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スイス - バーゼル薬学歴史博物館


訪問日:2023/04/18

バーゼル薬学歴史博物館とは

スイスのバーゼルにある薬学の歴史的な資料を展示している博物館。この博物館には医学における様々な資料が集められている。

現在バーゼルはロシュやノバルティスなど世界的な製薬会社があることで有名であり、中世では化学や医学の原点である錬金術が盛んだった地域でもある。中世の偉人である錬金術師、パラケルススの出身はスイスであり、バーゼル大学で教鞭をとっていた。当時この博物館のある建物は有名な印刷出版社で、パラケルススが医学書や薬学書を求めて訪れていたらしい。

行き方

バーゼル薬学博物館はバーゼルの街の中にあり、少し奥まったところに入口がある。この道は中世にペストの死者 を運んだことから『死の小道』と呼ばれるそう。

大通りから階段のある路地に入る。天秤の皿とヘビのマークが目印。
MUSEUMと書かれた看板のある建物の中を通り抜ける
中庭右手側に入口がある
受付兼ショップエリア。昔の薬局を再現している。

入場料はCHF8。バーゼル宿泊者は宿泊施設でもらえるバーゼルカードの提示で半額になる。ミュージアムパス/スイストラベルパスがあれば無料。現金orキャッシュカードの使用が可能。毎月第一土曜日は入場料が無料になるらしい。

なおキャプションの解説は全てドイツ語である。音声ガイドはドイツ語、フランス語、英語がある。音声ガイドは無料。

古代~の生薬・薬物

受付の左手にある階段を上がると、最初の展示室にたどり着く。古代から近代にかけて、当時病気に効くとされていた植物・動物・鉱物などの薬の原料や医療器具、日本や中国の漢方や丸薬などが展示されている。

ペスト流行の際に魔除けとして作られたキリスト教グッズなど
あへんとあへんを量る重り・パイプ。薬にも麻薬にも使われるあへん…ということであへんの道具などもいくつか展示されている。

テラ・シギラータ

テラ・シジラータは土を錠剤にした薬

このペットボトルのキャップほどの大きさの粘土、たくさん展示されているが一体何なのか。
これはテラ・シギラータ(Terra sigillata)と言って、土で出来た薬なのである。昔の人にとって土を食べることはそれほど珍しくはなかったそうで、薬に使われることもあったそうである。
テラ・シギラータが腸の病気に効果を発揮したため、人々はそのうちこれを万能薬として使用し始めて、15世紀~16世紀にかけてかなり流行ったようだが、万能薬にはならなかったらしい。
粘土の錠剤には絵や文字が書かれているものが多く見受けられる。これはいわゆる商標で、テラ・シギラータは商標目的で刻印を付けた世界最古の医薬用錠剤だそう。
かなり後の時代になって腸の病気への効果が再発見され、製薬会社のメルク社が薬として市場に出したそうな。

ホメオパシー

ホメオパシーの救急医療キット
小さな試験管のような容器の中には極小サイズの薬が

ヨーロッパは近代医学がとても発展したが、その反動でホメオパシー医学が出現・発展した。ホメオパシーとは端的に言えばプラシーボレベルに薄めた医薬品で治療する医術のことで、繰り返し薄めたものほど効くとされる。1796年にドイツの医師ハーネマンが提唱した。
ハーネマンは当時マラリアの治療薬であったキニーネを自ら大量摂取する自己実験を行った際に、マラリアと同じ症状を経験した。そこで、”全ての病気は健康な人の体にその症状に似た状態をもたらす薬で治療することが最善だ”という結論を導いた。それが今日に至るまで近代医学に疑問を抱く層に支持を得続けている。

錬金術師の部屋

ワニが天井からつるされていてインパクトがすごい。
このような動物は生薬として使われていた。

これは15世紀半ばの錬金術師の研究室を再現したもの。臼やアランビック(蒸留器)や薬の材料にするための動物などが置かれている。錬金術は近代医学や化学の発端となったものだ。現在でも行われている化学の実験や作業方法の多くは、錬金術がやっていたやり方から発展したものである。

薬のパッケージ

カラフルな薬のパッケージが並べられている。スイスの大手製薬会社はもともと化学染料の会社だったこともあり、華やかでデザイン性の高い薬のパッケージを販売するということができた。

真ん中の瓶にはopiumと書かれているのでアヘンチンキと思われる。チバ社。
右手にあるのはロシュ社の開発したヴァリウム(精神安定剤のジアゼパム)現在でも広く乱用される薬物。
アルカロイドのサンプルたち。カフェイン・コデイン・モルヒネ・アトロピン・コカイン等々…
どれがどれのことだかわからないが、キャプションにはキニーネ・ コカインコットン ・コデインパウダー…など書かれている

聖ウルバイン修道院薬局

ミント色の薬棚がカワイイ

19世紀初期のスイスのルツェルン州にある聖ウルバイン修道院にあった薬局が再現された部屋。フランス式の薬局とのこと。ミント色の薬棚に金色の装飾と天秤・カラフルな薬壺が並んでいるのが実に映える空間。

中世の実験室

ここは圧巻でした。当時のものをかき集めて化学実験室を復元したのでしょう。フラスコや乳鉢なんかもたくさん展示してありました。とても美しく、見る価値あり。

手前にあるのが蒸留装置。でかい。
天秤と乳棒、当時の試験管と試験管立ても…!左手に見えるのはミル(粉砕機)かな

インスブルックの宮廷薬局

オーストリアのマリア・テレ ジア女帝(1740-1780)時代のインスブルックの貴族が所有していた宮廷薬局の復元とのこと。シャンデリアが宮廷を思わせる、シックでかっこいい空間。なぜか床にV字型に沢山黒い乳鉢と乳棒が並べられている…。

薬壺・薬瓶・薬箱

美しくペイントされた薬箱
イタリアやフランス・ギリシア等から輸入された薬壺の数々。とてもカラフル。
かわいらしい薬瓶たち

他に目を引いたのが、薬剤師のキリストの絵画。(撮影したのだがスマートホンの調子が悪くて保存されておらず、画像無し。)当時の薬剤師の地位が向上し、薬がキリスト教の布教に用いられたことから描かれたらしい。

とにかくたくさんの展示品があって、医療の歴史やヴィンテージなどが好きな人にとっては楽しい場所です。音声ガイドは全部聞こうと思うと数時間はかかるようなので、またもう一度行ってじっくり見たいと思いました。


バーゼル薬学歴史博物館
Pharmaziemuseum der Universität Basel

営業時間:火曜日~日曜日(月曜日・祝日が休館)
午前 10 時~午後 5 時

入場料:CHF 8 / バーゼルカード提示でCHF 4 / 毎月第一土曜日は入場無料
同チケットでバーゼル大学解剖学博物館にも入場できる。入場は翌日まで有効。


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