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配信日記:にじシバラジオ#030 「レストラン・エスペランサ」~クルドを巡る物語の浸透と残り続ける不安~
普段はLGBTQ寄りの話題を取り上げている「にじシバラジオ」ですが、今回はクルドの話を取り上げています。なんてたって、「にじシバ」の開催場所である「スペースとプラン」は川口市に所在しているし、クルド日本語教室も開催されているわけですから。
さて、今回の配信タイトルにもなっている「レストラン・エスペランサ」は葛飾区を拠点に活動している劇団「さんらん」が昨年12月に行った公演のタイトルとなります。番組中でMCの小倉さんが話している通り、YouTubeで「レストラン・エスペランサ」の全編を見ることができるので、興味のある方はどうぞ。
今回、番組の収録後に私もこのYouTubeを見たのですが、演劇という表現方法の特殊性について改めて認識することとなりました。さんらんの作劇・演出家の尾崎太郎さんの意図が込められてはいるのだろうけれども、「レストラン・エスペランサ」では演劇というメディアの自由度を最大限に用いて、時空を飛び越えるかのようなストーリーが展開する。
普通、成田空港から川口市まで歩かないし、成田空港の入国審査から逃げることもできないし、荒川で溺れていたらなかなか助からない。しかし、レストラン・エスペランサの承継をめぐる展開それ自体の現実感の無さから連綿と展開する舞台の中で、心の中でツッコミを入れたくなるような設定の非現実さが相対化されていく。そしていつの間にか諸々の設定の現実感の無さは些末な問題となり、劇の中核であるドラマそのものへと観客の目が向いていくこととなる。
タイムパフォーマンスがしつこく主張される現在、どこの劇団も青息吐息な状況に置かれているのだと思う。演劇が持っている独特な語り口は、観劇に慣れた身でないと解釈しづらい部分もあるし、大道具に頼らない舞台演出は観客の能動的な想像力の働きがなければ劇として成立しない可能性がある。演劇はそれ自体が非常にハイコンテクスチュアルなメディアであって、コストパフォーマンスも悪ければタイムパフォーマンスも良くない。
しかしながら、そうした演劇だからこそ成り立つ表現があり、演劇でしか伝えることのできないなにかが、もしかするとやっぱり有るのかもしれない。
番組本編では劇の話があまりできていなかったので、この場を借りて書きました。ところで小倉さんが12月の文フリで販売したという冊子『それでも不安なあなたのためのクルドの話』については次々回のにじシバラジオでも取り上げる予定ですので、中身の詳しい話は次々回をお待ちください!
それでは来週の配信をお楽しみに!
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