白/黒
にじいろさんには「届きそうで届かない何かがあった」で始まり、「君には届かない」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば13ツイート(1820字)以内でお願いします。
#書き出しと終わり
届きそうで届かない何かがあった。
例えば僕が左足をあと一歩、前に進めれば。 涙でぐしゃぐしゃの顔を覆う彼女の右手ごとこの肩に引き受け、「スーツが汚れる」
なんて要らぬ文句を言うのかもしれない。
今日の君のハイヒールは、普段見るのと違う。爪先にひとしずく、落ちた気がした。
足元をあたたかく照らす外灯の白。
凛とした光が作るきっぱりと暗い黒がその横に落ち、君と僕を隔てている。
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例えば私が右足をあと一歩、前に進めれば。
君の左手がここへ伸びてきて、きっと私は拒まず、その綺麗なスーツの襟元を涙で濡らすだろう。
止まれと思うほど落ちてしまう、隠せない。
今日のための新しい靴も多分、気づかれてしまった。
カーブミラーが外灯の光を背負い、影を作る。明るく目障りな白の横で、あたたかい黒は自己も他も、目を瞑るように、それでも見ている。
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僕の左手はずっと / 私の右手はずっと
君には届かない。