわせることもあった。

それらの蛮行(?)が重なり、燕なのに「畜ペン」(畜生ペンギン)と呼ばれるようになった。


記憶に新しいのは、2024年のオールスターゲームで、試合終了後にジャイアンツの丸選手と語り込んでいる姿だ。
まるで久しぶりに会った同僚と居酒屋で語り込んでいるような姿が、マスコットを飛び越えてただのオッサンで、かわいらしい姿とのギャップに笑ってしまった。

「空中くるりんぱ」という、よく考えるとまあまあくだらない芸を、成功するように毎回祈ってしまったのは私だけではないだろう。


神宮球場に行けばいつも会える存在だった。そこに居ることが、当たり前だと思っていた。

今年の交流戦はZOZOマリンスタジアムにスワローズを迎えて戦うことになっていた。

週末に組まれているカード、あわよくばZOZOマリンでつば九郎の姿を拝めるかもしれないと勝手に思っていた。

ズーちゃんに膝蹴りでも喰らわせて畜ペンぶりを肉眼で見れるかもしれないと思っていた。


いつもスワローズとともに、野球とともにいる、当たり前の存在だった。


しかし、燕にも翔ぶ時がきた。
高く高く、私たちの手が届かない場所まで。


彼がいつも居た場所に、彼はもういない。

スワローズファンは、シーズンが始まり、ビルに囲まれた神宮球場で、いつものその風景の中につば九郎がいないことで、彼が翔びたったことを改めて実感するかもしれない。
そして、心にぽっかり穴が空いたような気分にもなるかもしれない。
まさに今の私のように。



2022年のつば九郎デーに向けて、球団の広報で使われた写真が大好きだ。

「わたりどりだけど わたらない。このばしょが すきだから」
東京ヤクルトスワローズ球団公式HP


この場所から翔び立つ日がきてしまった。

空の上でのパトロール、存分に楽しんで欲しい。


2025年2月23日(日・祝)  つば(23)九郎の日に

さつき



【あとがき】
佐々木朗希のドジャース入団でも入籍報道でも記事を途中まで書いて放置していたロッテファンの私に、最後まで書き切らせたつば九郎はやはりすごい。
東京ヤクルトスワローズの球団公式ホームページには、2月21日付で、つば九郎グッズの注文が急増している旨のお知らせが出ていた。
何を隠そう、私もつば九郎グッズを購入しようとしていた一人。皆、考えることは同じなのだ。
改めて、つば九郎担当者さまのご冥福をお祈りします。



#つば九郎 #スワローズ #ヤクルト #東京ヤクルトスワローズ
#プロ野球 #マスコット #NPB

いいなと思ったら応援しよう!