【note165枚目】2輪の花
先日、吉田ユニさんの展覧会に行ってきた。
54枚のトランプの絵柄を花、洋服、人体、その他のアイテムを駆使して独創的に表現されていた。影まで取り込んで錯視的に表現されたものもあり、どこからこんなアイデアが湧いてくるのか、クリエイターとしてのすごさを感じて圧倒された。中は撮影OKだった。
吉田ユニさんのことは去年発売されたイェソンのアルバム『Unfadin sense』のジャケットデザインで初めて知った。
SUPERJUNIORというグループアイドルを楽しむにあたって、ソロの活動にまで手を広げてしまうと収拾がつかなくなりそうだから追わないようにしようと決めていた。でも、これは人生で初めてジャケ買いしてしまった。生命力にあふれる花と萎れて朽ちてもそこにいる花。土に返ろうとしているものを留め置くグロテスクさも感じるし、残酷な時の流れを表しているようにも感じられる。でも、確かに「生きた記憶」や「感じたもの」は自分の中で色鮮やかに生き続けて決して消えることはない。あくまでも個人の感想だけど、そんなことがこの1枚から感じられた。
このアルバムも大変出来がよく、イェソン自身もかなりこだわって製作を進めたんだろうなと感じられる。お時間あったらついでにご覧ください。
展示会の順路を進めていくと、製作ビハインドの映像が放映されていた。
トランプの絵柄に使用されているのはすべて生のお花、食品、果物。変色しない対策も十分にされていると思うけど、あれだけのものを手作業で、傷まないようにテキパキ進めていくのは、労力もプレッシャーも計り知れないものがあるだろう。トランプの表面は生花をそのまま使用している部分もあるけど、大部分は花びらや茎をバラして使用されていた。一枚一枚、精緻に並べられて飾られ、出来上がる全体はとても美しいけど、ミクロでみるとやっぱりグロテスクにも感じてしまう。美はグロテスクを孕む概念なのかもしれないと感じた。
少しだけアートや美術に関心が持てた気がする。
展示会へ行く少し前にも美しい花たちを見てきた。
桜庭うれあさんと椿りんねさん
お二人ともデビューが同じ週ということでそれぞれ川崎と横浜に出番があり、私にとっても行ったことがない劇場へ行くこれ以上ない絶好機だった。
桜庭うれあさん 8周年作『イワナガヒメ』
私が初めて見たうれあさんの演目『WASSHOI!』も和物と言えば和物の演目だったけど、今回は味わいがだいぶ違った。うれあさんはダンサー色が強い、洋風にバキバキ踊れる系統の踊り子さんと思ってる。そう思っていたところ、この周年作はお引きずりがある着物と、照明を受けてキラキラ光るレースの打掛。基礎から上物まで日舞の、横にゆったりしたリズムで舞われていた。いつもの縦に細かく刻むダンスより、ゆったりと流れるような美しい舞。まだまだ知らないうれあさんだった。
扇子を操る指先まで美しくて、うれあさんが舞う本舞台から和の世界観が場内いっぱいに広がっていく。ミラーボールがピンクに照らされているのが、大きな木に花が咲く世界を表しているように感じられた。
少しずつ着物をほどいていく間、帯やお端折りと本当にきっちり着こまれていて、身動きをとるのもこれを準備するのも大変そうだなあ、そりゃ1個出しで集中しないと無理だなあなど考えていた。あと、きっちり着こまれていればいるほど、それらが解けたときの高揚感はより強い気がする。洋服とはまた違うエロスがある。解かれていく着物とあらわになってゆくうれあさんの肢体を眺めながらそんなことも考えた。
レースの打掛をベッド着にしたうれあさんが盆へ向かうと、汗が光を受けて宝石みたいに見えた。歌詞に合わせて手で顔を覆ったり、ビシッと切られるポーズと切なげな表情。それでも前を向いて、自分を抱きしめてあげる、そうしてあげられるように。強くあろうとしているのだろうか…と考えていたら演目が終わった。美しい世界だった。
モチーフ等何にも調べずにとにかく行っただけだったので、横浜へ向かう道中で「イワナガヒメ」を調べた。妹のサクヤコノハナヒメと一緒に嫁に出されたけど、岩のように醜いからという理由で突き返された。彼女自身の神性としては「岩のように長久に変わることない永遠性」が表されており、『君が代』の一節にも意味を引かれる。ざっくりとこんな感じらしい。
末広がりの「八」だけじゃなくて、「8」から連想される永久性も汲んでの演目ってこと…?とじわっと来た時に電車で涙が出た。醜いといわれて、必要とされなくても私は私でずっとここにいる。それはとても強くて優しいなと。改めて優しくて美しい演目だと感じて、またどこかで拝見出来たらいいなと思った。
椿りんねさん 5周年作『GOTHICPINK』『夢』
10月31日まで浅草ロック座で出番があって、それを終えて息つく間もなく周年週が始まって、周年作を出して…って忙しすぎる。直前まで出番だった浅草の担当景があまりに癖ありな演目だったから、それが抜ける時間はあるんだろうか…とか悶々としていたけど全部杞憂でした。
とにかく小物が多い演目で、もろもろの小道具のセッティングから演目が始まっているんだと思う。「椿りんねによる、椿りんねのお誕生会会場」に招かれていた。投光さんに拍手で合図を送るのも、密度が高まっている横浜の場内も雰囲気があって最高。
明かりがつくとそこには彼女の誕生を祝うケーキ、プレゼント、ワイン、何よりめっちゃくちゃかわいいドレスのりんねさん。頭に冠を乗っけた姿は紛れもなくこの世界の主役。ピンクと黒と少しの毒っ気で視界のすべてがどんどんかわいく彩られていく。ケーキを掬って味わったり、ワインを口に運んだり。「もし演目中に寝ているひとがいたら起こす」という趣旨で用意されたらしいクラッカーが会場を盛り上げる起爆剤として炸裂していく。
ベッドのドレスもカップレスのトップとリボンが施されているスカートがとにかくかわいいし、彼女自身がケーキになっているようにも見えた。ポーズを切っていく瞬間のどこを切り取ってもりんねさん自身が一番楽しんでいた。
彼女自身の好き!やカワイイ!を全面に表して、「ザ・椿りんね・ワールド」の世界にどっぷりと浸らせてくれた。大好きな人が大好きな世界をこの世に表してくれるって幸せだなあと感じる演目だった。「りんねちゃんのお誕生会、楽しかったでしょ?幸せでしょ?」と言われた気持ちになったのは私だけかもしれないけど。
もう一つの周年作『夢』は残念ながら鑑賞する時間がなかった。椿りんねビハインド的な演目らしいけど、拝見する機会が今後あればいいなあ…。演目の上演タイミングは一期一会だ。
大げさかもしれないけど、桜庭うれあさんと椿りんねさんはいちスト客としても、一般女性としても大きな存在なんです。しなくていい嫉妬や好きだった気持ちが萎んでいくやるせない気持ちとなぜか申し訳なさ。抱えなくていい恨みの気持ちもあって、趣味でも日常生活でも処理しきれず澱のようにどんどん溜まっていてしんどかった。
あの時思い切ってずっと気になっていたストリップを観に行ってよかった。そこにうれあさんとりんねさんがいてくれた。2輪の美しい花は私の心を優しく癒していったし、こんな綺麗な景色が見られる場所もあることを教えてくれた。
お二人が無事周年週を迎えられ、また、成功裏に週を終えられたことをとてもうれしく思っています。ありがとうございます。周年週、本当にお疲れさまでした。