アルスの旅々 ~英雄奇譚編~
第一章 ~英雄奇譚~
1.楽しい一日の始まり「だった」
XX21/4/8 9:00
「(おいしそう・・・)」
ここは広い平原の中央にある町 マンダリン
僕の故郷からまっすぐ右にいき、三つほど山を越えたところにある国だ
町は平原に囲まれていてとてものどかな町だ
僕は昨日の夜、宿屋のおばさんから町の中央広場では朝市が開いていると聞き、朝早く宿を出発し店を見て回っていた
今はそこでふと見つけた店のミカンの山をジッと眺めている
ここは温帯に位置していて一年中通して温かい
そして、ここで採れるみかんは非常に美味しいとちまたで有名で、
僕の町にあるみかんもここから仕入れているのだとか
・・・正直、あんまり気にしていなかったから初めて知った
しかし、改めてみるといいオレンジ色をしていてみずみずしく見える
「嬢ちゃん、みかんが食べたいのかい?」
まじまじと眺めていると店主が奥からでてきた。
「よだれ垂らしながらうまそうに見る人は久々だよ、一個おまけで3つ2フラン、どうだい?」
「な・・・っ!(ジュルリ)」
まったく気づかなかった、店主は「はっはっはっ!」と笑っている
「か、買います!」
恥ずかしさのあまりさっさとお金を渡し商品をもらった
顔を真っ赤にしながらそそくさとその場を後にする私に「まいどあり!」と店主が元気に言った
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11:00
ちょっとしたハプニングにあったがいい買い物をした
その後、他の店も存分に見て回り、朝市もお開きになってきたタイミングで
休憩を取ることにした
「(さて、これからどうしようかな)」
ベンチに腰掛けつつこれからのことを考える
勢いよく出てきたのはいいものの、行き先をしっかりと決めていなかった
「(とりあえずこのまま真っ直ぐに飛んでエルフが統治するリボワを目指そうかな・・・)」
「(あ、お金も稼がなきゃ。町に留まって薬の調合や魔法道具の製作や修理を手伝ったりとかはどうかな?旅商人もいいかも)」
そんなことをワクワクしながら考え、みかんを一つ食べようかなと手を伸ばした、そのとき
「そっ、そこのきみ!」
大柄の青年が僕目がけてぶつかるぐらいの勢いで走ってきたのだ
「ぅえぇ!?」
とっさに変な声が出てしまった、がそんなことよりすぐに身構えた
だが、青年は目の前でなんとか止まったようだ
と同時に握りこぶしサイズの大きなみかんを4つ押し付けられた
「お願いします!しばらくの間これを持っててください!」
「え!?あ!ちょっ、ちょっと!」
「後で回収しにくるので!それじゃっ!」
青年はそう笑顔で言うと颯爽と走り去ってしまった
「(一体何なんだ・・・、てか重っ)」
4つの大きなみかんを落とさぬようにもう一度ベンチに座り直し、情報を整理をする
「(あの人とは初めて会ったよね?なんでいきなりみかんを渡してきたんだ?一つ食べても良いのか?)」
「(あと、鎧を着てたけどこの町の兵士なのかな。なぜかわからないけど悪い人じゃなさそうだし)」
ビックリしたが落ち着いて思い返すと中々の好青年だな、と思ったとき
またこちらへ人が走ってきた
今度は三人、ガタイのいい男と兵士が二人だ
すると男がすぐに話しかけてきた
「君!こっちにみかんを持った男が走ってこなかったか!?」と男が僕に話しかけた
ん?みかんを持った男?
「え?みかんを持った男ってーーー」
さっき走っていきました、と言おうとしたが
「・・・ん?っ!そ、そのみかんはうちの!」
男は指をさしてそう叫んだ
「へ?あ、これはさっきその青年の方にーーー」
「こいつ!あの男の仲間だ!ひっとらえてくれ!」
・・・は?
「貴様!無駄な抵抗をせず我々についてくるんだ!」
「は!?えっ、ちょっと!違うってば!」
「何が違うってんだ!俺のみかんを持っているのが何よりの証拠だろうが!」
「だからこれはさっきの青年から渡されたもので!」
「詳しい話はあとで聞く!いいからついてこい!」
どうしてなんだよぉーー!!
その後も虚しく抵抗するも徒労に終わり、弁明する余地もなくズルズルと町の屋敷へと連れて行かれたのだった・・・
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coming soon...
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