7・11真珠記念日
それは確かに涙であった。
空高くから降る、雨、雨、雨。
大粒の雨が、夜気に磨かれて珠となる。
世界に散らばる透明な珠は、海の中で静かに眠る。
暗闇の底で、黒い真珠になる夢を見る。
波打ち際の白い泡たちも、ネックレスになる日を夢見ている無邪気な硝子質の子供たち。
それは確かに涙であった。
悲しくなくとも、涙は零れる。
そこらじゅうに、雨は降る。
透明な涙は雨であり、梅雨時期の日本によく落ちる。
それは確かに真珠であった。
黒服の、あの人の首にひっそりと巻かれた一連の真珠であった。
名残を惜しんで降る雨が、傘をさしてもどこからか首元の真珠を濡らした。
それは確かに涙であった。
そして確かに、雨であった。
それは確かに、真珠になった。
夜気に磨かれ、美珠になった。
世界中に眠る真珠のはなし。
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