カポを使って最速でギター弾き語りができるようになる方法を考えた【ギター初心者向け音楽理論】


1.ここでいう弾き語りとは

前回の記事で僕はギターが好きではないけど伴奏の道具としてギターが非常に有用であることを説いた。今回はギターで伴奏をしながら歌うために必要最低のコードワークの知識をサクッと紹介する。本当に伴奏するだけのための知識なのでかっこよくアコギを弾くことには何も資さないことはご容赦願う。

また、諸所で音楽理論の言葉を使っているがわからない部分は各々調べていただきたい。音楽理論って個々の名前だけはいっちょまえに難しげだけど調べてみると実際はほんの簡単なことだったりする張子の虎なので……

2.7つのコードで対応できる

まず前提として転調しない単純なポップス曲を前提として話す。

弾き語りの楽譜や歌本を見ながら弾いていてもコードがどういう規則性でどうならんでいるかなんて考えずに弾くのが普通だと思う。次から次に出てくる新しいコードに辟易することだろう。しかし、基本的に現代の音楽では曲のキーが決まっていて、そのキーごとに7つのコードが使用される。つまり7つのコードが弾けるようになれば1曲弾けるのである。その7つのコードがいわゆるダイアトニックコードである。キーがCメジャーの時はC, Dm, Em, F, G, Am, Bm(-5)の7つだ。

また、コードの進行はたいてい決まっている。現代の音楽はおおまかに1→5→1と展開するのが基本だ。これはCメジャーキーでいうところのC→G→C、お辞儀のときに流れるアレである。これは過剰に簡単化しすぎとしても、例えばF→G→Em→Am、いわゆる王道進行と呼ばれるものだが、たくさんの曲に使われている。

「1曲弾ける」とは言ったが、殊、ギターにおいてはCメジャーのダイアトニックコードさえあれば他のすべてのキーをカバーすることができる。かなり大雑把ではあるが、嘘は言っていない。僕たちには頼れるアイテムがある、カポタストだ。

3.カモン!カポタスト!

譜面にはカポタストをつけるよう書いてあるものがあるが、その機能はご存じだろうか。カポタストをつけるとすべての弦が押さえられるので、すべての開放弦の音が半音上がる、つまり#するのである。これはすべての楽器においてギターにだけ許された超イージーモードなのだ。

曲のキーにはC, C#, D, D#, E, F, F#, G, G#, A, A#, Bの12種類とこれにそれぞれメジャー・マイナーの別がある。カポをしていない状態ではCコードを弾けば当然Cコードである。そして、カポタストを第一フレットにつければ(カポ1)Cを弾いたときにC#コードの音が出る。Dmコードを弾けばD#mコードの音になる。同様にすべてのコードが#する。Cメジャーキーのコードを弾いているのに出る音はC#メジャーキーになる。

次にカポタストを第二フレットにずらしてみよう(カポ2)。すると、Cのコードを弾いているのに出てくる音はDコードの音になる。このままCメジャーキーのダイアトニックコードを弾けばDメジャーキーのダイアトニックコードを弾けるということになる。このままカポを1フレットずつずらしていけば、どのキーにも対応できるのだ。

しかし、カポをネックの根本に近くなりすぎると音がか細くなってしまうし、フレットの間隔も小さすぎて押さえにくくなってしまう。そこで次に使うのがGメジャーキーである。GメジャーキーのダイアトニックコードはG, Am, Bm, C, D, Em F#m(-5)の7つ。ほとんどがCメジャーキーと同じなので覚える手間もほぼ無に等しい。Gメジャーキーのダイアトニックコードを覚えれば、カポ1でG#, カポ2でA, ……カポ5でCメジャーキーになる。余談だが、Cメジャーキーならカポなしでも同じ音が出るのだが、6弦ルートのCメジャーキーはかの悪名高いFコードを弾く必要がない。これは楽だ……

整理してみよう。Cメジャーキーをカポなしからカポ5まででCからFまで、Gメジャーキーをカポなしからカポ4まででGからBまで。これで12個すべてのキーを制覇したことになる。おめでとう!

また、マイナーキーについてはCメジャーキーとAマイナーキーが同じダイアトニックコードを共有する(詳しくは「平行調」「レラティブキー」で調べてください)。なので12個のメジャーキーをマスターしたと同時にさらに12個のマイナーキーもカバーできるのである。おめでとう!

4.省略、省略、無視

さて楽譜や歌本を見ていると7th, dim, sus, add等々コードに様々な表記が付いている。これらはそのほとんどが演奏を豊かなものにするための付加価値的要素でしかない。特に弾き語りなら主役は歌声。これらの記号は全部省いて構わない。全部だ。省いたとてメジャーとマイナーを間違えた時ほどの違和感はない。なお、分数コードについては「〇/△」「〇on△」の〇だけ弾けば良い。違和感がなければどんどんコードを省略して演奏にかかる負担を減らすことが初心者の間は大切なことだ。細部にこだわるより全体を通して演奏が成立する方がずっと重要だ。演奏に慣れてきたときにまた立ち返ればいい。

また、コード進行を分析して簡単にすることもできるならやってみればいい。FとDm、あるいはCとAm、GとEmなど音が似ているコードはたくさんある。パターンが覚えづらい場合、コードチェンジの際に指が動かしにくい場合はこれらのコードを入れ替えて弾いてみて違和感がなければ替えてしまえばいい。詳しくは「代理コード」等調べてみてほしい。

少し余裕が出てきたらまずは7thコードを覚えていくといいかもしれない。響きがおしゃれになることに加えて、ドミナント7th(CメジャーキーでいうとこのG7)は使えばグッとドラマチックというか、情緒のある響きになる重要度の高めなコードである。

5.転調について

さてここまで転調については語ってこなかったのだが、現代の曲では転調しない曲のほうが少ないだろう。以下に、転調のよくあるパターンを2つ紹介する。

・サビで全音上がる
曲中の盛り上がり箇所のサビでさりげなく全音上がる曲は多い。ラストだけ上がるパターンもこれまた多い。Cメジャーキーのポジションで弾いている場合はDメジャーキーのパターンになるのでD, Em, F#m, G, A, Bm, C#m(-5)。Gメジャーキーのポジションなら全音上がってAメジャーキーなのでA, Bm, C#m, D, E, F#m, G#m(-5)。C,Gメジャーキー以外で使うコードは多く見積もって5つ。それぞれ覚えたほうが早い……かな?なお、DメジャーキーもAメジャーキーもカポを使わずに弾いたときと少し響きが違うので覚えておいて損はない。

・Dメロで半音下がる
ラスサビで盛り上がりたい、けどキーを上げるとしんどい……そんな歌手の希望があるのかどうかは知らないが、Dメロで半音下げておいてラスサビで元の高さに戻すパターンの曲もまあまあ見受けられる。Cメジャーキーの半音下はBなのでダイアトニックコードはB, C#m, D#m, E, F#, G#m, A#m(-5)。Gメジャーキーなら半音下はF#でF#, G#m, A#m, B, C#, D#m, Fm(-5)。バレーコードだらけである。手だては何もない。気合いで乗り越える。なお、ギターには省略コードというものがあるので各々調べて負担を軽減しましょう。僕のおすすめは6弦ルートのマイナーセブンスコード。親指と中指だけで弾けるのでこれをマイナーコードの代わりに使うことが多いです。

今の音楽はポップスやロックにしても複雑な進行のものが多く、まず足がかりには昔の歌謡曲やフォークソングをやってみるのも手かなと思う。シンプルイズベスト。そうして自身の音楽観が広がるのもまたいいことです。

6.最後に

弾き語りにおいてもとにかく数をこなすことが正義である。たくさんの曲を演奏して練習していくうちに慣れてくるだろう。西洋音楽には音の種類は12個しかなく、きれいに響くパターンとなればさらにその数は限られてくる。何曲もこなしていくうちに共通のパターンが見えてくる。ああ、次はこのパターンね、と慣れから余裕が出てくるだろう。そうなったときが細かいコードワークや特殊な奏法などに進むタイミングでしょう。また、音感やリズムなど、さらに基本的な感覚を磨いていってもいい。とにもかくにもまず1曲、2曲と大まかにでも演奏できる曲を増やして自信と経験を積んでいくことが肝要だ。

と、ここまでいかにも偉そうに講釈を垂れたものの僕もまだまだ初心者である。Fコードがちゃんと鳴らないときもあるしリズムも乱れがち。けれど自分が気持ちよく弾き語りできるところまではなんとか上達することができました。

多くの人が挫折してしまうといわれるギター。始めたころはほんっとにモチベーションが湧きにくくて嫌いだった。僕の場合は周りに練習しろよと発破をかけてくれる人がいたから続いたけれど、一人だと到底続かなかったと思う。けど、今ある程度弾けるようになってほんとによかったと思うから、多くの人がギターを、手軽に楽しめる音楽を自分の物にしてもらえるように自分の経験と知識をここに記しておきます。少しでも誰かの役に立てればと思う次第です。

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