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マッキンゼー流 プレゼンテーションの技術【Yuの本棚⑪】
少々古い本ですが、人を動かす技術としてのプレゼンを説かれた「マッキンゼー流 プレゼンテーションの技術」を読了したので、以下に読書メモを残します。
米国マッキンゼーのエキスパートが解説する「提案・説得の技術」
本書で解説されているものは【人を動かす技術】。
「美しいプレゼン資料の作り方」「流暢な話し方」ではない。
プレゼンテーションの究極的な目的は「提案を行ない、聞き手に提案を実行するように説得する」ことである以上、「美しさ」や「流暢さ」はあくまで『おまけ』である。
本書はこうした考えのもと、「いかにプレゼンテーション全体をプロデュースするか」「提案をいかに実行してもらうか」という視点から執筆されている。
0章 聞き手のための権利宣言
プレゼンテーションは、聞き手のためにある。聞き手には以下の権利がある。
目的を知る権利
自分に何を行なってほしいのか、なぜ関与が必要なのかを知る権利
聞く時間に見合う価値を受け取る権利
尊敬される権利
知的な内容に貢献し、成果を受け取る権利
瞬時の決断を求められず、考える時間を持つ権利
経験・知性・知識に敬意を払った話し方をされる権利
質問に正直に答えてもらう権利
不満があれば退出する権利
タイミングの権利
所要時間を事前に知らされる権利
時間通りに進行・終了してもらう権利
休憩時間を確保してもらう権利
内容に関する権利
プレゼンの方向性を事前に知らされる権利
論理を支える事実を知る権利
重要情報を先に知る権利
資料の権利
どの席からでも読める資料を受け取る権利
複雑な資料の説明を受ける権利
フレキシビリティの権利
ディスカッションのために中断し、共通理解を深める権利
いつでも質問し、即答を受ける権利
プレゼン実施に当たっての権利
後方席でも話を聞ける権利
不必要な身振り手振りで気を散らされない権利
プレゼンターの顔を見られる権利
適切なユーモアを楽しむ権利
エンディングの権利
同意に達した事柄や次のステップを明示してもらう権利
何か意義あることを成し遂げた実感を得る権利
第1章 状況を明確にする
なぜプレゼンテーションを行うのか
プレゼンテーションの目的は、聞き手に何か行動を起こしてもらうことである。
テーマとなっているプロジェクトの成功のためには、聞き手に対して「あなたの存在が欠かせない」と感じさせる必要がある。
そのためにも、プレゼンテーションの結果として「聞き手に何を行なってもらいたいか、考えてもらえたいか」を短い文章で言語化しておくのが良い。
また、自身を聞き手視点の思考へ変換する必要がある。
具体的には、「聞き手に何を見せたいか」ではなく、「目的達成のために聞き手が何を見て聞く必要があるのか」という思考に変わることが求められる。
説得したい相手は誰か
プレゼンターが達成したいことにYESとNOを言える意思決定者は誰か?を理解しておく必要がある。
プレゼンテーションはそれらの人々のニーズに合うように練り上げるものである。
また、聞き手の知性を過小評価も過大評価もしてはいけない。
理解度を揃える上で、事前の参考資料配布や、馴染みのないテーマにディスカッションタイムを取るなどの対応が求められる。
持ち時間はどれだけあるか
プレゼンテーションにおいては、持ち時間を理解し、短い時間でメッセージを端的に伝える必要がある。
時間を短縮するには5つのコツがある。
現実的な目的を設定
大目的との差分は次回のプレゼンやフォローアップで補う。
事前資料を配布
当日は要点に集中し、詳細は事前に共有。
補足情報を整理
重要な部分と追加情報を分ける。
アペンディクスを活用
詳細や基礎情報は別途準備し、プレゼンでは簡潔に。
優先順位を設定
必須事項と省略可能な内容を明確に分ける。
第2章 プレゼンテーションを設計する
メッセージを決定する
シンプルなメッセージを作るうえでは、以下二つの組み合わせで語るのが良い。
①what is so?=何がどうなのか、事実関係
②So what?=だから何が言いたいのか、そこから何が言えるのか
例)アメリカは世界最大の経済大国であるため、弊社として事業を展開するべきである。
ストーリーラインを設計する
以下の構成が基本的な型である。
提言→提言を導いた複数の結論→結論を裏付ける根拠
オープニングを書く
PIPの法則を抑えることで、聞き手の注意に火をつけることが出来る。
Purpose:
私たちがここに集まっているのはなぜか、
なぜ私はプレゼンテーションを行なっているのか、
プレゼンテーションを終えてうまくいったと言えるのはどのような状況か
Importance :
私たちが目的を達成することの重要性はなにか、
私たちが直面している問題に対するこのプレゼンテーションの重要性はどのくらいか
Preview:
そのプレゼンテーションの構成と、これから共有する時間の中で何が期待できるのか、(鳥瞰図は?)
上記構成の例を以下に述べる。
P(目的)
「本日の私の目的は、あなたがプレゼンテーションを行なう際に湧き起こる不安を克服するための実行可能な提案の一覧表をお見せすることです」
I(重要性)
「あなたは来週地域住民の会議で自分の提案をプレゼンテーションすることになっているので、これはちょうどよい機会です」
P(予告)
「これからともにする1時間で私たちは、プレゼンテーションを成功させるためのプランづくり、設計、実行の手段についてお話しします。
エンディングの計画を立てる
プレゼンテーションのエンディング計画を立てる上で、ポイントは5つある。
①結論や議論の争点など、プレゼンテーションで明らかにしたい重要事項を要約する
②プレゼンテーションの主たるメッセージとして述べた事柄である提言をもう一度繰り返す
③提言を実行するためのアクションプログラム(実行計画)を示す
④提言が実行されることへの賛同を確認しコミットメントを求める
⑤次回までにすべきことを明確にしてプレゼンテーションを終了する
資料を活用する
効果的なテキストビジュアルのコツとしては、以下の2点が挙げられる。
①「言うべきこと」と「見せるべきこと」を区別する
②「つまり」「例えば」などの説明語句は削除する
第3章 プレゼンテーションを実施する
優れたプレゼンターの条件
自信・確信・熱意を持った優れたプレゼンターになるための条件としては以下が挙げられる。
①プレゼンテーションの目的を明確に認識している。
②聞き手をよく理解し、誰に対して話しかけているのかを意識している
③自分の作成した資料に精通しており、裏づけとなる事実を用意している
④自分自身が何を知っており、何を知らないのかが分かっている
⑤提言の内容に対して確信を持っている
⑥エネルギーと熱意を持って話す
聞き手のリード
資料を解説をするときには聞き手をリードすることが求められる。
新たな資料(スライド)を聞き手に提示するたびに、次のことに注意する必要がある。
POINT 1 構成要素についての解説をする
「左側に縦のスケール、下側に横のスケールをとっています………………」
「マトリクスの上部、横一列に競合する6社をとっています。次に、 左側には、上から4つの競合分析のための評価基準をとっています」
POINT 2 特別な意味づけを行なったら、その定義を説明する
「3つに色分けしました。黄色は○×を表し………………」
「実線は○×を表し、破線は△○を表しています」
POINT 3 何を表現したいのかについて発言する
「トレンドが左下から右上に向かって、斜めに上昇していることに注目して下さい」
「競合の安定的なパターンを貴社の不安定さと対比してみました」
POINT 4 資料のSO WHAT? (だから、何なの?)を述べる
「結局、営業パーソン達を、より利幅の高い顧客について考えられるように動機づけすべきです」
「以上の結果から、ハイテク市場こそが、参入すべき魅力的な市場だといえます」
POINT 5 次の資料への移行の段取りを行なう
「私たちは、ハイテク市場の有利な点を、数々見てきました。ではこれから、警戒すべき点はないかについて検討することにしましょう」
質問への対応
プレゼンテーションを行う前にあらかじめ想定質問への答えを考えておくことによって、それらを組み込んだ準備をすることが出来る。
また、事前に投げかけられる質問が分かっているなら、質問される前にあらかじめプレゼンテーションの中で先手を打って説明してしまう。
そして、あくまで聞き手は敵ではないと認識することで、質問に臆することなく対応することが出来る。
まとめ
以下が本書の要点である。
プレゼンの本質は「人を動かすこと」
目的は「提案を実行してもらうこと」であり、美しいスライドや流暢な話し方は手段に過ぎない。
聞き手が行動を起こすために、プレゼンテーションを通じて目的達成への関与の重要性を理解してもらう必要がある。
聞き手の権利を尊重する
プレゼンは話し手のためではなく、聞き手のためにある。
聞き手のための権利を理解することで、彼らのエンゲージメントや行動へのコミットメントを高めることが出来る。
説得力のあるプレゼンをするための準備と戦略
「誰を説得すべきか」を明確にし、その人のニーズに合わせて内容を調整する。
プレゼンの目的と聞き手に期待する行動を事前に言語化する。
限られた持ち時間の中で、事前資料の活用や優先順位付けにより、効果的な情報伝達を行う。
要するに、「聞き手中心のプレゼン設計」と「目的達成のための戦略的なアプローチ」が本書の核心である。