ヨルシカ 『月光』 ライブレポート@大阪
ヨルシカ Live Tour 2019 「月光」2019.10.21.Mon -at BIGCAT in Osaka-
先日、有難いことにご縁を頂き、大好きなヨルシカのライブツアーに参戦してきました。
この感動を自分の中だけに留めておくことができず、ヨルシカへの愛と感謝を込めて、ライブレポートとして、自分なりに記録を残したいと思います。
ヨルシカが好きで、ライブに行けなかった方もたくさんいらっしゃると思います。
もし閲覧頂ける場合には、ライブの感動を少しでも感じて頂ければ嬉しいです。
追加公演に行かれるという方は、こちらは閲覧せずに、心を鍛えて覚悟してライブに臨んでください(笑)。
ヨルシカを知らない方という方は、是非聴いてみてください。
ヨルシカとは、
コンポーザーの”n-buna”がボーカル”suis”を迎えて結成したバンド。
n-buna(ナブナ)さんは2012年よりボカロPとしても活動されています。
私にとっての夏の代名詞。
n-buna名義の曲も最高すぎるので是非。
※この先は以下を含みます。ご注意ください。
・個人的な感想・解釈
・曖昧な記憶
・ネタバレ
こんなに心を揺さぶられたり、泣いたりしたのは初めてでした。
私は普段、よくライブに行きます。
BIGCATも、何度も行ったことがあります。
そして毎回、感動します。
それなのに、これまで経験したことのない、鳥肌と、言語化できない感情で、まさに『心に穴が空いた』状態になりました。
それはなぜか。
きっと、
徹底的にこだわり抜いた、作品至上主義。
ライブを作品たらしめる、芸術への強い信念。
n-bunaさんの、人生と命を削った有言実行。
その意味でも、ヨルシカは唯一無二の作品であり、神様が宿っている、そんな存在だと改めて実感しました。
オープン後、開演前。
ヨルシカのインスト曲のようなビートを刻むBGMが流れている。
ステージの幕には見慣れたロゴが映し出されている。
19時の開演時刻を過ぎて、一度BGMが止まって、静寂。
と思ったらまた流れて、騙されたかのようにどっと笑いが起きる。
この反応だけで、会場の一体感を感じる。
(どうやら東京公演も全く同じ反応だったそう)
その直後に暗転、海の底の映像が映し出される。
声が聴こえる。
これは、n-bunaさんの声だ。
「僕らは深い海の底にいる。」
「言葉の海を泳ぐ。」
「僕らは鯨だ。」
…いや違う、これは、エイミーの声だ。
もう、世界観に飲み込まれていた。
「僕らは深い海の底にいる。
ヨルシカです。」
幕が降りた。
この時点で、すでに涙腺崩壊。鳥肌がやばい。
ステージには、赤い花と、ベンチと、階段。
サポートメンバー、そしてn-bunaさんとsuisさんがいる。
目の前の光景に戸惑い、頭も心も追いつかないまま、畳み掛けるようにギターのイントロが始まる。
『夕凪、某、花惑い』。
間髪入れずに『八月、某、月明かり』。
目の前にn-bunaさんがいる。ギターをかき鳴らしている。神様みたいだ。
suisさんの声も、姿も、透明感に溢れている。天使みたいだ。
『藍二乗』。
MVが流れて、この曲を初めて聴いたときのことを思い出す。
『神様のダンス』。
n-bunaさんは指弾きであたたかなアルペジオを奏でる。ピックを口に加えながら、口元はどこか緩んでいる。かわいい。
軽やかなタッチから鍵盤をガーン!と鳴らすピアノソロのアレンジに痺れた。
『夜紛い』。
会場の熱が高まるのを感じる。徐々に手が上がり出す。
人生ごとマシンガン。一緒に叫んだ。
映像、語り。雨が降り出した。
エイミー側の視点で、エルマに初めて出会ったあのカフェテリアの描写。
『雨とカプチーノ』。
『六月は雨上がりの街を書く』と続く。
屋内なのにまるで雨のにおいがする。
雨から一転、晴れの光がsuisさんを照らし出す。
『雨晴るる』。
「天国に1番近い場所を探している。」
語りの後、ハイテンポな曲が続く。
『踊ろうぜ』。
Aメロの手拍子で盛り上がる。楽しい。
ラスサビ前のn-bunaさんのキュイーンという長いチョーキングに息をのんだ。
『歩く』。
n-bunaさんの低い優しい声でコーラスが入る。
サビ前のダッダッダのキメの一体感が気持ちいい。
エイミーを模倣して旅を続けるエルマ。
『心に穴が空いた』。
高まる。もう私の心には穴が空きっぱなしだ。
『パレード』。
優しい。優しすぎる声と音。儚い。
MCも一切無いまま、容赦なく続く素晴らしい演奏と、映像、そしてn-bunaさんの生声での語り。
ライブが進み、曲を聴く中で、これまで私がヨルシカを知って、1曲1曲を聴いて、エイミーの手紙を読んで、エルマの日記を読んで、抱いてきた何とも言えない感情と情景が溢れ出して、全てが繋がっていく感覚。
『海底、月明かり』。
suisさんが中央の階段に、n-bunaさんはその横のベンチに腰掛ける。
後半に差し掛かっている気がした。
『憂一乗』 。
これまでの力強い歌声とはまた違う、優しくて消え入りそうな声で、「ずっと、ずっと、ずっと」。
『ノーチラス』。
二番に入って立ち上がるsuisさん。照らす光で神々しい。演出まで神がかっている。
「そうか、これは走馬灯だ。」
n-bunaさんの語りが入って、次が最後の曲だと思った。
『だから僕は音楽を辞めた』。
「いつか死んだらって思うだけで胸が空っぽになるんだ」というsuisさんの声が泣いていて、消えてしまいそうだった。
私も泣いていた。涙が止まらない。
n-bunaさんが声を絞り出すように、再び語り出す。
「今更だ。
今更もう一度君に会いたいと思った。」
「僕は君に会いに行かないとだめだ。
生まれ変わってでも、
生まれ変わってでも、
生まれ変わってでも、
…」
「生まれ変わってでも。」
「生まれ変わってでも、君(エルマ)に会いたい」と何度も思ったエイミーと、残されたエルマのことを思うと、ずっと涙は止まらない。
「僕は今、光を見ている。」
「淡い光とはとても思えない、月光を。」
エイミーの人生が終わりに近づく走馬灯の中で、水面に浮かぶ月明かり、「月光」を見たというのが結びの言葉だったと思う。
ここでツアータイトルコール。
鳥肌しかない。また泣いた。
I can see the moonlight only in your words.
無言でお辞儀をして立ち去るn-bunaさんと、すれ違うように階段を上がって消えていくsuisさん。
この演出すらもニクい。
放心状態のまま、拍手を送る。
スクリーンに、何度も目にしたあの木箱が映し出される。
「エルマに」
エルマと思われる女性の元に、木箱が届く。
n-bunaさんの作品へのこだわりは、どこまでも私の想定の先を行く。
そして、現実に引き戻されるように、終演のアナウンスが流れた。
アンコールはいらない。
美しすぎる終わり方。全てが完成された作品。
終演後の会場BGMは、たしか『前世』か、『夏陰、ピアノを弾く』だったと思う。
誰か、覚えてくれているだろうか。
私は月明かりの下で、『雲と幽霊』を聴きながら帰路に就いた。
月光という名のライブは、いわば2人の物語を具現化させた、完成された作品だと思いました。
エイミーがエルマと出会って、音楽を辞めて、人生の終わり方を探して。
それをエルマが模倣するように旅をして、自分なりの音楽を始めて。
まるで、小説を読んでいるような、映画を見ているような、そこには、たしかにエイミーとエルマがいました。
演奏、映像、語り、照明、音響、空間、全ての演出が、その物語を描くためのもので、その日の大阪が雨だったことすら、作品の一部なんじゃないかと思いました。
ライブを観に行って、その場にたしかに自分もいたはずなのに、あの日目にしたもの、耳にしたものは幻だったんじゃないか、未だにそんな気分です。
完成されていて、終わり方まで何もかもが、あまりに美しかった。
生きているうちに、このような体験ができて、本当に幸せでした。
ありがとう、ヨルシカ。
セットリスト
1.夕凪、某、花惑い
2.八月、某、月明かり
3.藍二乗
4.神様のダンス
5.夜紛い
6.雨とカプチーノ
7.六月は雨上がりの街を書く
8雨晴るる
9.踊ろうぜ
10.歩く
11.心に穴が空いた
12.パレード
(海底、月明かり)
13.憂一乗
14.ノーチラス
15.だから僕は音楽を辞めた
(前世?夏陰、ピアノを弾く?)
(おまけ)メンバーについて
ヨルシカ メンバー:
n-buna[ナブナ](Guitar / Composer)
suis[スイ](Vocal)
サポートメンバー:
下鶴光康(Guitar)
キタニタツヤ(Bass)
Masack(Drums)
平畑徹也(Piano)
・n-bunaさん(Guitar / Composer)
全体的に黒をベースとしたシンプルな衣装。癖っぽいふわふわのボブカットで、長めな前髪に隠れた涼しげな目元とつぶらな瞳。時折見せるはにかみ顔が可愛い。
ノーチラスMVのエイミーにそっくり。
配信やラジオで聴いていた声の印象と、あまりギャップはありませんでした。
感情のままに歌う美しいコーラス、ギターを弾く姿がとてつもなくかっこいい、そしてエモい。
ヨルシカ作品でも特徴的な、n-bunaさんらしいギターフレーズ(リフ)を本人が実際に弾いていたのを見れたのは、ファンとしては余計にたまりませんでした。
・suisさん(Vocal)
膝下までの長いワンピースに胸にはロザリオ。
肩くらいまでのストレート、前髪は薄めでセンター分け、光の加減で銀髪に見えました。
肌が白くて、華奢で、目が大きくて、儚げで、まるで天使のようでした。可愛いのに美しい。
こちらも、ノーチラスMVのエルマにそっくり。
歌い出すと、何かが憑依したように印象がガラッと変わる。そして終始、優しく切なそうに微笑んでいる。
suisさんの表現力、歌唱力までもがえげつない。生歌良いとかのレベルではなく、ずっと心に刺さりっぱなしでした。
以下、サポートメンバー
最高でした。
サポートどころか、この4人がいてこそヨルシカが完成したのだと思います。
お茶目でふざけがちなところも大好きです。
・下鶴さん(Guitar)
甘いマスクと頼れる兄貴のようなあたたかさ。
n-bunaさんとの掛け合いの中で、そのギターをより活かすバッキングや、丁寧で、甘くて優しい音色が心に沁みました。
・キタニさん(Bass)
ヨルシカの歌うようなベースラインはキタニさんしか作れないと思います。弾く姿も超かっこいい。
個人の活動としても年明けに大阪でワンマンライブ予定なので要チェック(ちなみに参戦予定)。
・Masackさん(Drums)
ハネないのにハネるような絶妙なニュアンスや、激しくも繊細なタッチ。
ヨルシカのグルーブの根源だと思います。演奏中の表情も豊かで、まじまじと見てしまいました。
・はっちゃんさん(Piano)
軽やかさと力強さを兼ね備えた、空気感のある音、アレンジが最高でした。
そして終始にっこにこの笑顔。この笑顔にやられた人はきっとたくさんいることでしょう。