ビニール傘
ビニール傘をさす。見上げると透明な先にぼんやり桜の木がみえる。傘にはまるい雨粒がたくさんついていて綺麗。
いつのまにか、本当に好きなものはすこしだけ。あとはどういう自分になりたいか、どう見られたいかでまわりのものを選んでいたようにおもう。
ビニール傘はダサくてあんまり持ちたくない。
ビニール傘はダサい。
だけどその日は透明のその先を見ながら公園の中で過ごした。
綺麗なものがたくさん見えた。
桜の花びらがひとひら、傘の上に雨とともに降ってきてひっついた。
それに気づいたのも、きっと傘が透明だったから。
雨の日はなんだか気がのらない。だからちょっとうれしくなるくらいのかわいい傘が使いたい。
そんな風に雨をやり過ごすのもいいけれど、たまには雨そのものを楽しめるような そんな心でいられたら。
雨のなか、むしろそれを楽しんでいるように遊ぶこどもたち。それがなんだかとってもうらやましい。
いま、そうはいられないわたしたちでもきっと、今のわたしたちにしか感じられないものがある。
見えなくなってしまったものに気づいたり、新しく見える美しさに惹かれたり。
そういういろんなバランスを、自分の好きなようにつくっていく。
すきなものを取り逃さないように。
慎重に。でも素直に。
雨の日がすきになった。
ついでにビニール傘も。
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