仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法 内田和成の思考【Yuの本棚⑧】
大学院で修士論文を執筆するにあたり、「良い仮説とは何か」に関して考える中で手に取った名著「仮説思考」に関して、読書メモを残します。
「仮説思考」とは何か?
『仮説思考』は、BCG(ボストン コンサルティング グループ)で20年の経験を積んだ内田和成氏が、ビジネスパーソンにとって必須の「仮説思考」を解説する書籍です。この思考法は、仕事の質やスピード、そして意思決定の精度を大幅に向上させるものです。仮説思考は、物事を答えから逆算して考えることを基本としており、迅速かつ的確に問題発見と解決策の提示を行うためのアプローチです。問題を見極め、最適解を効率的に導くための手法として、ビジネスパーソンに欠かせない思考法です。
仮説思考の本質:最初に答えを見つける
仮説思考は、課題を分析する前にまず「仮の答え」を見つけ出す点が特徴です。従来の「まずデータ収集を行い、その後分析して結論を出す」といったアプローチとは異なり、仮説思考ではまず自分なりの仮説(仮の答え)を設定し、それをデータで検証するのです。このプロセスにより、情報収集が効率化され、無駄な分析を回避できます。さらに、仮説に基づいた検証により、早い段階で修正や方向転換が可能になるため、問題解決がスピーディに進むのです。
良い仮説を立てる方法
良い仮説を立てるための方法として、本書では「ゼロベース思考」が推奨されています。ゼロベース思考とは、既存の枠組みにとらわれず、白紙の状態から考える手法です。例えば、顧客からのクレーム対応の効率化を求められた場合、単に人員削減を考えるのではなく、クレームの発生要因そのものに着目し、品質管理やマニュアル改善といった根本的な解決策を模索します。このように、既存の制約や慣習にとらわれずに考えることで、斬新な仮説と具体的な解決策が生まれるのです。
仮説思考を支える3つの要素:先見性、決断力、実行力
内田氏は、ビジネスパーソンに必要な能力として「先見性」「決断力」「実行力」を挙げています。先見性とは、現時点で得られる限られた情報から将来を予測する力です。この先見性を持つことが、リーダーにとって不可欠な資質となります。次に、決断力です。どれほど優れた仮説を立てても、最後にリーダー自身が意思決定を下さなければ意味がありません。そして最後に、組織を動かす実行力が重要です。決断を実行に移せなければ、企業として前進することはできません。この3つの要素が揃うことで、仮説思考はビジネスでの成果に直結するのです。
仮説の検証と軌道修正
仮説思考では、仮説を立てたら迅速に検証を開始します。必要な証拠だけを集めることで、情報の洪水に溺れることを避けられるのです。また、検証の段階で仮説が誤りであると判明した場合も、速やかに軌道修正することで、新たな仮説に基づいた解決策を練り直すことが可能です。こうしたプロセスを繰り返すことで、問題解決の精度とスピードが向上します。特に、サイクルタイムを短くし、単位時間内に多くの実験を行うことで、仮説が進化していきます。このように仮説を「作っては壊し、進化させる」ことが、仮説思考のポイントです。
仮説思考を実践するための「構造化」と「ストーリー」
良い仮説を立てるためには、全体のストーリーを構造化することも重要です。内田氏は、いきなり細部から検討を始めるのではなく、大まかなシナリオを作り、全体像を把握した上で、仮説に必要な要素を一つずつ具体化していくアプローチを推奨しています。こうすることで、解決策が全体的な視点から導き出され、見通しの良いプロセスが形成されるのです。これにより、実際のビジネスで実行可能な解決策を導くことが可能となります。
失敗を恐れず、仮説を進化させる
内田氏は、仮説思考の実践において「失敗を恐れないこと」の重要性を強調しています。仮説が誤っていたとしても、それを繰り返し改善し続けることで、思考の精度が高まり、より迅速に正しい解答に到達できるようになります。仮説を検証し、間違っていれば修正し、さらに次の仮説へと進化させるこのプロセスこそが、ビジネスでの「知的タフネス」を養うとしています。
仮説思考のメリット:作業スピードと質の向上
仮説思考の大きなメリットは、作業のスピードと質の両方が向上することです。網羅的な分析を重視する場合、単に作業が速くなるだけですが、仮説思考を重ねることで、問題解決に至るスピードとその質が大幅に上がると内田氏は述べています。仕事を始める前に仮説を立てることで、自分が取り組むべき内容の全体像が掴め、場合によっては作業の順番や一部の工程を省略することも可能になります。
仮説思考で成果を最大化する
最後に、内田氏は「ビジネスで重要なのは、どれだけ多く働くかではなく、どれだけ良い答えを短期間で出し、速やかに実行するかである」と述べています。仮説思考を通じて、問題に対する具体的かつ迅速な解決策を導き出すことで、ビジネスパーソンとしての価値を最大化することができるのです。このような仮説思考は、現代のビジネス環境において求められるスキルであり、意思決定や課題解決の精度を高め、業務の効率を飛躍的に向上させるでしょう。