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中銀カプセルタワービル/黒川紀章

先日、とある方のお宅へお邪魔しました。それがこちら。

中銀カプセルタワービル/黒川紀章設計

なんとこちらに住まれているということで、これは行くしかない…と、見学させてもらうことに。

実は来年また東京に行く予定があってその時にお願いをしようと思っていたんだけれど、なんとなくスナフキンみたいなイメージがある方でいつふわっと他のところに移り住まれるかわからないなぁとおもってこの機会に。笑
思い立ったが吉日ってやつね。

この建物の設計者である黒川紀章はわたしが特に好きな建築家の中に入るひとりで、この中銀カプセルタワービルも実は以前に外観を見に出向いたこともあるほど。住宅なので関係者以外は基本的に入れないのでとても貴重な経験でした。

銀座の街中にあるこの建物、名前からわかるようにカプセルが連なってビルの形になっている。A塔B塔の2つの塔で成り立っていて、それぞれ中心にエレベーター、その周りに螺旋状に階段があり、それが主軸になってカプセルがそこに組み込まれてある。

このカプセルはボルトでひとつひとつその軸につけられていて当初の構想ではそれが付け替えられて新しくなっていく、というもので、生活の変化や建物の老朽化などにともなって変化していくことを提案したメタボリズムという思想をもった建築。
メタボリズムは新陳代謝という意味。

1970年代は大阪万博が開催されて、未来に夢を馳せるイメージ通りの近未来的な形が流行っていた。


〈カプセルの内観〉

丸窓がかわいい 棚は備え付け


ユニットバスのドアも丸。


超スペーシーでかっこいい。The 70s。


この、いまや昔につくられたものなのにいまに"近未来的"という表現がされるものがなんだか面白くて、時代がいったりきたりしてて不思議なかんじ。


一度老朽化で取り壊しの計画があったようだけれど、いまは保存にむけての活動のおかげもあって普通に人が住んでいる。(廃墟と化してるカプセルもあるみたいだけれど。)


当初の予定通りカプセルを可変できたとしても軸部分の老朽化はどうしようもないなぁというかんじも。
中心にあるエレベーターが、三菱エレペット。

エレベーターでさえ(当たり前だけれど)年代物。最上階までエレベーターの階がないのはなぜかな?とおもったけどエレベーター上部の機械部が大きくて最上階は機械部で埋まってるのではないかと推測。



カプセルのつくりはとてもミニマルで、建物自体や設備の老朽化があって手を加えなければ住めない部屋だけれど、最近はミニマリストとよばれる人が増えているしDIY好きも多いのでDIYがOKの物件としたら立地も良いし立地の割に家賃が安いので流行りそうな気もする。
洗濯やお風呂が家の中で済まないけど(給湯が全室で使えないらしい)銭湯やコインランドリーがあれば済むし街の中に住むと思えば家が狭くても広い家に住むより生きる範囲が広がるかんじするな〜とか考えたりして。シェアハウスも流行ってるしそういう考え方はこれからもっと広がっていきそう。

要約するとわたしもここに住みたいな〜。めちゃくちゃかっこいい。

見学していたときは気づかなかったんだけど、A塔は赤色、B塔は青色のカラーが床の色になっていて

〈中銀カプセルタワービル A塔〉


赤と青に既視感があってピンときた。


〈東京文化会館/前川國男設計〉

上野駅すぐにある東京文化会館。
この建物の前には今年世界遺産に登録されて話題になったコルビジェの国立西洋美術館がある。

この赤青のコントラスト、前川イズムだ。

と思って調べてみたら

黒川紀章は丹下健三の事務所に入っていて、丹下健三は前川國男の事務所に入っていたらしい。
丹下健三イズムは前川國男イズムを受け継いでいて、さらにそれを受け継いだ黒川紀章イズムだー!ってなってちょっとめちゃくちゃ面白くないですか。わたしだけですか。すいません。取り乱しました。

まぁ元々黒川紀章はコルビジェに憧れて建築をめざしたらしいので直輸入みたいなやつかもしれないですけれども。(コルビジェと前川氏はなかよし)


でもよくよく中銀カプセルタワーをみてみると

(もうすこし引きで写せばよかった)

カプセル部分にどうしても目がいくけれど、この建物の下部分がピロティになっていて、さらに水平連続窓がある。完全にコルビジェイズム。
近代建築の五原則というものをコルビジェは提唱していてそれに含まれるものなんですけど説明がめちゃくちゃめんどくさいので気になる人はググってください。もしくはサヴォア邸で調べてください。よろしくおねがいします。この一階部分がほぼそれです。



建築はただの建物じゃなくてその時代を生きた人々の哲学が確実に盛り込まれて形になっていてその中で人が生活していたり時代に合わなくなってしまったり、一周まわって時代に合ってきたり本当に生きているように感じることがあります。

メタボリズムの体現といっていいこの中銀カプセルタワービルは、(当初の計画の代謝はうまくいってないものの)季節をめぐって葉がついたり落ちたりする大きな木のようなものにも思えるし、その中をめぐる赤青は建築の血管の色なのかなぁとか勝手な想像をしてみたり。


もうなにがなんだかよくわからなくなってしまった。まとめまりきらないので中銀カプセルタワービルの写真を並べておわりにしますね。



kutsunaさんへ 感謝を込めて。


#コラム #考察 #エッセイ #建築

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